すごくよかった「チアの女王・シーズン2」何から語ろうか(3)

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“Emotion”(感情)

[ナバロカレッジ & コーチのモニカ]

呼ばれたところに出向いて応援のパフォーマンスを披露するチアではなく、チームとしての「勝利」を目指し、全国大会優勝経験のなかったナバロをデイトナ大会制覇14回にまで育てる。誰もが認める、実力あるベテランコーチ。MBA(経営学修士)を取得していて、インテリでもある。

「自分にとっての恐怖を紙に書いてみんなでボトルに入れ、それを海に放り投げることでサヨナラする」「演技のなかで組む相手を互いに褒め称えて抱きしめ合う」等、心理カウンセリング自己啓発で使われる手法をかなり取り入れているように感じます。

[TVCC & コーチのボンティ]

12人家族が4部屋で暮らす貧しい家庭に育ち、貧困層から抜け出すためにトップアスリートを目指したTVCCコーチのボンティ。彼は選手と歳の差があまりなく、実際に技をやってみせての指導ができる。現場からの指導なので説得力がある。「言うだけならラクよね」と言われる指導者ではないため選手から信頼される。ちなみに母校はTVCC。

ドキュメンタリーでは、モニカが取り入れているような心理学的手法をTVCCで見かけることはなく、より忠実に体育会系と言いますか、技術を丁寧かつ厳しく指導し、励まし戒めながら体得させることで自信をつけさせるのが得意なのかもしれません。よく怒鳴っていますが(ボンティいわく「大きな声で指導しているだけだ」)厳しく言わないほうが伸びそうな選手には、きつく言わないように心がけている感じもありました。

長年ナバロのチーフ振付師を務めた人物が、2020年からTVCCと契約することになりました。それまでのTVCCはスタンツのレベルが非常に高かったため、ほかの細かな点をあまり重視してこなかったそうです。ダンスが少なく構成がシンプルなプログラムで、学生らしいスタンダードな技を多く採り入れていました。片やナバロの演技の特徴は、高難易度の技を高スピードで展開し、ダンスに力を入れ、全体としてアクロバティックな動きが多いことです。

「スタンツ」:人が人の上に乗ったり空中に飛んだりする組体操のようなアクロバティックな技。1人または複数のベースが、競技フロアより高い位置にトップを支える。

「チアは主観的な競技。技を決めても勝てるとは限らない」

(モニカ/ナバロのコーチ)

「チアはパフォーミングアート。表現のスポーツ」

(エンジェル/TVCCのタンブラー)

内面の輝きが演技を通して解き放たれることで、観る者や審査員は心打たれ感情を動かされます。それが得点を大きく左右します。

TVCCでは新人男子の表現力が足りないことが大きな課題でした。技術は申し分なく、ほかの追随を許さないにも関わらず、技を決めても笑顔ひとつなく総合的に非常に物足りない状況です。それをコーチや仲間から指摘されても修正しようとしません。

若くやんちゃな新人黒人ボーイズのなかでも、ディーは演技における感情表現が特に乏しく、それが自らの首を絞めるかたちとなりました。

この子はトッぽいんですよね。音楽で言うとヒップホップ、ラップの世界で生きている感じです。トッぽいディー君(なぜか君づけ)は、ナバロからもスカウトされましたが「男っぽくて、派手じゃないから自分の性格に合っている」ことを理由にTVCCを選びました。

「ヒップホップ」と「ラップ」の違い:「ヒップホップ」はリズム感を重視した音楽で、低音が一定のリズムで刻まれる。「ラップ」はリズミカルに言葉を発する歌唱法を言う。「ヒップホップ」に乗せて「ラップ」が行われる。

※ 私自身がよく分からず、調べてしまいました。

奇術の世界でも、技を披露した後のスマイルとアピールが重要とされているそうです(奇術部に所属していた友人から聞きました)。

ニコリともせず、すごい技を披露したところで「周りに言われてやらされているのかな?」「演技を楽しんでいないのかな?」「チアが嫌いなのかな?」と受け止めてしまいます。クール過ぎて、していることに対する前向きさや主体性、“していること” に対して “心がここにきちんとある一体感” が感じられないと、何をしても技が輝いてこないのです。非常にもったいないです。

