具体的な何かを期待して見始めたわけでもない「アウトランダー」について語るのも3回目となりました。

逞しくて強靭な戦士。勇気があり、信義に篤く、大切な人達を命がけで助ける。(好みは分かれるとしても)ルックスがよく、少年のように純粋で、愛する人に一途。その一方で適度に粗野でシンプル、愛嬌もある。リーダーとしても、夫としても理想的なバランスで成り立っている人として描かれている、主人公クレアの18世紀における夫のジェイミー(演じているのはサム・ヒューアン。当人の印象はタフで筋骨隆々のジェイミーと異なり、元々の体の線が細く、表情からも繊細な感じを受けるので、役者というのはスゴイなあと思います。いろんなドラマや映画を観て思うのですが、イギリス界隈の俳優さんはトレーニングの積み方が違うのか、総じて演技が上手ですね。シェイクスピアが基本にある国だからでしょうか)。

さて、クレアの20世紀における夫フランクは歴史学者。お尋ね者のときも、スコットランドの領主のときも、闇稼業が密輸のエジンバラの印刷屋のときも、常に現場の第一線で体を張って戦い、愛する人達を守ろうとするジェイミーと異なり、知的考察を重ねる大学の研究者であり、マインド主導。ジェイミーが “直接触れる者(体を使う現場主義の者)” だとすれば、フランクは “俯瞰する者(知的活動主体の者)”。

“直接触れる者” と “俯瞰する者”、どちらの価値や評価が高くなるかは、時代によって異なります。世の中が比較的安定しており、頭脳労働によって多くの財を生み出すスタイルが定着した現在においては “俯瞰する者(知的活動主体の者)” の価値や評価が相対的に上がります。

日がなPCに向かって何かしているか、現場の人達に講釈を垂れているか、みたいな層が影響力をもち、財を成すようになります。

一方で動乱や戦いの日々、何事につけ安定しない世の中では “直接触れる者” のほうが頼りになります。生きることに直結したアクションを起こすことができるからです。安定した世の中、「頭脳労働=生きること」になる時代、バーチャルな世界も現実のうち、という今のような世情では忘れられがちですが、具体的なことに対峙し、具体的なことを通し、具体的なことと対話できる人こそが「深い何かを知る」近道にあります。

話が「アウトランダー」から離れますが、私は半年に一度くらい、カーディーラーから電話がかかってくると車を点検に出します。その際、店舗にいる営業の人と話したところで詰まらないわけですが、メカニックの人と会話するのは楽しい。メカニックの人は話術が拙かったとしても、車のことをよく知っており、少なくとも営業の人よりも車という実体を愛しています。日々モノに対峙し、モノと対話している人の話には深さが感じられます。車という商材を上手に扱うことにより、最大限の利益を上げようという方向に意識が向いている人の話は、私の心に触れません。

メカニックは “直接触れる者(体を使う現場主義の者)” であり、営業マンは “俯瞰する人(知的活動主体の者)”。ただしモノと日々対話しているだけでは単なるオタクの域を出ず、“直接触れる” ことを通して “俯瞰” に至り、普遍性のある原理につながることで “直接の経験” と “俯瞰” とを統合した存在へと昇華していきます。なかには “直接の体験や経験に触れなくても” 普遍的原理とつながる直観知を得ている “俯瞰者” もいます。一番救われないのは “直観知を伴わない俯瞰者” です。

私は職人さんと話をするのも好きです。職人さんも実にピンキリなので、みんながみんなを素晴らしいとは思っていませんけれど、自分の肉体を使ってモノと対話をしている人は、普遍的な原理につながるフックをどこかに隠し持っていると感じます。ハウスメーカーの営業マンと話しても、多分それほど面白くないし、家のこと以外について得るものはほとんどありません。

話を「アウトランダー」に戻しますと、クレアが先に結婚していた20世紀のフランクよりも、18世紀のジェイミーに魅かれるようになったのは、ジェイミーが “直接触れる者” だったからだと思います。“直接触れる者” として生き、クレアという女性にも、生身の人間として “直接触れ続けた” 結果、彼女のハートの中心を掴むに至ったのです。

フランクは “直観知を伴わない俯瞰者” であったため、既に自分を愛していない、20世紀に戻ってきたクレアを愛し続けようと努力したものの、ジェイミーを含めた3者の関係性に対する深い洞察や理解に至ることができなかった。 私は原作を知らず、ドラマもシーズン3までしか観ていないので、今後の展開がどうなるのかを知りませんが、とりあえず、このドラマを観て感じたのはそんなことです。

①直接の体験や経験を大切にすること、②アタマだけの俯瞰に陥らないこと、③普遍的な原理は探し回らなくてもすぐそこにあること、これら3つが「アウトランダー」から私が教えられたこと。

このドラマは当時のスコットランドの風景や建物、文化についても伝えています。スコットランドは25年くらい前に、当時ロンドンに住んでいた友達と、エジンバラとグラスゴーに行っただけですが、とってもとっても素敵な場所でした。ロンドンからの夜行バスが冷え込んですごく寒かった~。また行きたいな、スコットランド。というふうに思うと、私には生きている間に旅行したい場所がたくさんあり過ぎて困ります(笑)

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