スキマ時間に動画を視聴、そして投稿するのが得意な私。「それすら、していられない」多忙な状況となり、久しぶりの更新です。
ナイジェリアの映画「オロトゥーレ」(原題:Òlòturé)。ナイジェリアで制作される映画を “ノリウッド” と呼ぶそうです。そういう名称が用意されるくらい制作本数が多いみたいです。
「オロトゥーレ」のテーマは人身売買。南アフリカのドラマ「ブラッド&ウォーター」同様に、登場する人たちのリズム、土地の雰囲気、気候の暖かさのためか、サスペンスだったりテーマが深刻だったりしても、なぜかのんびりしたテンポや大らかなムードを感じます。
人身売買の闇を暴くため、売春婦として潜入取材を試みる女性記者オロトゥーレ(売春婦としての名前:エヒ)が映画の主人公。しようとしていることがかなり無謀です。普通に考えて “無傷” でいられるわけがありません。
余談ですが、あまりにも仕事が忙しかったので、このところの休憩時間は映画やドラマではなくYouTubeを観ていました。「丸山コンザレスの裏社会ジャーニー」は潜入取材の話がしばしば出てきて面白いです。潜入取材を好んで行う人はテーマに関心があり、危険を顧みないタイプで、そうは言っても状況判断力のある風変りな人という気がします。エステサロンの覆面調査とはワケが違います。
ストーリー展開はこんな感じ
売春婦として置き屋のような宿に潜入したオロトゥーレ(エヒ)。組織に潜り込むだけでは人身売買の実態に到達できません。ヨーロッパへ渡るコネクションを手にする必要があります。仲間の売春婦から人脈を辿り、仲介者アレロとつながります。そもそも売春婦ではないオロトゥーレ(エヒ)、客との性交渉の場面を巧みに回避しようとしますが…。
ナイジェリアよりもヨーロッパで売春するほうがどこかしらよいのか、自国での生活に見切りをつけて渡欧したい女性たち。総じて貧しい家の生まれのようです。彼女たちはひとり当たり1200ドルを仲介者に前払いしなければなりません。ナイジェリアの通貨単位はナイラなので1200ドルとはUSドルと思われます。現在のレートで換算すると15~16万円といったところです。置き屋に宿泊費を支払わねばならず、家族への仕送りもあるでしょうから資金の工面はラクではないでしょう。
人身売買を仕切るマフィアに15人の女性を渡す約束が14人に減り、どうしても残り1人を確保したい仲介者アレロとボスのトニー。オロトゥーレ(エヒ)をメンバーに加えます。
オロトゥーレ(エヒ)には所属している報道機関があり、男性記者エメカが手助けしています。危険な目に遭うのは潜入しているオロトゥーレのほうですが、ふたりで人身売買の取材に取り組んでいました。エメカはオロトゥーレの身に尋常でない何かが起きていることを察知し、取材を終わりにしようと告げますが、彼女は首を縦に振りません。自分が暴かねばならない巨悪があると言うのです。
オロトゥーレ(エヒ)らはバスへと乗り込みます。別れ際にそれまでの取材記録を渡されたエメカは彼女を救おうと手を尽くします。バスはベナンへ向かいます。
人身売買は “現代の奴隷制” であり、アフリカでの利益は年間1億5000万ドルに上る
映画テロップより
豊かな国の貧しい国民
ナイジェリアは1960年にイギリスから独立。公用語は英語で、映画のセリフも多くが訛った英語です。1970年までの間に内戦が起こります。その後は民主政権と軍事独裁政権が交互に立ちましたが、1999年からは比較的安定した民主政権となっています。
非常に人口の多い国でアフリカの4~5分の1の人口がナイジェリアに集まっているそうです。250以上の民族からなり、500以上の言語が話されていることから生活文化の均質性が低い印象を受けます。
宗教はイスラム教、キリスト教、土着のアニミズム信仰。映画の後半、国外へ売られていく女性たちに対する洗脳教育みたいなものが施され、そのなかにアニミズム的な儀式が含まれています。
産油国ということもあってアフリカの経済大国ナイジェリア。「なのに人身売買?」と思いますが国民の多くは貧しく、購買力が低いため国内市場は振るわないそうです。トイレのない家に住み、排せつを外で行う人々も珍しくないとのこと。
経済大国ならばお金はどこへ流れているのでしょう。行政機関や警察機構は汚職にまみれているそうです。一握りの上層部が贅沢な暮らしを謳歌しているのかもしれません。
国としては豊かなのですから、そこで暮らす人々の生活も豊かであってほしいものです。私は女性の権利に対する問題意識が高いほうではありません。しかし差異があること(男性と女性、富める者と貧しき者、権力者と無力な者など)を笠に着ての搾取、心身の虐待は見ていて気分が悪いですね。
映画はシンプルな構成です。「ナイジェリアの人身売買はこんなふうに行われるんだ」という学びになります。
続編がリリースされました(↓)