イスラエルではとうの昔にリリースされていたシーズン4。日本ではシーズン3と4の間が空きましたので簡単にシーズン1~3のおさらいから始めたいと思います。
なお「ファウダ-報復の連鎖-」シーズン1~3全体についてざっくり書いた過去記事はコチラ。
シーズン1~3のおさらい
シーズン1
- 対立図式:イスラエル特殊部隊 VS ハマス
- 導入部分のあらすじ:主人公のドロンは特殊部隊を辞め、ブドウを栽培したり、ワインを醸造したりする暮らしを家族と送っている。そこへ死んだと思われていたハマスのテロリスト(アブ・アマハド、通称 “パンサー” )が生存しているとの知らせをモレノから受け、そのテロリストが生きているかどうかの確認に協力することに。計画は上手くいかず、納得のいかないドロンは部隊に復帰する
- 特殊部隊の実働メンバー:エリ、スティーブ、アヴィハイ、ナオール、ボアズ(ドロンの妻の弟)、ヌリット、ドロン
- 特殊部隊の管理/指令:モレノ(特殊部隊指揮官)、ヌリット(女性のテロ対策隊員がいないことを理由にモレノは当初内勤を命じていた)、ギャビ(公安庁(ISA)指揮官/パレスチナとの間に入る役割)
- ポイント:ハマス内部の動き( “パンサー” &彼に仕えるワリード&ハマスのほかの指導者)/潜入捜査でのドロンと女医シリンの関係(シリンはワリードのいとこ)/モレノ&ヌリットには肉体関係がありモレノはヌリットを特別扱い/ガリ(ドロンの妻)&ナオールの不倫/モレノの部隊解散の危機とドロンのハマスへの潜入/ワリードの下剋上
ハマスはイスラム主義を掲げるパレスチナの政党。正式名称はイスラーム抵抗運動(アラビア語: حركة المقاومة الاسلامية Ḥarakat al-Muqāwamat al-Islāmīyah)で頭文字 (ح (Ḥ), م (M), ا (Ā), س (S)) をとっている(発音としては “ハマース” )。
1980年代にパレスチナ解放機構 (PLO) の影響力を排除した民衆レベルでの対イスラエル抵抗組織として設立。イスラエル政府はハマスがPLOの対抗勢力となることを期待して秘密裏に援助を行った。ハマスは教育、医療、福祉などの分野で民衆への地道な活動を続け、パレスチナ人の間で支持が拡大。
1990年代にPLOがイスラエルとの和平交渉を開始するとハマスは強く反対し、対イスラエル強硬派の支持を得る。2000年代に入り、ハマスは自爆攻撃やロケット弾を用いたイスラエル国防軍および市民への攻撃を開始。
2007年6月12日にハマスがガザ地区を武力占拠。2006年総選挙後のファタハとの連立政権は崩壊。その後ガザ地区はハマスが、ヨルダン川西岸地区はファタハが事実上支配している。
ガザ地区にはハマスより過激な武装組織もあり、ハマスはISIL(イスラム国、ダーイシュ)とも敵対。ガザ地区を生かさず殺さずの状態に維持することをイスラエル側は「芝刈り」と表現。 “芝” であるハマスが伸びすぎないよう定期的に攻撃して “刈る” が、根絶やしにしてしまうことにより過激な組織が台頭することがないようにしている。
Wikipediaよりの抜粋に加筆
シーズン2
- 対立図式:イスラエル特殊部隊 VS ハマス (後半ではISISも)
- 導入部分のあらすじ:ワリードが “パンサー” を倒してハマス軍事部門の指揮官となり、自爆テロを主導。一方でドロンは命を狙われ一緒にいた父親が怪我を負う。実行したのはハマス指揮官のアル・マクダシ(シャイフ・アワダラーの息子/ISISで訓練を受けた)であることが分かる。父親の農園で働いていたドロンは部隊に復帰する。ハマス内部では主導権争いが激しくなる
- 特殊部隊の実働メンバー:スティーブ、アヴィハイ、ナオール(E3まで⇒その後刑務所で覆面捜査)、ヌリット、サギ、ドロン、エリ(シーズンの途中でナオールがいなくなったからか現場にも入る)
- 特殊部隊の管理/指令:モレノ(特殊部隊指揮官/E1まで)、エリ(特殊部隊指揮官/E2から)、ギャビ(パレスチナとの間に入る役割)、カスピ(イスラエル国防軍准将/存在感が微妙/目印はスキンヘッドで眉も薄い)、ダナ(総保安庁(GSS)捜査官/取り調べを担当/既婚者)
- ポイント:サギが特殊部隊へ異動しヌリットに惚れる/ドロンがまたしても部隊に復帰(出たり入ったりで雇用形態はどうなっているのだろう)/ナオールはドロンと対立/モレノの妹アナットとスティーブが親しくなる/エリが赴任先のロンドンからモレノの後任として戻ってくる/山あり谷ありでドロンと女医シリンの関係がさらに深まるが…/ドロンの元妻ガリや子どもたちも危険に晒される
シーズン3
- 対立図式:イスラエル特殊部隊 VS ハマス
