デンマークの諜報ものドラマで、原題は “Legenden(伝説)”。ヒューマンドラマのような面もあって面白かったのですが、この6エピソードで物語は完了なのでしょうか。いちおう続編も製作できる伏線を用意して終わっているので、ひょっとしたらシーズン2があるのかもしれません。
諜報ものにもいろいろありますが、①新米女性エージェントが危険を冒して麻薬取引に関する証拠を掴もうとしたものの、②工作員としての役割と個人的価値観との間で葛藤することとなり、③自分の気持ちに正直になったところで彼女自身は報われず、④でもシーズン2があるなら面白い展開を期待できそう、というドラマです。
あらすじ
ティア・リンドは家庭環境と過去に恵まれず、自らも依存症の自助グループに参加している警察官の卵。ある日突然警察学校を退学となり、それと入れ替わるかたちで工作員に抜擢された彼女は、経験不足ではあるものの未来の進退をかけて現場へと飛び込みます。
上位者の指示に従い、麻薬ディーラーであるミランのパートナー(恋人)アシュリーに近づきます。何度も薄氷を踏むような局面に対峙しますが、持ち前のアタマの回転のよさ、度胸で切り抜けていきます。
しかし、アシュリーとその娘ソフィアと親しくなるうちに、彼女たちの苦悩や生きづらさを知ることとなり、任務を捨てて助け出したいと思うようになります。
主要な登場人物
[警察関係者]
- ティア・リンド:アルコール依存症の母がいる。かつて交際していた麻薬の売人からDV被害を受けた。警察学校をセキュリティクリアランスの問題から退学となり、工作員となる。任務では “ドバイから帰ってきた宝石商のサラ・リンネマン” を名乗る
- フォルケ:国家警察情報局(PET)の責任者。ティアの上位者
- ヤシン:フォルケの部下で管理官。ティアをサポートする
- イェンセン:フォルケの上位者(国家特殊犯罪局?)。作戦のボス
[コカイン密輸組織/関係者]
- ミラン・シャフラーニ:スカンジナビアにおけるコカイン密輸を牛耳る麻薬ディーラー。バンビという弟、胡散臭い父がいる
- アシュリー:麻薬ディーラーのパートナー(恋人)。ソフィアという8歳になる娘がいる
- ニコ:ミランの右腕
- オマール:ミランの手下
- エリック:ミランの組織からコカインを買っている
[福祉関係者]
クリストファー&ビアギッテ:児童福祉局の職員
感想・メモ:面白いので続編を待つ
工作員(スパイ/諜報員ともいう)と標的(ターゲット)の関係性に焦点を当てている点に引き込まれました。標的に工作員と気づかれては仕事にならないので、多くの諜報もののドラマ・映画では彼らの引き際や去り際はドライです。身バレするようなヘマをすると諜報組織によって始末されたりもします。
この作品の設定では主人公はふたり(スパイ&標的)であるようで、初仕事の諜報活動で標的の苦しみや生きづらさに触れ、「仕事だから」とドライに看過することができなくなります。人間としてのふたりの関係性が描かれます。スパイのティアは自らの成育歴もあって、標的アシュリーと娘ソフィアの残酷な未来をわかっていながら、その道へ誘導するのが任務であることに葛藤します。
工作員のティアは自らの良心に従って行動しますが、それによって標的アシュリーからの信頼を失います。恐らくはミランまたは彼の父の指示により、ティアは狙撃されます。しかし一命を取り留めます。ミランは国家警察情報局(PET)によって犯罪を立件され、アシュリーは人生の再スタートを余儀なくされます。その後、想定外の展開が待っています。彼女はミランのビジネスを継承するのかもしれません。
次のシーズンがありそうな風向きですし、それがないと少し中途半端な気がします。
個人的には、ミランとアシュリーが惹かれ合う理由がわかりません。アシュリーは “肉感的で気が強そう”、ミランは “お金をもっていて贅沢させてくれる、一見やり手ビジネスマンのワル” というところで相性がいいのかなあ。アシュリーの般若顔が、とても美人とは思えないのですよね。アンダーグラウンドビジネスに手を染めている男のパートナーとしては妥当かもしれませんが。
またデンマークにおける “ちょい悪系男子”、あるいは地下組織構成員にはイラン系が多いのでしょうか。演じている俳優をみるとイランからの移民が目立ちます。
ミランを演じたアフシン・フィロウジは、家族とともに3歳のときにデンマークへ渡ったそうです(イラン革命絡みでしょうか)。長くソーシャルワーカーを務め、36歳から演技を始めたとのこと。2024年の「特捜部Q-ボーダレス」でアサドを演じているらしいので見てみたいです。今のところ、私は最初のアサド役(ファレス・ファレス)が一番好きですが。