トッぽいディー君にしてみれば「演技を決めた後に笑うなんてできるかよ。俺はゲイじゃない」と言いたいところでしょうが、そういった自分のこだわりを貫くこと(=エゴ)は自分自身の内面にしこりを作るのかもしれません。2021年デイトナ大会の予選で、まさかの失敗をふたつします。優勝を狙うTVCCにしたら窮地に陥ったも同然です。

鬼コーチのボンティは、ディーがかつての自分に似ていることを感じ、彼を根気よく見守ります。私自身は「自分に似ているからよく分かる」ことがチームにおいて良いことなのかどうか疑問ですが(よく分からない人のほうが上手く関係を作れたりする)、短気なボンティにしてはディーの変化を気長に待ったようにドキュメンタリー上では見えました。

結果、デイトナ大会の決勝でTVCCは過去最高の演技を披露します。トッぽいディー君は、演技を決めたときのポーズがやっぱりヒップホップの世界でトッぽいです。あれはあれで個性があっていいんじゃないかと思いました。みんながみんな、フィギアスケートの男性選手みたいなプレゼンテーションをする必要はないのです。

ディー君の母親が「ディーは小さな頃から人と違っていた」と言っていたことを思い出しました。人と同じことをするのではなく、違うところを魅力的に見せるのってアメリカっぽいじゃないですか。私としては、ディー君にはトッぽい決めポーズを極めていってほしいです。

チームの鼓舞については、TVCCのジェイダ(タンブラー&フライヤー)のリーダーシップが素晴らしいです。もともとは内気な性格で、両親が不仲だったり、彼女自身も高校時代に問題を起こしていたりで、入学当初は「チームが家族同然であること」をなかなか受け入れなかったそうです。女だてらに男前な勇姿、そこはかとなくアリシア・キーズを思わせるルックスにも惹かれます。TVCCはエンジェルの力強くバネのような、それでいて柔らかなタンブリングも素晴らしいです。普段の笑顔や話し方がとても女性的で可愛らしく、それが滲み出るかのような感情表現豊かな演技だと感じます。

「感情」とは厄介ですね。なければ人生が無味乾燥。しかし変な方向へ作動したり、暴走させたりすると、その人自身や人間関係や状況をより悪い方向へと動かしていきます。

「負けるのは嫌い。だけど敗北感はモチベーションになる。すべては感情なの。感情がアドレナリンやドーパミンを放出し、成功へと導いてくれる。その感情を得るためにひたむきに練習を積むの。それがチア」

(モニカ/ナバロのコーチ)
  • 勝つための「感情」を最高に高めていくためには「自分に対し揺るぎない自信をもつ」ことが必要である
  • 「自己肯定感」や「自己信頼」は、「すっきりと片付いた感情」や「チームメイトとの絆(家族同然の信頼と承認で結ばれていること)」から生まれる

こうしてみると、チアは人生のいろんな要素が詰め込まれたスポーツだなあと思います。

ディー君は、わかりやすいところで言うと1:06~1:16(正面を向かって右から左へタンブリング)、プログラム最後の2:50~2:51(後ろから中央にタンブリングして膝まづく)あたり。音楽がきちんと録れていないのが残念ですが、TVCCの公式チャンネルです。

すごくよかった「チアの女王・シーズン2」何から語ろうか(1)
ナバロカレッジとTVCCのチア(Cheer)を比較した場合の基本的なポイントは3つです。
すごくよかった「チアの女王・シーズン2」何から語ろうか(2)
チームが「安心していられる基盤(Home)」であることについて書きました。
すごくよかった「チアの女王・シーズン2」何から語ろうか(4)
「妬み・うらやみ(Envy)」という側面から、競争社会としてのチアの世界を取り上げました。
すごくよかった「チアの女王・シーズン2」何から語ろうか(5)
人間は経験を通して物事を再定義します。本ドキュメンタリーを「再定義・バランス調整(Redefinition & Rebalance)」という視点から俯瞰します。
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