4つのタイムラインが交錯するドラマ「Bodies/ボディーズ」

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ドイツのタイムスリップドラマ「ダーク」に少し似ていて、1シーズン(8エピソード)にコンパクトにまとまったイギリスのドラマ「Bodies/ボディーズ」。かなり面白かったです。

1890年、1941年、2023年、2053年という4つの時間軸にそれぞれの展開があり、2053年のテクノロジーを使うことで、異なる時代にまたがるループを断ち切ることに挑戦する物語です。

どこが「ダーク」に似ているかというと、別のタイムラインを書き換えることで、さらに別のタイムラインに起きることを変えようと試みる点。「Bodies/ボディーズ」において時代が交錯し、タイムスリップが起きる地点はロンドンの “ホワイトチャペル(実在)” にある “ロングハーベスト通り(恐らく架空の地名)” です。

事件現場の“ホワイトチャペル”はどんなところ?

“ホワイトチャペル” はロンドンの “イースト・エンド” にあり、移民の流入が多く貧しいエリア。

ひとつめのタイムラインである1890年頃は、アイルランド人や東欧系ユダヤ人が多く住んでいました。売春婦と売春宿も多数存在していたといいます。

1888~1901年に “ホワイトチャペル殺人事件” が発生しています。売春婦を含む11件の殺人があり、犯人のひとりがあの有名な “切り裂きジャック” 。“エレファント・マン” として知られるジョゼフ・メリックもおおよそ同時期にホワイトチャペル・ロードの見世物小屋で興行を行っていたそうです。

ふたつめのタイムラインである1941年頃は、ナチス・ドイツによる空襲をしばしば受けていました。

現在はバングラディシュ系の人たちが多く住み、再開発的な事業も行われているようです。

4つのタイムラインと3つの死体

大きく分けると1890年、1941年、2023年の3つのタイムライン、そして2053年となります。ふたつのグループを整理すると以下のようです。

【過去の共通事項】①過去の3人の警察官(1890年ヒリングヘッド、1941年ホワイトマン、2023年ハサン)はそれぞれ、ホワイトチャペルのロングハーベスト通りで全裸男性の死体を発見する。死体の手首には謎のマークがあり、額に傷があり、左目を撃たれている。死体から弾丸は発見されない。発見前後に爆発がある。3人の警察官がある意味でマイノリティ(←私がそう感じるだけで重要ではないかも。ちなみにゲイ・ユダヤ人・アフリカ系イギリス人)。

【未来では】①2053年のメイプルウッド刑事もホワイトチャペルのロングハーベスト通りで全裸の男性を発見する。手首には謎のマークがあり、額に傷があり、左目を撃たれている。しかし彼はまだ死んでいない(後に死亡する)。弾丸は発見されない。発見前に爆発がある。メイプルウッドがマイノリティかどうかはわからないが、演じている女優シラ・ハースはイスラエル生まれのユダヤ人(←わざわざこの人をもってきたのには理由があるのでは)。

4つの時代の4人の警察官たち

それぞれの時代において “全裸男性殺害事件” の真相を追います。それぞれが不条理に翻弄されます。そして最終的に自分なりの決断をします。

1890年 アルフレッド・ヒリングヘッド警部補(隠れゲイ) ホワイトチャペルで街灯が次々に爆発 → ロングハーベスト通りでホイッスルが鳴り「突然、全裸の死体が現れた」という報告を受ける → 現場ではヘンリー・アッシュ(スター紙の記者)が死体を撮影 → 写真から警察関係者の男色が判明したため捜査を終了するよう上から指示される

<特記事項>ヒリングヘッドは事件の鍵を握る人物が写り込んでいたヘンリー撮影の写真を保管/ヒリングヘッドには妻シャーロットと娘ポリーがいるがヘンリーに出会ってゲイの世界に目覚める/上から捜査終了を指示されているので秘密裏にヘンリーと協力して捜査を進める

