女性の権利について考えさせられるドキュメンタリー映画「ザリファ・ガファリ 混沌の中の希望」

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“アフガニスタン“ と聞いて何を思い浮かべますか?3つ挙げるとしたら私は “戦闘” “タリバン” “ペルシア語” でしょうか。

アフガニスタン初の女性、かつ26歳のときに最年少でマイダン・ワルダック市長となったザリファのドキュメンタリー映画を観ました(原題 “In Her Hands” )。同市はタリバンが支配する地域に囲まれていました。映画では当時の政権側とタリバン側、双方を取材しています。

ドキュメンタリーとして取材や情報量が豊富とも思えませんし、編集に見どころがあるわけでもなく、同国において非常にレアな女性政治家への密着取材のとりまとめがメインに見えます。テーマ、場所柄、時期を考えると、あれ以上を望むのは難しいのかもと思いました。ただし内容は深刻で軽々しく扱うことのできないものばかりです。

秀でた面はほかにもあって「アフガニスタンってこういう国なのだな」と初めて知ることも多く、そこで暮らす人たちを身近に感じた気分になりました。戦いに関するニュースや報道、あるいは諜報ものドラマ辺りでしか同国に触れることがなかった私には新鮮です。

ドキュメンタリーの内容に触れる前に、アフガニスタンの歴史についてざっくりみてみましょう。

  • 中央アジアと南アジアの交差する地点に位置する山岳地帯の内陸国。パキスタン、イラン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、中国と国境を接している多民族国家。アフガニスタン、タジキスタン、イランはペルシア語を話す(もちろんほかにも同語を話す地域はある)
  • 5万年前には人間が居住していた(日本は3万8000年前からといわれている)。教科書に載っているような主要な文明を経ている歴史ある国
  • ペルシア人やインド人の征服を受けたが、7世紀半ばに入ってきたイスラム教によって社会がイスラム化。19世紀はイギリスと交戦することが多かった
  • 20世紀は「君主制 ⇒ 共和制 ⇒ 社会主義国家」と移り変わり、クーデターや “政権 vs イスラム民兵” の紛争、諸外国の介入などもあった。1996年までに国の大部分がイスラム原理主義者のタリバンに取り込まれ、全体主義的な政権によって支配された
  • 2001年のアメリカ軍侵攻後にタリバンは権力から排除された。政府とタリバンとの間で続く戦争はアフガニスタンの人権や女性の権利に関する問題をさらに悪化させたといわれる
  • 2021年8月15日、タリバンはアフガニスタン大統領府を占領、アシュラフ・ガニー大統領は国外亡命。アフガニスタン・イスラム共和国政府は事実上崩壊。31日にアメリカ軍の20年に亘る駐留が終了。アメリカにとっては史上最長の戦争となった

では映画について話を進めましょう。

ザリファはタリバン側の人物ではないので、2021年8月にカブールがタリバンによって陥落したことで命の危険に晒されます。そんな場面からドキュメンタリーはスタート。

タリバンは敵対する者がいないか各家庭を回って捜し出す動きを見せ、ザリファの警護担当の男たち(とはいっても2人)は緊張します。

遡ってカブール陥落以前。彼女の安全はやはり慎重に守られています。その頃、米軍のアフガン撤退に向けた和平交渉が米国とタリバンの間で進んでいました。その後の流れは報道の示す通りであるし、彼女は国内にいられなくなり婚約者(既に夫になっていたかもしれない)と家族とともにドイツへ亡命。

1時間半程度のドキュメンタリーですので、実際にご覧になるのがよいと思います。個人的に驚いたり関心をもったりした点がいくつかありました。例えば次のようなこと。

  • ザリファは画面を通してカリスマ性が伝わってくるタイプではないが「彼女に仕えたい」という男性たちがボディガード等を務めていた。実際に会ってみると非常に魅力ある人物なのだろう
  • 婚約者も彼女を大称賛。何かにつけ「あなたは素晴らしい」という正のストロークを与えまくる。こういう男性、関係性がアフガニスタンに存在していることに驚く(彼らは違うが、特にタリバンは男尊女卑。信仰を理由に女性の教育に反対し、女子中等教育を禁止しているくらいである)
  • 警護兼ドライバーの若い男性(マスーム)には幼い子どもがいる。妻は映像に出てこない。説明字幕を見落とすとザリファとマスームが夫婦であると勘違いしそうになる。ザリファの婚約者や家族は顔出ししているので、マスームの妻は死別または離別のいずれかなのだろうか(と余計なところに関心が向く)
  • 撮影期間のザリファの年齢が27~9歳と考えると(特に日本のその年頃の人たちを思うと)細い身体であるにも関わらず威厳と風格がある。実年齢プラス10歳くらいに見える。死語ではあるがピチピチとかキャピキャピとかの若さ由来の女性性とは無縁な感じ
  • 彼女の主張は「国を成長させる人材を育成するには教育が必要」「ペンと教育が国を作る」「特に女性に教育を受けさせることが大切」「平和と安全と教育が欲しい」。その通りとは思うが真っ向からそれを主張して、あのアフガニスタンで立候補したのはすごい。この真っすぐさが隠れたカリスマ性に繋がっているのかもしれない(彼女自身は大学院修士まで修了)
  • ムサファーというタリバンの司令官が登場。36歳とのことだがプラス20歳くらいに見える。任務や砂漠での暮らしにストレスや苦労が多いのかもしれない
  • イスラム原理主義(純粋なイスラムの法の実現)は恐ろしいと感じるが、タリバンの支配する地域(恐らく貧しい田舎)は自然の美しいところが多い
  • タリバンのコクボル(アフガニスタンでは “ブズカシ” と言うらしい)がホンモノ過ぎてびっくり。首をはねて内臓を取り出した羊で行っていた

ザリファはカブール陥落の2カ月前に市長を辞めて国防省へ移ります。警護していたマスームとの関係には溝ができたようです。どちらの言い分も理解できます。

ザリファとその家族は現在ドイツにいます。そうしたかったわけではないかもしれませんが、出国できたことは幸いです。国外からどのように人権や教育に関する活動を行っていくのか、今後の彼女の動きに注目したいと思います。

ここ最近はイランにおける女性の権利に関する活動が世界の注目を集めています。このドキュメンタリーでもアフガニスタンの女性たちがタリバンに対して権利を求めるデモを行っています。抑圧されてきたものが非常に大きいということもあるでしょうが、イスラムの女性たちの芯の強さを感じます。

女性に教育は必要ない、家で育児と家事をしなさい、女性はひとりで出かけてはならない・・・。それらに背いたら殺していい、という神など存在しないと私は考えます。なぜそのような教えを信じることができるのでしょう。不思議です。

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