伏線が複線で面白いサスペンスドラマ「誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる」

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韓国ドラマは、ほぼ観ません。たぶん食わず嫌いと思います。

「アンブレラ・アカデミー」以降、これといって面白いドラマに出会えず、半ば仕方なく視聴したら、大当たりだったドラマ。日本のドラマもあまり観ないのですが、日本のサスペンスに比較しても、よくできている感じがしました。

ちなみに、その直前に視聴したのが「Accidente」というメキシコのサスペンスドラマ。“いかにもメキシコ” な昼メロテイストで、そういうものとして観ればそれなりに面白い作品でした。

さて「誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる」。長ったらしいタイトルです。原題はアルファベット表記で “Amudo Eobsneun Supsokeseo”。英語では “THE FROG(カエル)”。

科学、物理学を連想させる邦題なので “シュレーディンガーの猫” や “観測者問題” と絡んでいるのかと思いきや、そうではなさそう。

ならば、物語の主要な舞台となるモーテルや貸別荘が人里離れた森の中にあり、常軌を逸した人物たちによって信じがたい事件が起きる、ということを遠回しに伝えているのかなと考えてみましたが、最終エピソードで、もっと深い意味が込められていたことがわかります。

物語のざっくりとした構成

モーテルで展開する話と、貸別荘で展開する話、ふたつがドラマの両輪になっています。

はじめは同時期、並列して進行しているかのように見えましたが、実はそうではありませんでした。互いに関連はないけれど後に接点が生まれるという仕立てになっています。

  • モーテルが舞台:2000年前後から始まる、推定15~20年の長いレンジの話(※「今から20年前」が匂わされている。20年に亘る物語だとしたら、事件当時13歳だったギホは33歳になっているはず。しかし私の目には彼は20代前半にしか見えないのである)。経営するモーテルで連続殺人犯(チ・ヒャンチョル)が女性を斬殺。それをきっかけにモーテルのオーナーだったク・サンジュンと彼の家族(ウンギョン、ギホ)に苦難が押し寄せる
  • 貸別荘が舞台:近年(1~3年くらいの間に)起きた出来事が中心。オーナーのチョン・ヨンハと彼の周辺(友人ヨンチェ、娘ウィソンなど)が謎の宿泊客(ユ・ソンア)によって予期せぬトラブルに巻き込まれていく

モーテルが舞台の話

建設現場や工場で働いてきたク・サンジュンは念願のモーテルを手に入れ、妻ウンギョンと切り盛りしています。モーテルが3周年を迎えた2001年7月、連続殺人犯の男(チ・ヒャンチョル)が宿泊した部屋で女性の斬殺死体が発見され、その日を境に一家の苦難が始まります。

サンジュンと妻ウンギョンは不本意ながら製材所や飲食店で働くこととなり、息子ギホは学校で執拗ないじめに遭います。一家は精神的に疲弊して離散します。

貸別荘が舞台の話

余命宣告された妻のために購入した建物を貸別荘として運営していたチョン・ヨンハ。ある日、男の子を連れた女性がやってきます。予約はありませんでしたが、ヨンハは彼女たちに部屋を提供します。女性は姿を見せることなくチェックアウト。セキュリティ映像を調べてみると、車で別荘を後にする際、男の子の姿はなかったことがわかりました。

使っていた部屋の様子などから、男の子は殺されたのではないかとヨンハは疑いますが、妄想かもしれないと自分に言い聞かせます。ふたりの宿泊客の記憶が薄れた1年後、再び女性(ユ・ソンア)はひとりでヨンハの貸別荘を訪れます。

常軌を逸した行動を繰り返す彼女は別荘に居座り、ヨンハは精神的に追い詰められていきます。

ふたつの物語に共通するのはサイコパスとの対峙

モーテルの物語では、マスコミや人々の注目を集めることを好む連続殺人犯チ・ヒャンチョルによって悲惨な経過を辿ったサンジュンとその家族を描きます。長い年月を経て、ヒャンチョルが復讐を受ける流れになります。

