シーズン1~3についてはコチラ(↓)をご覧ください。
南アフリカの学園ドラマ「ブラッド&ウォーター」。ストーリー展開のみから判断するとシーズン4が最終っぽいです。
やはりスペインのドラマ「エリート」に似ています。ラス・エンシナス高校からの交換留学生としてイヴァンがゲスト出演していますしね。
「エリート」のシリーズ後半同様の薄っぺらさ(ご都合主義)は多々ありますが、起きる事件や関係者の対応のあり方に「エリート」よりは現実味があるので相応に納得できる落としどころになっています。念のため補足しますと「エリート」はシリーズ前半(シーズン3~4くらいまで)は現実離れはしていても優れた作品でした。
「エリート」の高校生たちは散々好き勝手しておきながら、不利益を被りそうになると突然 “友情” らしきものが発動して助け合います。恋愛もSEXも本能のままに楽しんでいますが、別れのときを迎えると “Te quiero.” と大泣き。中身の軽さに対して感情表現が大袈裟で「どこに貯めていたのか」と思うほどに大量の涙を流します。
一方「ブラッド&ウォーター」の登場人物たちは高校生として、まだ理解できるレベルの身勝手さです。
導入部あらすじ
シーズン3までの高校生を巻き込んでの事件は彼らの心や身辺をかき乱します。一方で新学期に入り、高校生たちを新たな出会いや出来事が待ち受けます。すっきりしないものを内面に抱えつつ、若者たちはパーティーで馬鹿騒ぎをしています。
プレンはパーティーで出会ったイヴァン(「エリート」の舞台であるラス・エンシナス高校からの交換留学生)と出会い、すぐに肉体関係を結びます。ふたりのSEX動画が盗撮されてプレンは脅迫されます。
誘拐・恐喝・人身売買で有罪となったKBの母親が裁判所で告げた「まだ終わっていない」という言葉が気になるプレン。SNSを使った脅迫の背後に国際養子縁組機関 “ポイントグレース” の存在を感じて刑務所にいるKBの父親とコンタクトを取ります。
脅迫者捜しは難航し、プレンやフィキレ、友人たちを巻き込んでの事件へと拡大していきます。
登場人物紹介
既に登場している人物
パーカスト高校の生徒
- プレン・クマロ ⇒ これまでのシーズンではKB、ウェイドと交際。大事件の後で平常心を失っていたのか、シーズン4の冒頭でスペインからの交換留学生イヴァンとインスタントな関係をもつ
- シヤ・クマロ ⇒ プレンの弟。母タンデカ、母の恋人アンソニーとの関係がぎくしゃくしている
- フィキレ(フィクス)・ベレー ⇒ サムと交際中。一連の出来事による心身の傷が癒え切っていない
- サム・ンコサナ ⇒ フィキレと交際しているが、監禁された際のトラウマが邪魔をしている
- クリス・アッカーマン ⇒ 行き場のないKBを自宅に住まわせ、彼のマネジメントに精を出す
- KB(カラボ・モラポ) ⇒ クリスの後押しを得て、ラッパーとしての活動を行う
- ウェンディ・ドラミニ ⇒ シーズン3ではスペインへ留学していたが、今シーズンはパーカスト高校に戻っている。クリスと交際中
- ウェイド・ダニエルズ ⇒ プレンの指示で情報収集に協力する相変わらずのお人好し。下級生アサンダとの距離を縮める
- タヒラ・カーン ⇒ 大学進学を控えて奨学金の心配をしている。依然として生徒会長
- ポーリーン / ザイード / ブルース・クワン ⇒ 試験問題不正入手の悪だくみをしている
- リー・アン ⇒ 雑誌部のメンバー。SNSが得意
フィキレ(姉)とプレン(妹)は同学年ではなく、整理すると以下のようになります。みんなでワーワーやっているので学年が違うことを忘れがちです。
- フィキレ(姉)と同学年:クリス(後に留年してプレンと同学年になる)、KB、ウェンディ、タヒラ、サム、ポーリーン、ザイード、ブルース(退学したけれどリースも)
- プレン(妹)と同学年:ウェイド、リー・アン
パーカスト高校の生徒たちの家族
- タンデカ・クマロ ⇒ プレンの母。かつての恋人アンソニー・ガビサとの距離を縮める
- ルンガ・ヴェジー ⇒ プレン、シヤのいとこ。パブで働いている。シーズン3で初登場したときは「なんでこの人が?」と思ったが、プレンやシフにとっては父親や兄のような父性的存在、高校生たちとの絡みではLGBTQ領域や兄貴分の役割を担っているように見える
- アンソニー・ガビサ ⇒ プレンの母タンデカの元恋人。フィキレの実の父。アーティスト
- ブライアン・ベレー ⇒ フィキレの養父。養女フィキレが実父アンソニー・ガビサとの関わりを深めることに複雑な思いを抱いている
