さて強盗団が造幣局で作戦を展開する一方、“教授” は身を挺して国家警察をかく乱し、時間稼ぎをします。時間があればあるほど、強盗チームは造幣局で人質を使って多くの紙幣を刷ることができるからです。
パート2では強盗団のトーキョー、デンバー、そして “教授” も惹かれる相手との結びつきが強くなっていきます。ベルリンも人質女性のなかに相手を見つけますが、彼女は命惜しさから彼に従順になっているように見えます。
離れたところで指揮を執る “教授” からの接触が途絶え、強盗団は彼が逮捕されたのではと色めき立ちます。「“教授” を信じる派」と「計画から降りたい派」で意見が分かれます。
一部の人質は自由となり既に造幣局の外にいますが、残留組(アルトゥーロ、アリソンなど)は引き続き、脱出する方法を模索します。造幣局長のアルトゥーロは基本は小賢しい男と私は思うのですが、率先して人々をリードし、自ら危険に身を投じるところは立派です。
警察と強盗団、人質たちと強盗団、「してやられる」のはどちらでしょう。失いたくない人間関係を利用した駆け引きがあり、同じグループだからと言って味方なのか敵なのか、味方から敵へと豹変するのか、息を抜けない展開です。“教授” の奇想天外な作戦が楽しめる一方で、チームメンバーが独自判断で動く場面、怪我人が増えていきます。
残された強盗チームのメンバーは、9億8400万ユーロを手に、生きて逃げ切ることができるのでしょうか。
[パート2のチーム編成]
パート2の冒頭でオスロ、最終話近くでモスクワが死に、ベルリンも死んだようだ。確実に生きているのはトーキョー、デンバー、リオ、ヘルシンキ、ナイロビの5名となる。
[パート2のポイント]
- 最もラクな役回りと思われた “教授” が窮地で見せる体当たり演技(パート1に引き続いて素晴らしい)
- 警部ラケルのピントのズレた捜査指揮(警部として有能とは思えない)& 逢瀬を重ねていた男性が “教授” であることに、さすがの彼女も気づく時がやってくる
- 強盗団は計画を続行するのか、放棄するのか。メンバー間に反目、抗争、下剋上が起こる
- 事前の “教授” のケース別レクチャーがいちいち綿密
- 謎めいた “教授” のバックグラウンドが少しずつ明らかになっていく
パート1はエピソード13までありましたが、パート2はエピソード9まで。パート1で多角的に蒔かれた材料が、パート2で絞り込まれて展開していく感じです。
造幣局を舞台とした展開はパート2で一旦終了。パート3へとストーリーがつながっていくことを示唆した終わり方となっています。
今回は「頭脳派と思いきや、驚きの演技派の “教授”」を演じるアルヴァロ・モルテ、強盗団リーダーのベルリン役ペドロ・アロンソを取り上げます。
[キャスト紹介]
アルヴァロ・モルテ(“教授”役)
1975年アルヘシラス生まれの俳優。コミュニケーション工学の学位をもち、1999年にエスクエラ・スーペリア・デ・アルテ・ドラマティコ・デ・コルドバを卒業。その後、タンペレ大学院へ進学。33歳のとき左太ももに癌性腫瘍ができたが克服した。テレビドラマを中心に活動していたが、2012年に劇団「300ピストラ」を妻とスタート。ライフヒストリーが、どことなく “教授” と被る人である。
ペドロ・アロンソ(ベルリン役)
1971年ビーゴ生まれの俳優、作家、芸術家。マドリードの王立演劇学校(RESAD)を1992年に卒業し、ダンス劇場で学んだ。スペイン語、ガリシア語、カタロニア語、英語を話す。パリの催眠療法士でアーティストのタチアナ・ジョルジェビッチと交際関係にある。以前のパートナーとの間に娘がいる。私はベルリンの「うっとりと陶酔しきった目」が気色悪くて苦手。そういう役柄なのだろうけれど。
[ロケ地]スペイン、タイ(教授がリスボンに残した手がかりは “10°0’0″N 118°50’0″E” で、そこはフィリピンのパラワン島なのだがロケ地リストにはない)