帰属・承認欲求の対象は“自己選択型コミュニティ”(3)


次世代型の生活価値の鍵は、希望する暮らし方(なかでも「趣味指向」と「社会・奉仕指向」)と、希望する働き方の関係にある(説明図表割愛)。

旧来の概念では「趣味指向=自分指向」「社会・奉仕指向=他者指向」であった。しかしここでは、「社会・奉仕指向」は「他者承認タイプ」ではない。若年層のなかでも、より若年によって構成される「他者承認タイプ」の望む生活は、「趣味」への指向性が強い。彼らは他者承認を得られるひとつの手段として「趣味」をとらえている。「趣味(私)」と「仕事(公)」を一致させたい「趣味と実益タイプ」では、「趣味(他者が具体的に見える世界)」と「社会(具体的他者が見えてこない曖昧な世界)」が重なり合う。

インタビューにおいても、たとえば「プロになる気はないけれど、アルバイトをしながらバンド活動をしている。仕事としてやりたいことは見つからない。今はこの生活でいい」といった発言があった。趣味などに関するコミュニティからの承認を得ることが、彼らにとってイメージしやすい他者評価である。

社会に対するイメージ、コミットメントはあくまでも希薄。もっと小規模で、具体的他者をイメージできる同質なコミュニティが、若者にとっての意味ある他者だ。それは、地位や経済といった旧来型の他者評価と並び、次世代型ライフ&ワークスタイルにみられる新しい価値の指標である。そういった人たちが職業に対して明確なイメージをもたない未成熟な層であるのも事実だが、“満足”を得られにくい停滞社会においては、定まった仕事に就いてなお、そのような“自己選択型コミュニティ”における人間関係のなかでの評価を、より重視した生活スタイルをもとうとする可能性がある。


 

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フリーターに多い3タイプ―「自己探求タイプ」「他者承認タイプ」「夢見がちタイプ」