- リズベス・モラポ / マトラ・モラポ ⇒ KBの両親。誘拐・恐喝・人身売買で有罪となり刑務所に入っている
- ニコール・ダニエルズ ⇒ ウェイドの母。パーカスト高校の元校長
その他
- ハロルド・グルートブーム ⇒ パーカスト高校の新校長に就任。生徒たちに対して口やかましく厳しい
- リース・ヴァン・レンスバーグ ⇒ パーカスト高校を退学となり、別の高校に通っている
- ヴァンス刑事 ⇒ 裁判にかけられる予定だったが失踪する(話題に出るだけ)
- ピーターソン刑事 ⇒ ヴァンス刑事が失脚したためか、シーズン4では単独で動いている
シーズン4で新たに登場する人たち
高校生
- イヴァン ⇒ スペインにあるラス・エンシナス高校からの交換留学生(スペインのドラマ「エリート」からのゲスト出演)としてフィキレの家に滞在。プレンと肉体関係をもつ。2週間の短期留学で学業以外のことばかりを堪能した男
- アサンダ・マケバ ⇒ パーティーでウェイドと出会う。写真撮影が趣味。両親はメディアでよく見かける有名人
その他
- “プールボーイ”:動画をネタにプレンらを脅迫する謎の人物
- ジェームズ:“プールボーイ” の仲間
- ジョス:“プールボーイ” に借りがあって協力している人物
- グレゴリー・ディクソン(バウワー) ⇒ パーカスト高校出身者
- ラフ・ビーツ:KBが許可なく使用した原曲の持ち主
感想1:デジタル時代の高校生は楽しそうだけれど大変だ
「ブラッド&ウォーター」のパーカスト高校、「エリート」のラス・エンシナス高校の生徒たちはパーティー、ドラッグ、SEX三昧で羽目を外しまくっています。インターネットやSNSが彼らのコミュニケーションを支えています。そもそもドラマですし、お金がなければできないことも含まれているので、現実を生きる普通の高校生にはあまり起こり得ない姿であると思います。
IT技術が日常生活に浸透するのは便利な反面、動画の拡散、画像の流出、SNSを使ったイジメ、プライベートの盗撮、匿名での脅迫など、今の高校生たちを取り巻く脅威を大きなものにします。一旦インターネット上に上がったものは、デジタルタトゥとなって消し去ることが困難です。
最近視聴したアメリカのドキュメンタリーでは、当事者が消去したデータや画像、チャットや閲覧の履歴などを警察やFBIが復元していました。その作業を行うにあたっては事件性が認められる等の要件があるのかもしれません。しかし社会機構や国家権力、ハッカーらによる個人情報の把握は当人の知らないところで確実に進んでおり、日本も同様なのではないでしょうか。
インターネットやネットワークにつないだ瞬間に “個人のプライバシー” は消失しているのです。悪用されないように自分なりの対処はできるでしょうが、誰からも隠すことのできる情報などないと思っていたほうがよさそうです。
思春期や若い時期に狂気にも似たエネルギーを何かに投下すること(=狂おしいほどに夢中になること)、羽目を外しておくことは大切だと私は思っています。「そこそこ」「ほどほど」「当たり障りのない範囲で」「安全第一」は大人や年寄りにふさわしく、若い時期に何かに対して惜しみない情熱を注ぐ体験をしておくことは先の人生の幅や深みを広げるためにも重要です。社会から若干はみ出た行いだったり、失敗して周囲に迷惑をかけることがあったりしても、若い時期であるからこそ寛容さをもって社会に許容されるのです。
本作や「エリート」のような学園ドラマに出てくる高校生たちは打たれ強いというか、軽率な行為が深刻な結果につながったとしても気持ちの切り替えが早いです。凹んだとしても立ち直りが早いのは若者の特徴であり結構なことですが、言動や行動が消えない刻印となってデジタルの世界に残るのが今の時代。インターネットのなかった頃の若者のほうが時限的、特権的な自由や無謀な突っ走りを満喫できたのではと思います。
こういった自由奔放な学園ドラマの世界は一過性の創作なので少し違いますが、効率的で待ち時間や試行錯誤の少ない暮らしを手に入れたことで、かつてのように「若気の至り」を「なかったこと」や「忘れてしまえる昔話」にできた時代は終焉したように感じます。
感想2:イヴァン役のアンドレ・ラモリアについて
ドラマ「エリート」から交換留学で「ブラッド&ウォーター」へやってきたイヴァン。声質も顔つきも割と好きなブラジルの若手俳優が演じています。そうはいっても男女どちらもOKのヤリ〇ン役はもう十分。タイプの異なる役柄も観てみたいです。