不思議なテイストのサスペンスドラマ「デッドロック~女刑事の事件簿~」

スポンサーリンク

原題は “Deadloch”。以前視聴しようとしたものの早々に脱落。このたび “通し” で観ました。

サスペンスものとしては面白いです。かつて視聴を頓挫したのは①レズビアンの多く集まる町が舞台(私自身はLGBTQ問題に深い関心がない)、②コメディ部分がピンとこない(日本人にはあまりウケないと思う)、③登場人物のトークが必要以上に性的で下品というのが理由。

LGBTQの世界に関しては、比較的深い意図あって、あのようなアプローチを採っていたのかもしれません。オーストラリアの物語なので “先住民族” と “いわゆる白人” の対立図式も含まれます。

今のところAmazonプライムビデオで視聴できるのはシーズン1のみですが、シーズン2も既に公開されています。好みは分かれそうであるものの、全体としての評価は比較的高い作品。

あらすじ

タスマニア州デッドロックが舞台。恐らく架空の町でしょう。

時期は2022年頃。町の名物イベント “冬のごちそう祭り” が行われようというタイミングで、フットボールクラブのコーチであるトレント・レイサムの遺体が浜辺で発見されます。彼の遺体には “舌” がありませんでした。なお南半球の物語なので “冬のごちそう祭り” は日本の夏季に開催されています。

デッドロックのダルシー・コリンズ警部とダーウィンからやってきたエディ・レッドクリフ刑事が主に捜査にあたります。その後、トレントの弟であるケヴィンも浜で死体となって発見されます。彼も “舌” が欠損していました。

2017年に死体となって発見された前町長ロッド・ディクソンも “舌” を切られていたことから、コリンズ警部とレッドクリフ刑事は相互の関連を疑い始めます。そして彼の死体が発見された5日後、友人のサム・オドワイヤーの失踪届が出されていたことにも注目。

レッドクリフ主任刑事は独り合点で暴走(そういうパーソナリティなのだと思う)。「デッドロックには麻薬カルテルとつながる流通ルートがある」と言い出します。コリンズ警部(マトモな大人)はそのような見解をもっておらず、刑事のズレた思い込みを強引に修正しながら捜査を進めていきます。

そんなとき、5年前に行方不明となっていたサム・オドワイヤーの遺体も発見されます。警察の捜査情報が流出、遺体がわざわざ見つかるよう犯人が仕組んだとコリンズ警部は考えます。

レイサム兄弟、ロッド・ディクソン、サム・オドワイヤーの4人の被害者で事件は終わらず、さらなる死体が発見されていきます。犯人は男か女か。殺人の動機は何なのか。二転三転、紆余曲折しながら、コリンズ警部らは粘り強く事件を追います。

登場人物

[警察関係者]

  • ダルシー・コリンズ:デッドロック署の警部。同性愛者でキャス・ヨークがパートナー
    • キャス・ヨーク:ダルシーのパートナーで獣医。キャスを演ずるアリシア・ガーディナーは芸術大学で声楽を学んだシンガーでもある
  • アビー・マツダ:デッドロック署の巡査。みそっかす扱いだが、熱心に仕事に取り組む努力家
  • スヴェン・オルダーマン:デッドロック署の巡査。ノンキな性格
  • スティーヴ:デッドロック署の巡査。演じている人は毎度違う
  • ジェイムズ・キング:検視官。高慢な性格。アビー・マツダの恋人。ケイトという助手がいる
  • シェーン・ヘイスティングス:タスマニア警察の長官
  • エディ・レッドクリフ:ダーウィンからやってきた主任刑事。同性愛者ではないようだが “下品なおっさん” みたいな女性。名前を覚えるのが苦手
  • マイク・ニュージェント:フットボールクラブで雑用係をしている。元警官。5年前までデッドロック署に勤務。ノラという母がいる

【レイサム兄弟殺害事件の周辺人物】

  • トレント・レイサム:24時間ジムの経営者でフットボールクラブのコーチ。以前は製材所に勤務。妻ヴァネッサ息子ドルフがいる
  • ギャヴィン・レイサム:トレントの弟。ジムの共同経営者。以前は製材所に勤務
    • シャレル・ミュア:パブで働いている。ギャヴィンの子どもを産んだ。アビー・マツダ巡査は高校時代の同級生
  • タミー・ハンプソン:デッドロック高校の生徒。死体の第一発見者。フェイ・ハンプソン(パラワ族)の娘。フットボール選手だが、女子ゆえに冷遇されている
  • ミランダ・ホスキンス:タミー・ハンプソンのいとこ。優秀な高校生。死体の第一発見者

[ロッド・ディクソン不審死事件の周辺人物

  • ロッド・ディクソン:デッドロックの前町長。2017年に船の事故により浜に遺体が漂着。元は製材所のオーナーだった。妻はマーガレット・カラザース。マーガレットにはウィリアムという弟がいる
  • サム・オドワイヤー:ロッドの友人で、よく一緒に釣りをしていたが行方不明に。ロックネッシー号のオーナー。フットボールのコーチもしていた。妻はヴィクトリア、ベーカリーでパンを焼いている
    • スカイ・オドワイヤー:サムの娘。“ブッシュウルフ” のシェフ。元恋人はキャス・ヨーク。現在の恋人はナディヤ・ザミット
    • トム・オドワイヤー:サムの孫。スカイの息子。シドニーからデッドロック高校へ転入
  • クレア・コネリー:死体の第一発見者。カップルカウンセリングみたいなことをしている
  • ウェンディ・テイラー:カラザース家の元清掃係で服役中。シャレル・ミュアの母親
  • ケヴィン:アザラシ

