何となく視聴したドラマ「ロレンスコグ失踪事件」(原題 “Forsvinningen – Lørenskog 31. oktober 2018” )。ノルウェーで実際にあった事件に基づいて制作されています(脚色あり)。
単純な事件と思わせつつ、警察・報道メディア・弁護士などの思惑も絡んで意外な展開を見せる、まずまずのドラマでした。エピソード5の終わり方が次のシーズン制作を前提としている感じでしたので、恐らく続きがあるのでしょう。事件は未解決ですし(と思いましたが、リミテッドシリーズでした。続きを期待させつつ、細部にわたって中途半端な終わり方をしていますので続編を作ってほしいです)。
…ということで「ロレンスコグ失踪事件」。かいつまんで説明すると、以下のような感じです。
- 2018年10月31日、ノルウェー大富豪トム・ハーゲンの妻アン・エリザベスが失踪
- 犯人は暗号通貨で身代金を支払うことを要求
- 当初は身代金目的の誘拐と思われていたが、その線じゃないのでは、という流れに
- お金持ちであるにも関わらず、大富豪トムが妻に対して誠にケチな男であることが判明
- トムの子ども時代は恵まれていなかったらしい
- メディアの記者たちも、この事件の解決に向けて危ない橋を渡る
- 警察から新聞社へのリーク、新聞社から警察内部に向けてのリークもある
- トムと妻の関係が上手くいっていなかったという表面的なことのみならず、背景には犯罪組織の関与がありそう
- 捜査は難航し、記者たちもリークや仮説に基づきアクションを起こすが満身創痍。トムの妻は行方不明のまま
ドラマ内で「世界で一番安全で、裕福で、公正な国」と自国ノルウェーを評する場面が複数あり、ノルウェーの人たちはそのように自負しているのだなと感じました。
かつての日本人も「世界で一番安全な経済大国」と日本のことを思っていたのではないでしょうか。そう考えると時代の趨勢には感慨深いものがあります。日本は公正な国ではないと個人的に思っているので、ノルウェーの公正さとはいかなるものか、体験してみたい気持ちになります。
また新聞社内で事件資料(証拠品)の分析の際「言語はDNAに似ている。書き手はノルウェー語が母語で1960年以前の生まれ。言葉は出身や受けた教育を教えてくれる。単語やイディオムの使い方に機械翻訳では困難な一貫性がある。スウェーデン語では、この文脈でこの表現は使わない」という趣旨のセリフが出てきます。
含蓄のあるセリフだなあと私は思いました。話し言葉、書き言葉は、その人の文化水準や育った環境を示します。いろんな意味で、言葉はその人自身です。
警察内部の動きだけでなく、新聞記者同士の競争、成育歴(父親の母親に対する暴力など)の事件関係者への投影などの要素も盛り込まれていて、事件解決に向けた歩みが遅く感じるドラマです。メディアのあり方に対する問題提起も含まれています。実際のところ、事件は迅速な解決に程遠い状況であったわけで、描写を端折らず地道に進行していく本ドラマのあり方は悪くないと思います。
記者アレックスは新聞社を退職して独自の活動へ。彼女の同僚だったアーレンは本件を追い続けることで妻との関係等に問題を抱えます。ノルウェーとスペインに拠点のある犯罪組織と大富豪トムとの関係の匂わせ、ノルウェー警察ヨルンの父とトムの関係等、いくつかの伏線が敷かれています。
大絶賛とまではいきませんが、それなりに面白い作品だと思います。
以前観た「ラグナロク」でラウリッツ役だったヨナス・ストラン・グラヴリが、記者アレックスの恋人役で登場します。ラウリッツは高校生の設定でしたが、アレックスは30歳過ぎの女性に見えるため、ヨナス・ストラン・グラヴリの実年齢はいくつなのだろうと思いました。カップルとしての違和感はまったくなかったので、彼はそれなりに歳を取っているのかもしれません(追記:調べてみたら、それなりに歳を取っていました)。