- 導入部分のあらすじ:ドロンはボクシングコーチとしてパレスチナ自治区に潜入、バシャールに接近。爆薬を取引し西岸地区のテロ活動を指揮するファウジを追う。そんな折、ジハード・ハムダンが刑期を終えて出所。 “パレスチナの英雄” と言われた彼はハマスの構成員でバシャールの父、ファウジの叔父にあたる。ドロンたちがファウジを射殺したことによりハマスのイスラエルへの敵意が増幅。特殊部隊は黒幕ハニ・アル・ジャバリ(アブ・マグダシ)と彼のアジトを特定しようとする
- 特殊部隊の実働メンバー:スティーブ、アヴィハイ、ヌリット、サギ、ドロン、エリ(ときどき現場/難易度の高い潜入捜査を行うガザへも行く)、マジディ(テンポラリーの狙撃手)
- 特殊部隊の管理/指令:ギャビ(パレスチナとの間に入る役割)、エリ(特殊部隊指揮官)、ダナ(取り調べ等を行う)、カスピ(なぜかやっぱり空気に近い)、ヒラ(総保安庁ガザ局長)
- ポイント:ヌリットは婚約者ヨアブがいる一方でサギとも肉体関係がある(嫉妬で感情が揺れるとサギは職務でミスをする傾向にある)/ドロンは元妻や子どもへの面会を制限されている(自分の都合で動き、すぐに激高するからであろう)/アヴィハイが深刻な事態に陥る/ドロンとガザ局長ヒラの意味不明な接近(ガリ、シリンの後の恋バナ要員?あるいはヒラがドロンをコントロールしたいため?)/特殊部隊隊員の夫をもつ妻たちのメンタル面の消耗とストレス
シーズン4のあらまし
- 対立図式:イスラエル特殊部隊 VS ヒズボラ
- 導入部分のあらすじ:ドロンは再び特殊部隊を去り、農場で暮らしている。ギャビはヒズボラへ潜入させたウマルと話し合うためブリュッセル(ベルギー)へ。警護の役割でドロンに同行を依頼。ブリュッセルでギャビが拉致される。パレスチナ自治区ジェニン県では同県パレスチナ予防保安庁トップのアブ・ウサマの部下らによる銀行強盗が発生する
- 特殊部隊の実働メンバー:エリ、スティーブ、ヌリット、サギ、ルッソ(ヌリットの負傷による交代要員)、ドロン
- 特殊部隊の管理/指令:ダナ(先のシーズンでは「私は既婚者」と言っていたはず/公安庁(ISA)責任者となる)、カスピ(スキンヘッド)、ジアッド(ダナといい雰囲気に/公安庁(ISA)尋問官)
- 戦略立案/特殊部隊のサポート:ラファエル(モサド副長官)、ニマー(在レバノンのモサド捜査官)
- ブリュッセル特殊部隊作戦司令室:イヴリ、アンジェラ
- ポイント:ヌリットとサギの結婚/ハギエット(アヴィハイ未亡人)とエリがパートナーになっている/シーズン1~3に比較するとストーリーの舞台が広範囲(イスラエル、ベルギー、レバノン、シリア)/もろもろかなり絶望的な状況を迎えるがシーズン5があるとしか思えない終わり方をする(シーズン4で終わりだとしたら、こういう終わり方もあるのかという感じ)
ヒズボラとは、レバノンを中心に活動している急進的シーア派イスラム主義組織で、イラン型のイスラム共和制をレバノンに建国し、非イスラム的影響をその地域から除くことを運動の中心とする。反欧米の立場を取りイスラエルの殲滅を掲げている。
ヒズボラは一般に過激派組織と見なされているが、パレスチナの過激派ハマスのように選挙に参加している政治組織で議席をもっている。
貧困層を対象とする教育・福祉ネットワークを作っており、彼らからの支持は厚い。インターネット上にウェブサイトを開設しているほかテレビ局、ラジオ局、週刊誌も運営。
Wikipediaより抜粋
ざっくり感想
- シーズン4まで視聴しているので、このドラマのファンではあるが、ドロンが自分勝手、独断専行が過ぎてしばしばうざい。最後まで目標に執着して可能性を見出そうという粘り強さは評価できるが、やぶ蛇、墓穴を掘る材料を提供するのもドロンだったりする
- ドロンは好意をもった女性に対して、あからさまな “にやけ顔” になる。分かりやす過ぎて気持ちが悪い。“変なオヤジ” である
- ハマスの解説文にも引用したが “ガザ地区を生かさず殺さずの状態に維持することをイスラエル側は「芝刈り」と表現” 。つまりハマスが壊滅状態になってもイスラエルとしては困るし、勢力を拡大されても困る。そのバランス維持のためにイスラエル、反イスラエルの双方が命を落とす。政治とは面倒で手前勝手なものである
- シーズン5が制作されることを期待する
出演者についての情報
「ファウダ」のアブ・アハメド(パンサー)役、ワリード役、アブ・サマラ役、アヴィハイ役らは、ノルウェーとの合作ドラマ「オスロの少女」にも出演しています。
シーズン1~4の特殊部隊メンバーを演じた人たち。エリ役の俳優さんは人生経験が豊富なようです。イスラエルは男女ともに兵役があるので、役を演じるにあたっての基礎訓練は既にできているのでしょう。
