本シーズンは「ジョエルを殺したのは誰か?」をメインテーマに、時間軸を前後させて出来事をジクソーパズルのように散りばめることで、何名かの容疑者が思い浮かぶように作られています。「何がどうだから」という推理によるものではなく、はじめから「犯人はあいつだ」との直感が降りてきて見事に的中。本作は学園サスペンスではありますが、謎解きに適した構成になっていないので視聴者の多くは勘で犯人を予想するほかありません。
ジョエルはシーズン7から登場した “家なき子”。裕福なイヴァンの学費サポートを得てラス・エンシナス高校で学んでいます。位置づけがよくわからないのですが、スペイン人の目には “キュートな男の子” に映るのかもしれません。
そしてイヴァンはシーズン8も続投。これまでも「このシーズンで退場か」と思わせて翌シーズンに登場。どのシーズンでもそれなりに重要な役割を担っているので制作者のお気に入りなのかも(あくまでも想像です)。演技が上手ですしね。
【ジョエルを演じているのは】
フェルナンド・リンデス。インスタグラムから見出されてモデルとなる。身長187㎝。近年は俳優として活躍の場を広げている。ユージニア・アランツというガールフレンドがいるのでフェルナンド自身はゲイではないと思われる。2000年生まれの24歳
オマールの姉ナディアがアメリカから一時帰国。ラス・エンシナス高校のアルムニ(同窓生クラブ)を通して国連のインターンに選ばれたという設定。彼女の姿を見られるのは嬉しいもののシーズン8においては脇役のひとりだったように感じます(ゲスト出演臭が強い)。
ロシオ(母親逮捕)、ディダク(警察に情報提供)はシーズン7でお仕事完了。シーズン8には出てきません。
[シーズン8の新キャラ:アルムニ(同窓生クラブ)を仕切る兄妹]
※字幕では “兄妹” となっているが、兄役のヌーノより妹役アネのほうが実年齢では2歳年上
エクトル(ヌーノ・ガレゴ/23歳) ⇒ エミリアの兄でゲイ。感情の起伏が激しい。コングロマリットを展開する特権階級クラヴィエッツ家の出自でアルムニの会長
エミリア(アネ・ロット/25歳) ⇒ エクトルの妹。クールでずる賢い。兄エクトルへの執着心が強いが、彼から疎んじられている。アルムニの副会長
エクトルとエミリアの兄妹は新たにアルムニの責任者に就任。ラス・エンシナス高校で自分たちの勢力を拡大しようと目論んでいます。
[ストーリーの流れ]
イヴァンは交換留学していた南アフリカから帰国。イサドラ、ジョエル、クロエ、エリック、ソニア、ニコ、サラも引き続きラス・エンシナス高校の学生。彼らは最終学年です。
改めて言うまでもなくラス・エンシナス高校は堕落しきっています。それでも名門らしく、同窓生クラブ(アルムニ)に入会することで卒業生たちとの人脈、社会的な恩恵を得ることができます。今までだってあっただろうに唐突に存在感を示す同窓会。とって付けた感はありますが、それが「エリート」の世界。
組織を仕切る特権階級クラヴィエッツ家の兄妹(エクトル、エミリア)は権力を笠に着てクロエやイサドラ、ジョエルらを操ろうとします。
割と早々にジョエルの殺害が明らかになります。ゲイのエクトルはジョエルを自分のものにしてコントロールしようとしており死体の第一発見者は彼でした。犯人はエクトルなのでしょうか。お約束の色恋の世界も濃密に組み込まれ、物語が進行していきます。
基本的な流れは「ジョエルを殺したのは誰か?」に沿っていますが
- イサドラのクラブ事業(イサドラ・ハウス)の借金問題
- カルメン(クロエの母)がラウルの死に絡んでいる問題
- カルメンとイヴァンの親子問題
- エリックやオマールの精神的危うさの問題
- ダルマール(ソニアの恋人でギニアビサウの人みたい)の不法滞在問題
- イヴァンとジョエルの恋愛問題
- アルムニ(同窓生クラブ)のセックスパーティー問題
などが絡む内容になっています。
「エリート」においては、移民役や人種差別問題は中東やアフリカにルーツをもつ人たちが担っています。東洋人がまったく出てきません。「それをどう解釈したらよいのでしょう」とは思いましたね。マイノリティのなかでも、ひときわ眼中に入らない存在なのか、演じる俳優らが見つからなかったのか。もちろん金持ち側にも登場せず「エリート」の世界に東洋人はいないのです。
アルムニ兄妹のエクトル役が、これまで登場した男子生徒たち(グズマン、ポーロ、アンデル、パトリックなど)の成分をかき集めた感じなのが、なかなかよいです。懐かしさと集大成を感じます。演じているヌーノ・ガレゴは映画やドラマのキャリアは浅いものの将来を非常に嘱望されている若手俳優のようです。複雑で厄介な性格のエクトルを上手に演じています。ドイツの俳優ルイス・ホフマンに少し似たビジュアルです。
これまでのシーズンにおいて、いろんな生徒が登場しました。はじめの頃の顔ぶれのインパクトが強く、後のキャラたちの多く(※すべてではない)が先達の下位互換に見えてしまうところが「エリート」シリーズの弱いところかなと思います。ビジュアルや演技が劣るということではないのですが。
逆に下位互換化によって「心理的慣性の法則」みたいなものが働き、シーズン1から観ている私のような者が、なんだかんだ言いながらも視聴し続けた面があるかもしれません。
ラストシーンではザ・クラッシュの「Should I Stay or Should I Go」をBGMに労働者階級の通う公立高校を見せることで「エリート(ラス・エンシナス高校)」の世界から異次元の現実へと遷移。ドラマは幕を閉じます。
2018年から6年に亘って楽しませてくれたスペインのドラマ「エリート」。ありがとう!