アリス・フィーニーの小説が原作。原題は “His & Hers”。
物語の進行テンポと描写にあたっての視点の切り替えが上手にコントロールされているため、飽きずに楽しむことのできるサスペンスドラマ。
「ゴーンガール」を思い出す人も少なくないようですが、私はむしろ「殺人を無罪にする方法」に似たものを感じました。6エピソードで完結するので、観て損はないと思われます(性暴力などのシーンがあるので、お茶の間視聴には向きません)。
【要約するとこういうお話】
姿を消していた元ニュースキャスターの妻アナ。殺人事件をきっかけにジョージアの田舎町に戻ると、捜査を担当していたのは別居中の夫ジャック。殺されたのはエリート女子校に通っていた妻アナの同窓生。彼女は夫ジャックのセフレでもあった。妻も夫も互いに知りたくないこと、知られたくないことを抱えている。ドラマの進行に伴い閉じられてきたカーテンが少しずつ開き、それぞれの視点から過去の出来事があぶりだされていく
「どんな物事にも2つ以上の側面がある。あなた側と私側。私たち側と彼ら側。彼側と彼女側。つまり誰かが必ず嘘をついている」
導入部あらすじ
ジョージア州の田舎町ダロネガ。人気のない国有林の道に停車した車のボンネット上の刺された女性が映ります。
場面が変わってアトランタ。フードを被ったアナ・アンドリュースが部屋に戻ります。何か動揺することがあったようです。手を洗い、身の回りの品をまとめて袋に入れて外のゴミコンテナへ廃棄。通りの向こうには地方局WSKテレビのニュース番組をあしらったラッピングバスが停車しています。
アナと別居中の夫ジャックはランプキン郡保安官事務所付の刑事。姉でシングルマザーのゾーイ、彼女の娘メグと同居中です。その日出勤すると「匿名の通報により、女性の遺体が見つかった」ことを伝えられます。
ダロネガで見つかった女性の遺体は40箇所刺され、手の指には「嘘つき」と書かれていました。その後の検視で遺体に精液が付着していたことから、性行為前後の殺害と考えられました。捜査はアナの別居中の夫ジャック、新人刑事のプリヤが担当。ジャックは保安官事務所の人たちや捜査現場を指揮します。しかしその姿にはすっきりしないものがあり、彼には隠したい何かがありそうです。
いっぽう娘を失ったショックから姿を消していたアナは、アトランタのWSKテレビで再びキャスターの座に着こうと考えます。しかし1年のブランクの間に、後釜のレクシー・ジョーンズがポジションを盤石なものにしていました。アナはダロネガの女性殺人事件のレポーターを強引に引き受け、再起の足掛かりにしようとします。カメラマンとしてレクシーの夫リチャードを指名。そのような彼女の一連の動きにも何か隠された動機や真実がありそうです。
ダロネガ国有林で見つかった被害者はアナの高校の同窓生レイチェル・ホプキンス(40歳)でした。
アナとジャックは殺害現場で再会。別居中の妻アナの行動は夫ジャックの神経を逆撫でします。いっぽうで真面目で優秀な新人刑事のプリヤは、上司にあたる刑事ジャックの挙動に不審なものを感じるようになっていきます。
登場人物
アナ・アンドリュースとその家族
- アナ・A・アンドリュース:アトランタを拠点とするWSKテレビの元ニュースキャスター。夫ジャックとの間に娘シャーロットがいたが、ごく幼い頃に亡くしている。アリスという母がいる。聖ヒラリー学園出身
- ジャック・ハーパー:ランプキン郡保安官事務所付の主任捜査官。アナの別居中の夫。もともとはアトランタ勤務の刑事だったが、実家のあるダロネガへ移った
- ゾーイ・ハーパー:ジャックの妹でシングルマザー。アナの同級生でもある
- メグ:ゾーイの娘
警察関係者
- プリヤ・パテル:ジャック・ハーパーの元で働く新人刑事
- キャロル・ターナー:検視を行う監察医
- ワーリー・ザ・テック:ターナー医師の部下
- バーンズ:ランプキン郡保安官事務所の保安官
- アダムス:保安官代理
WSKテレビ関係者
- レクシー・ジョーンズ:アナの後釜として活躍しているキャスター
- ジム・プラス:番組の責任者
- リチャード・ジョーンズ:カメラマン。レクシーの夫。アナと肉体関係をもつ
- ブレニング・ダニングトン:ニュースキャスター
聖ヒラリー学園(アナ)の同窓生
- レイチェル・ホプキンス:国有林で殺害される。夫はピザ店チェーンオーナーのクライド・ダフィー
- ヘレン・ワン:母校聖ヒラリー学園の校長になっている
- ゾーイ・ハーパー:ジャックの妹。名門校出身にも関わらず、下品で乱暴
- キャサリン・A・ケリー:裕福な家庭の娘だが、太っていていじめられっ子。アンドレアという姉がいる
その他
- ジェニーン・ウィルコックス:アナとリチャードが滞在しているホテル「ダロネガ・マナー」のフロント係
- ウイリー:ジャックと旧知の間柄。国有林近くの墓地を管理している
- ビル・ウッドラフ:ダロネガの町長
感想・メモ:完全犯罪&話に耳を貸さない男の物語
エピソード6(最終話)の半ばから “新たな真実” が語られ、差別感情の根強いアメリカ社会に潜む侮蔑的なまなざし、母と子の絆の側面から一連の事件の側面が描写されます。
ドラマの結末が2段階になっている点、警察が犯人とした人物とは別の人物が真犯人なのは、最近公開されたハーラン・コーベン原作の「ランナウェイ」に通じるところがあります。
裕福な家庭の子女の通う名門女子高に、彼女たちの掃除婦を務める有色人種の女性の娘が通い、その後にニュースキャスターという花形の仕事に就くという格差の設定は「殺人を無罪にする方法」のアナリーズ・キーティングの苦難に通じるものを感じます。
結果として完全犯罪となったのは、社会に潜む偏見や思い込み、見下しがあってこそ。そういう皮肉な組み立てになっている点を興味深く感じました。
もうひとつ印象に残ったのは、アナの夫ジャックが人(特に女性)の話を聞かない男であること。妻のアナ、妹のゾーイ、部下のプリヤ。最も伝えたい部分はジャックの保身や主張を通そうというエゴに遮られ、ロクに耳を貸してもらえません。一家で大きな事件を乗り越え、二人目の赤ん坊が誕生したことで、少しは変化しているとよいのですが、なんて思わせる人でした。