イスラエルへ行ったとき、兵役で訓練中と思われる若い男女兵士の集団に混じってランチを食べたことがあります(たまたまそうなった)。ショルダーバッグを肩にかけるような感じで、みなさん銃をもって賑やかに談笑しながら食事を摂っていました。銃は各自管理となっているので肌身離さず持ち歩くようですね。
[今のところの歴代メンバー]
- ドロン(リオル・ラズ) イラク・アルジェリア系移民で、かつてはイスラエル国防軍のエリートアンダーカバーテロ対策ユニットのメンバー。兵役後はアメリカでアーノルド・シュワルツェネッガーのボディーガードをしていた。シーズン1で防衛相ギデオンとセットで出てくる女性が妻で女優のメイタル・ベルダ
- エリ(ヤアコフ・ザダ・ダニエル) 2歳のとき母親が亡くなり、父親によってアラドの子どもの村 “クファルナルディム” に送られ、そこで育つ。彼が13歳のとき父も他界。ヨラム・レビンスタインの演技スタジオを卒業しているが、生計を立てるために一般的でない仕事をしてきた。第13飛行隊の兵士としてイスラエル国防軍に勤務、その後ドゥブデヴァン部隊に異動。ドラマ、映画のほか舞台でも活躍。いくつかの賞も獲得
- アヴィハイ(ボアズ・コンフォーティ) 1999年にベイトツヴィ演劇学校を卒業。女優のリアット・ハレフと結婚しており、子どもがいるとのこと。あまり情報がない
- スティーブ(ドロン・ベン・デイヴィッド) ベイトツヴィ演劇学校で学んだ。映画、ドラマのプロジェクトに加え、演劇俳優であり、演技コーチとして活躍。結婚していて子どもが3人いる
- ボアズ(トメル・カポネ) 事業家の両親の2番目の子どもとして生まれる。彼が12歳の頃、両親が経済的に困窮し、しばしば働いて彼らを助けた。高校卒業後イスラエル国防軍(IDF)で兵役を務め、後に空挺部隊旅団第202大隊の分隊長となる。第二次レバノン戦争に参加。叔父がアーティストのエージェントであった関係で芸能界入り。2012年より女優のオルタル・ベン・ショシャンと交際
- ナオール(ツァヒ・ハレヴィ) 父親がモサドで働いていたため、兵役までさまざまな国で生活。イスラエル国防軍ではシムション部隊のチーム司令官、後にドゥブデヴァンの将校を務めた。ヘブライ語、アラビア語、イタリア語、フランス語、英語を話す。ミュージシャンとしても活動。女優のルーシー・アハリッシュと結婚していて子どもがいる
- ヌリット(ロナ・リー・シモン) 「ファウダ」ではエリートユニット唯一の女性で、その役を演じるためにクラヴ・マガ(20世紀前半にイスラエルで考案された近接格闘術。さまざまなイスラエル治安機関に採用されることで洗練され、CIAやFBIなど世界中の軍・警察が導入している)を習得。女優であり、ダンサーでもあるらしい
- ルッソ(インバー・ラヴィ) 父親はポーランド人、母親はモロッコ系イスラエル人。キアラットシャレット芸術学校でバレエとモダンダンスを学び、その後テルアビブのソフィモスコウィッツ演技学校でメソッド演技とスタニスラフスキーテクニックを受講。イスラエル生まれだが17歳でアメリカへ。渡米後はかなりタフな生活を送っていたようだ。リーストラスバーグ演劇映画研究所でも学ぶ。アメリカ在住のイスラエル人と結婚
- サギ(イダン・アメディ) テコンドーとタイボクシングを学ぶ。2005年、全国(←多分 “イスラエル” という意味だと思う)テコンドー選手権2位。イスラエル国防軍での兵役中はパトロール部門の戦闘工学隊に所属。シンガーソングライターである彼の曲「戦士の痛み」は、2011年のガルガラッツソングコンペティション(イスラエルで最も人気のあるIDFのラジオ局)でソング・オブ・ザ・イヤーを受賞。画像検索するとミュージシャンとしての姿が多くヒットする人。ルーツがクルド人で政治との縁が深い家系。高校の同窓生で社会活動家のミリアム・ビニャミノフと10年の交際を経て2018年に結婚。1年半後に娘が生まれた(その後、息子も生まれた)。彼が「ファウダ」用に作った曲を聴きたい方はコチラへ(↓)。LIVEも聴いてみたけれど才能がある。客席に降りて観客に積極的にサービスする人。演技より音楽のほうがいいと思う(あくまでも比較論)。ステージで着ているものは「ファウダ」のときと変わりがない
追記)2024/1/10の報道によれば、サギ役のイダン・アメディはイスラエル軍に志願。ガザ地区でイスラム組織ハマスと戦い、1/8に重傷を負ったとのこと。テルアビブの病院を約2週間で退院。記者会見の動画を視聴したが “重傷” と聞いた場合にイメージする状態よりも、ずっと元気そうだった