貸別荘の物語では、不快感100%でねっとり絡みつく蛇のような美女ユ・ソンアに翻弄されながらも、彼女を排除しようともがくヨンハの姿を描きます。

果たしてサイコパスたちと(直接の、というよりは間接的な)犯罪被害者たち、どちらが相手を制することになるのでしょうか。

英語の題名になった “カエル(THE FROG)” とは「たまたま石に当たった不運な人」を指しているようです。

登場人物

モーテルの周辺人物

ク・サンジュン:レイクビュー・モーテルのオーナー

ソ・ウンギョン:サンジュンの妻。ストレスからアルコール依存症になる

ク・ギホ:サンジュンとウンギョンの息子。成績優秀。学校でいじめに遭う

パク・ジョンドゥ:サンジュンの友人。母(キム・ギョンオク)の商店を継いで “ジョンドゥ・スーパー” を経営している

チ・ヒャンチョル:モーテルに宿泊する連続殺人犯。マスコミから取材を受けるのが好き

貸別荘の周辺人物

チョン・ヨンハ:ソウルの家を売却、脱サラして貸別荘のオーナーになる

イ・ソンラン:ヨンハの妻。余命宣告されている

パク・ヨンチェ:ヨンハの友人で隣人。貸別荘の仕事を一緒にしている

チェ・ギョンナム:コインランドリーの店主

チョン・ウィソン:ヨンハの娘。ソウルに住んでおり、薬局で働いている。医師と結婚する。意外に腕っぷしが強い

ユ・ソンア:謎の宿泊客。ハ・シヒョンという男の子を連れている。ヨンハの悩みの種となる

ソン・ジス:ヨンハの娘ウィソンの結婚相手で医師

警察関係者

ユン・ボミン:強力班からホス交番所長に転属してきた刑事。“鬼” というあだ名をもつ。現在と若手の頃、それぞれを違う女優が演じている。正直言って、このふたりが同一人物に思えない

キム・ソンテ:チャラい若手警官

チェ・ジョンホ:警査。キムの上官

カン刑事:ユン・ボミンが若い警官だった時代の先輩

その他

ハ・ジェシク:ユ・ソンアの元夫

ユ・ウォン:ユ・ソンアの父で医師

ヨム・ドンチャン:連続殺人犯チ・ヒャンチョルを追いかけているチュンミン日報記者

感想:とても面白くて当たりくじを引いた気分

イラつかされる展開が秀逸

焦らされる感じは “貸別荘パート” が担当しています。美形ですが、あざとくてウザい地雷女のユ・ソンア。ウザさ加減が並外れているため、恐らく誰からも愛されないと思いますが、お金だけはたくさんあるようです。彼女に “してやられ” つつ「負けてなるものか」と抵抗するヨンハ(貸別荘オーナー)の “もたつき” にもイラつかされます。

彼女が最初に宿泊した際、不審な点を警察に通報すればよかったものの、変に隠匿の片棒を担いだことでヨンハは蟻地獄にはまっていきます。

ユ・ソンアを見ては「この忌々しい女を誰か成敗してくれ」、ヨンハを見ては「覚悟を決めて早く警察へ行け」と思わされる展開になっています。

警察主導でコトが動くと思いきや

エピソード1から “鬼” と呼ばれる刑事ユン・ボミンが登場。「凄腕刑事主導で事件解決に当たるのかな」と思いきや、彼ら警察は大きな動きをみせません。

刑事ユン・ボミンが “鬼” でも何でもいいのですが、警察全体としては “ひと通りの仕事をした” だけ(ただし最終エピソードでは彼女メインで頑張りを見せます)。そこが意表を突かれて面白かったところです。サイコパスと被害者のせめぎ合いのほうが手に汗握るので、あれでよかったと思います。

恐らくチュンミン日報記者のヨム・ドンチャンが刑事ユン・ボミン(歳をとったほう)の夫であり、娘の父。比較的細かな(=重要度の低い)伏線が、むしろ味わい深かったりします。最終エピソードでは、以前親子3人で写っていた写真立ての写真が娘だけのものに差し替えられており、次にキャビネット上にある空の写真立てにカメラの焦点が当たります。夫とは離婚したのかも。

妄想や想像の世界を上手に使う

モーテルオーナーのサンジュンや、貸別荘オーナーのヨンハらの不安が作り出す妄想や想像の世界が、しばしば実際にあったことと同列に映像化されるため、オカルトっぽさが醸し出されます。

視聴者が理解している筋書きをときどき惑わされる感じです。観る側の揺らぎによってハラハラドキドキが増幅される描写になっています。

ふたつの物語の関わり具合が適度

ストーリーが始まった頃はモーテル、貸別荘の物語が、同じ時期の別の場所で並列的に起きているものと思い込んでいました。しかしモーテルの事件は2001年に起きており、貸別荘に謎の美人宿泊客が訪れた時期とは異なります。登場人物同士も知り合いではありません(後に一部、知り合いになりますが)。

バラバラの伏線によってふたつの物語が支えられています。線路に例えると、別々の場所に存在していた2本の単線が、ある時点で接近して複線となり、しばしば相互に連結するような構成になっています。それによってドラマ全体としてのパズルピースがはめ込まれ、完成へと近づいていきます。

よくできたサスペンスドラマだと思いました。

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