「ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ」は、A.J.フィンによるベストセラーミステリー小説をもとにした映画です。主演がエイミー・アダムス、共演がジュリアン・ムーア、ゲイリー・オールドマンなどの有名&大御所系のようですが、私のよく知らない人たちです。
とてもショックなことがあり広場恐怖症となったため、セラピストの治療を受けつつ、アナはニューヨークでひとり暮らしをしています(夫とは別居)。アナの向かいの部屋に、ラッセル家(夫婦&息子)がボストンから引っ越してきます。
アメリカでは引っ越してきた家庭に対し、近隣住民が「ウェルカムバスケット」を持参して挨拶に行くという慣習があるようです。国民性の違いといいますか、日本の場合は「どんな人たちだろう?」と関心があってもあからさまにせず、相手が挨拶にやってくるのを待ちますが、アメリカ人は「どんな人たちだろう?」と思ったら、自分のほうから挨拶に行くということではないでしょうか。それはともかく広場恐怖症のアナが外へ出られないためか、ラッセル家の息子イーサンのほうから訪問してきます。そこからストーリーが始まります。
イーサンは父親との関係に問題を抱えているようです。アナ自身が病んでいるのだから、自分の治療のことだけを考えていればよいのに、アナはイーサンから話を引き出し、味方になろうとします。
ある日アナは、ラッセル家の母親ジェーンが殺されるところを自宅の窓から目撃します。アナも児童を専門としたセラピストですが、メンタル面の治療のための薬と依存症によるアルコールに浸っています。彼女は赤ワインを手放しません。
アナは警察へ通報し、目撃した殺人の正当性(「確かに私は見た」)を主張しますがラッセル家は否定、死んだはずのジェーン(アナの知っているジェーンではない女性)も登場。治療のためとはいえ薬漬け、アルコール依存者の見た幻覚として処理されます。警察もアナの訴えに取り合いません。アナを気の毒な病人として扱います。
一方ドラマ「窓辺の女の向かいの家の女」は「ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ」をなぞった作品で、主人公はやはりアナ。ディテールの展開は異なります。「ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ」が101分にまとめられた単発の映画であるのに対し、ひょっとしたらシーズン2以降への展開も視野に入れて制作されたのが「窓辺の女の向かいの家の女」なのかもしれません。
「窓辺の女の向かいの家の女」のアナ役はクリスティン・ベルで「アナ雪」の「アナ(声)」役ほか、それなりのキャリアをもっている女優さんのようです。
こちらのアナも夫とは別居のひとり暮らし。画家設定です。常に赤ワインを手にしていてアルコール依存症、加えてメンタル系の薬を飲んでいます。こちらのアナも人生最悪の出来事をきっかけに雨恐怖症になり治療を受けています。
向かいの家に引っ越してきたコールマン家の父娘(というか父のほう)が気になり、イケメン父の娘をだしにしたり、キャセロールを持参したりして接近を図ります。しかし美人の自称CAが彼の恋人として現れ、アナをイケメン父から遠ざけようとします。
美人CAにうさん臭さを感じたアナは独自に調査を開始。そんなある日、恋人CAがイケメン父宅で殺されるところを向かいの窓から目撃、アナは警察へ通報します。しかし恋人CAはシアトルへのフライト勤務中であり、殺されてなどいないと警察から伝えられます。イケメン父娘からも不審者として扱われるアナ。
ふたつの作品には共通したプロットがあります。
- アナの住む部屋の屋根裏や地下室に、家族ではない同居人(犯罪歴ありの男性)がいる
- アナはいつも赤ワインを飲んでいる
- アナはアルコール依存症とメンタル系の薬の服用、もとの性質により妄想傾向にある。幻覚を見ることもある。アナ自身もどこまでがリアルで、どこからが妄想や幻覚かが分からないときがある
- アナは白人、夫は黒人で別居中。娘は既に死んでいるが、生きているかのようにアナが振る舞うときがある(幻覚あるいは妄想と思われる)
- 娘の死に関して、アナは強い罪悪感をもっている
- パニック発作を起こし、向かいの部屋の住人に助けられる
- アナの殺人事件目撃の通報に対応する主担当警官が黒人、補佐が白人。「ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ」では前者が男性で後者が女性、「窓辺の女の向かいの家の女」では男女が入れ替わる。黒人警官は後にアナに謝罪する
- 警察が相手にしてくれないのでアナは探偵化、向かいに住む一家の周辺を嗅ぎまわる
- 被害者(と目される女性)が昔の恋人にもらったイヤリングの片方をアナが拾う
- ラッセル家の父の秘書は高層階から落下、コールマン(イケメン父)家の教師は灯台から落下して、どちらも死亡
- ○○ー○ーな○○○が伏線回収
アナが自分の部屋の窓から殺人を目撃 → アナは自分が見た事に間違いはないと思っている → アナは殺人があったことを証明できず、しかも証拠になると思ったことが覆され否定され続ける → しかしアナが目撃した殺人は本当に起きていた → そして犯人は・・・
という流れも同じです。
「窓辺の女の向かいの家の女」は全8回のシリーズなので、映画「ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ」より、やや複雑なエピソードを付け加えて組み立てられています。
「窓辺の女の向かいの家の女」の最後は、友達に会うために飛行機でニューヨークへ移動するアナが、隣の席だった老婦人が機内トイレで死んでいるのを発見。男性CAに告げるも死体は消えており、「そもそも、あなたの隣に乗客はいなかった」と言われます。しかし老婦人の座席には彼女が使っていた折り畳み鏡が落ちており「ビンゴ!」。アナはウォッカで薬を飲んでいました。幻覚なのか、老婦人が本当にいたのか、どちらでしょう?ひょっとしたら伏線回収のシーズン2があるのかもしれません。
先に映画「ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ」、次にドラマ「窓辺の女の向かいの家の女」を観ると、「あっ、これね」と思う点がいろいろあって、私は楽しめました。