モサドによるユダヤ難民救出作戦-映画「紅海リゾート-奇跡の救出計画-」

スポンサーリンク

モサド(イスラエル諜報特務庁)が1980年代に行ったモーセ作戦ならびにヨシュア作戦(総称:ブラザーズ作戦)を題材にした映画(原題:The Red Sea Diving Resort)。内戦状態のエチオピアから、モサドのエージェント(諜報員)たちがユダヤ難民を救出する物語です。

スーダンにリゾートビレッジ(表向き)を用意し、一般の観光客に利用してもらう一方で、そこから難民を移送します。実話に加えた脚色が多く「事実の重みに反して薄っぺらい」と批評家を含めて評価はあまり高くないようですが、エンタメとして大局的に視聴すればかなり面白い作品と思います。

実際にエチオピア系ユダヤ難民救出の拠点となった紅海のアロウスホリデービレッジ(放棄されたリゾート地)はポートスーダンから約70キロに位置し、1985年までモサドの工作員によって管理されていました。これら難民救出作戦の存在は、ガッド・シムロンの1998年の著書 “Mossad Exodus: The Daring Undercover Rescue of the Lost Jewish Tribe” で初めて明らかにされましたが、同書と映画は無関係であるそうです。

題材となった“ブラザーズ作戦”とは

“ブラザーズ作戦” とは “モーセ作戦” や “ヨシュア作戦” の総称。物語の題材となった、それぞれの作戦とはどんなものだったのでしょう。枠内に要約しました。

実際の作戦をベースに考えると、映画「紅海リゾート-奇跡の救出計画-」視聴後の理解との間に若干の不一致を見出します。陰で尽力した人たちの努力や苦労に変わるところはないものの、映画はあくまでも創作作品として楽しんだほうがよさそうです。

それにしてもイスラエルとアメリカの関係の強さには驚かされます。難民救出にはアメリカが深く関わっていたのですね。それも “ユダヤの力” なのでしょうか。

[モーセ作戦]

モーセは古代イスラエルの民族指導者。神の命令によって奴隷状態のヘブライ人をエジプトから連れ出す使命を受けたとされている。

聖書にちなんで名付けられたこの作戦は、イスラエル国防軍、中央情報局(CIA)、ハルツームの米国大使館、傭兵、スーダン国家治安部隊の協力によって行われた。作戦完了の数年後、スーダンのイスラム教徒と秘密警察もエチオピア系ユダヤ人の大量移送をサポートする役割を果たしていたことが明らかになった。

具体的には1984年8月以降、スーダンからブリュッセルを経由してイスラエルへエチオピア系ユダヤ人が移動(ベルギーのトランス・ヨーロピアン・エアウェイズによる航空輸送)。30週間で200便以上に上ったフライトによって人々をイスラエルへと移送した。

スーダンはイスラエルが難民を避難させることを密かに許可していた。それを察知したアラブのイスラム諸国はスーダンに圧力をかけた。“モーセ作戦” は、他国にいるユダヤ人を支援するためにイスラエルが行ったすべての救助活動の中で最も費用がかからなかった。

[ヨシュア作戦]

1985年にスーダンの難民キャンプからイスラエルへエチオピア系ユダヤ人を航空移送した作戦。

エチオピアのユダヤ人は、自国の深刻な飢饉からスーダンの難民キャンプに身を寄せていた。しかしイスラム諸国からの圧力により、ユダヤ難民の移送に関してスーダンからの協力を得られなくなっていた。

米国上院議員たちがレーガン大統領に宛てた救出再開の極秘請願書に署名。その後、ブッシュ副大統領がフォローアップミッションを手配。それが “ヨシュア作戦” である。 500機の米国空軍C-1ヘラクレス輸送機が派遣され、アルカダリフの近くに着陸。ユダヤ難民はイスラエル南部のオブダ空港へと移送された。

ざっくりとあらすじ(導入部分のみ)

物語は1979年の内戦で混乱したエチオピアから始まります。

[エチオピア内戦]