[ジミー・クック殺害事件の周辺人物

  • ジミー・クック:ギャヴィン・レイサムの同居人だった
  • フィル・マクガンガス:ジミーのボス的存在。船ならびに製材所(前町長から引き継いだ)のオーナー。フットボールクラブの運営に関わり、レイサム兄弟のジムの共同オーナーでもある
  • アレイナ・ラミ:デッドロックの現町長。医師。夫はジェズ。死体の第一発見者

[デッドロックの人々(その他)]

  • レイチェル・ハディック:農場と船を売りに出している。ジェフという夫がいたが行方不明
  • テッド・ホプキンズ:重機オペレーター。掘削業
  • ハンター・パターソンロニー・ロナルドソンカラム・ロバートソン:フットボールクラブのメンバー
  • ミシェル・バックリー:美容サロンの経営者。父親がデッドロック署の警官だった
  • ヘレナ・パパトニス:アートのワークショップを主宰
  • アデル:アウトドアグッズ店で働いている。女子フットボールプレイヤー
  • レイ・マクリントック:ヴィクトリアのベーカリーで働いている
  • テランス:聖ドロゴ教会の神父。趣味で脚本を書いている

[その他]

  • メーガン・ラック:取材記者。トリビューン紙に寄稿している
  • ジェレミー・ホッジ:ブーグル誌の記者
  • ダニエラ・ケルマン:犯罪プロファイラー
  • ルーク・キャディ:フットボールのスカウト

感想・メモ:対立⇒融和を多様性の視点から描く

ネット情報によれば「ブロードチャーチ〜殺意の町〜」にインスパイアされた作品とのこと。私も同作品は観たことがありますが “海沿いの町の浜辺で死体が発見される。事件をきっかけに住民たちの秘密が明らかになっていく” というところ以外に共通点はないような気がします。

以下は、私の脳内を文字起こしした個人的メモ。

下品なワード/下ネタ連発の意図

例えばアメリカ大統領に就任したトランプ氏は「性別は男性と女性の2つのみ。変更はできない」としました。世界の流れは既に多様性の逆へと振れつつあるように感じます。その意味では本作は現在のトレンド上にありません。

女性の同性愛者が集まる町デッドロック。登場する女性たちの多くは臆面もなく、下品なワード、下ネタを口にします。同じことを男性がしたなら案外抵抗なく受け入れられるようにも感じますし、実際のところ、多くの社会では当たり前に行われていることではないでしょうか。

デッドロックでは “マッチョな男たち vs マッチョでミソジニーの男たちを不快に感じる女性たち” の間に摩擦があります。社会において多様性を尊重するならば、女性が男性と同じように感情や性欲を表現してよいはずなので、そういった姿をあえて悪目立ちさせた、というのが私の仮説。

言い換えれば男性たちが、日ごろ言葉や表現のうえで、いかに性的な暴力性、ミソジニーを発現しているかを伝えているということです。

そういう取り組みを大真面目にやっていると重いということもあって、コメディの体裁を採ったのではないかと思います。

不思議なコメディテイストは気にならなくなっていく

本作はコメディタッチのサスペンス。…のはずが、どこが面白いのか/どこが笑いのツボなのか、よくわからないままにエピソードが進んでいきます。しかし後半に入ると事件ものとしての成り立ちが複雑になっていき興味を搔き立てられるため、“おっさん” みたいな刑事エディ・レッドクリフの大げさでわざとらしい、ある意味で古臭い演技が気にならなくなります。

そういうキャラも「それはそれでいいんじゃないの?」という気持ちになっていくから不思議です。

これも先に述べたのと同様で、お堅い芝居の体裁にすると、性的少数者の登場する “ありがちな刑事もの” になってしまうからではないかと思いました。正面からのクソ真面目なアプローチは旧来の男性性の賜物であり、デッドロックのイベント “冬のごちそう祭り” が女性主導で食・癒し・セックス・アートに焦点を当てていることにも表れているように、人生はもっと柔軟で笑いや喜びに満ちていてよいという価値観を示していた気もします。

ヒーローやヒロインがいないところもポイント

“完璧な美女美男” “スタイルのよい人たち” が登場しないのも特徴のひとつと思います。ビジュアル面で思いっきり “普通の人たち” ばかりです。

ドラマや映画では、見た目の美醜で作品における重要性、存在価値に先入観をもってしまうところがあります。本作は “普通の人たち” しか出てこないので「この人が怪しい」「この人が重要な/目立つ役回り」等の偏りを生まず、平たい気持ちで視聴することができます。

LGBTQ問題、先住民族問題を超えて

連続殺人事件を通して、多少なりとも地域社会や住民それぞれが生きやすく変化していきます。 “マッチョな男たち vs マッチョでミソジニーの男たちを不快に感じる女性たち” のみならず、“先住民族 vs 侵略者” という対立図式もあります。そういった反目を経て、生き方や価値観の何かが昇華し、社会全体が融和へと一歩前に進むという流れになっています。

シーズン2もAmazonプライムビデオで観られるようになるといいですね。

[ロケ地]主にタスマニア島の南海岸沿い、ホバートとシグネット周辺

旅行は人生の大きな喜び(^^)v
ランキングに参加しています。
応援をお願いいたします。
↓  ↓  ↓
にほんブログ村 旅行ブログへ
にほんブログ村