1974年9月~1991年6月、エチオピアとエリトリアでの共産主義を掲げるエチオピア人民民主共和国政府と国内の反政府勢力の対立による内戦が行われた

モサドのエージェントであるアリ・レヴィンソンとサミー・ナヴォンはエチオピア系ユダヤ人のカベデ・ビムロとその家族、集落の人たちを救出。同じ聖地エルサレムをもつ仲間として、アリは「誰ひとり置いていかない」ことを信条としていました。彼は無鉄砲な男でもありました。カベデらはスーダンの難民キャンプへと辿り着きますが、彼とアリ、サミーは密輸業者の嫌疑で身柄を拘束されます。そんな彼らは、ハルツームの米国大使館員ウォルトン・ボーウェンによって釈放へと導かれます。

その後、難民キャンプからユダヤ難民を救出する手段として、モサド諜報員のアリはスーダンの海岸沿いにあるリゾート施設 “紅海リゾート” を借り受けて運営し、そこを難民保護活動の拠点にするというアイデアを上層部に提案。提案は型破りなものでしたが、それを越える代替案もなかったため、彼の提案を実行に移すことになります。

アリの計画をサポートするエージェントとしてレイチェル(パンアメリカン航空のCAとして潜入捜査中)、ジェイク(ベリーズでお楽しみ中)、マックス(オランダでミッション中/スーダンではマルタ人設定)、サミー(医師としてお仕事中/スーダンではオーストラリア人設定)がスーダンへ派遣されました。アリとレイチェルはスーダンの観光省と交渉、スイスのナトコアというペーパーカンパニーを介してリゾート施設をリースします。

リゾート施設には本物の観光客もやってくるようになり、それをカモフラージュとして難民をイスラエルに移送。難民キャンプからリゾート施設へとユダヤ難民を脱出させる役割を、同じく難民であるカベデ・ビムロが務めます。作戦は上手くいっているかのように見えました。

※ 実際に行われた “モーセ作戦”(1984年頃)より、この映画で展開される作戦(1980~81年頃)のほうが時期設定が早くなっています。

※ “モーセ作戦” ではベルギーの航空会社が、“ヨシュア作戦” ではアメリカ空軍がユダヤ難民の移送を請け負ったようですが、映画では空からの移送シーンは最後のみです。

この作品の楽しみ方

実話との一致を求めなければ、楽しめる要素はいろいろあります。

「エチオピアは内戦状態」⇒「命の危険からスーダンの難民キャンプへ」というところまでは理解が容易なのですが、「スーダンの難民キャンプ」⇒「約束の地であるエルサレムへ密航(+それへのこだわり)」という部分は熱烈な信仰心をもっていないと共感に至りにくいように感じました。

ユダヤ難民を理由にイスラエルが難所から救出してくれるのであれば、それはそれでありがたい気はしますが。

[私はここを面白いと思った]

  • 偽のリゾート施設のつもりが、本物の観光客がやってくるようになって本物のリゾート施設になったこと ⇒ モサドのエージェントたちが、スポーツやレジャーのインストラクターも務めていて面白い。彼らも楽しそう
  • 「見る前に飛べ」タイプの無鉄砲なアリの無謀過ぎるやり方 ⇒ 映画であるためか、結果オーライであることがほとんどなのだが
  • 鉄砲玉アリと、彼の計画性の欠如したやり方に否定的なサミーが事あるごとに揉める ⇒ 私はサミータイプなので彼の苛立ちがよく分かる。しかし人間関係の軋轢や揉め事はチームプレイにおいて面倒を増やすだけ
  • 難民たちをトラックに乗せての検問突破、当局に疑いの目を向けられるカベデ・ビムロ(難民キャンプからユダヤ難民を脱出させる役割を果たす姿)などドキドキハラハラの連続 ⇒ そこはやはりサスペンス映画
  • 最後に出てくるモサドエージェント(正真正銘の本人たち)のリゾート施設での様子や救出場面の写真を見ると多少なりとも当時の雰囲気を感じられるし、なぜかほっこりする ⇒ 諜報員はおもてなし、インストラクター、戦闘 etc.何でもできる
  • 映画でレイチェルがCAとして搭乗していたパンアメリカン航空(子どもの頃、私も乗ったことがあって懐かしい)。実際の “モーセ作戦” で難民を移送したベルギーのトランス・ヨーロピアン・エアウェイズ。どちらも後に経営破たん ⇒ 航空会社って栄枯盛衰が結構激しい

[ロケ地]南アフリカ、ナミビア

旅行は人生の大きな喜び(^^)v
ランキングに参加しています。
応援をお願いいたします。
↓  ↓  ↓
にほんブログ村 旅行ブログへ
にほんブログ村