1941年 チャールズ・ホワイトマン巡査部長(第二次世界大戦中のユダヤ人) ギャンブルによる借金返済のため謎の組織のスパイをしている → 組織からの指示によりロングハーベスト通りから死体を車で運ぶ → ホワイトマンをスパイと睨むファレル警部補(ユダヤ人ヘイトの人)が追跡 → ドイツ軍による空襲でファレルは死亡 → ホワイトマンは出所して間もないカズンズを死体運びの犯人に仕立てようとする

<特記事項>ホワイトマンがトランクに死体を入れるところを目撃した少女エスター(イディッシュ語を話すのでユダヤ人)が現れる/謎の組織にエスターを始末するよう指示されるが殺すことができずホワイトチャペルの自宅に彼女を匿う/本名はカール・ワイスマン/演じているジェイコブ・フォーチュン・ロイド自身もユダヤ人

2023年 シャハラ・ハサン巡査部長(アフリカ系イギリス人) デモの現場で街灯が爆発 → 銃をもっていたアジア系青年サイヤド・タヒールを追いかける → ロングハーベスト通りで死体を発見 → サイヤドと同じ施設で育ち、3年前にモーリー夫妻の養子となったエライアス・マニックス(15歳)を追う

<特記事項>事件の後に発生する2023年7月14日の大爆発でハサンは息子ジャワドを亡くす/バーバー警部がハサンの上司/「南アジア系が混じっているのかも?」と思わせる要素はあるもののハサンとその家族を演じている人たちのプロフィールがアフリカ系なのでドラマ内でも恐らくアフリカ系設定/身なりから判断してイスラム教徒

2053年 アイリス・メイプルウッド巡査(のちに警部補) 乗っていた車が故障し街灯が爆発 → 危険区域を理由に閉鎖されているロングハーベスト通りで異常を検知 → 同通りで全裸の男性を発見 → “エグゼクティブ” マターとされメイプルウッドは捜査から外される

<特記事項>メイプルウッドは背骨に沿って “SPINE” という器具を付けている/2023年7月14日の大爆発で両親を亡くした/その後のイギリスは “エグゼクティブ(KYAL)” と呼ばれる組織が統治/猫を飼っているローナという隣人がいる/メイプルウッドの服に付着した全裸男性の血液を車椅子生活の兄弟アルビーが鑑定/アルビーは反 “エグゼクティブ” 派(全イギリスとして一枚岩なわけではない)

全裸で横たわる男性は誰?

捜査から外されたにも関わらずDNA鑑定を行い、全裸で倒れていた男性が “2022年生まれのガブリエル・デフォー” であることを知るメイプルウッド巡査。2053年のことです。彼女が指示を守らず勝手に捜査したことを “エグゼクティブ(KYAL)” 創始者のマニックス司令官は知っていました。

ガブリエル・デフォーは、①量子重力理論を専門とする大学教授であり、②“チャペル・ペララス(テロ組織)” と繋がっている、彼らに命を狙われているため “チャペル・ペララス” を探し出すよう、マニックス司令官自らメイプルウッドに指示します。

事情聴取のために大学を訪れるメイプルウッド。するとそこに額を怪我したガブリエル・デフォー本人が現れます。病院で昏睡状態のデフォーの手首には謎のマークがありました。しかし、もうひとりのデフォーにはありません。すなわち2053年のある時点において、デフォーは2人存在していたことになります。そして昏睡状態のデフォーは死にます。

デフォーは「特異点の生成は可能であり、粒子は分裂して過去と未来にひとつずつ存在することができる。 “重ね合わせ状態” は崩壊しない(=過去や未来へのタイムトラベルは可能)」という理論を展開していたものの、学術界や社会に受け入れられていませんでした。

出来事の鍵を握る人物の系譜

大きな時間軸のなかで鍵を握る人物は何人かいますが、受け止め方によってはネタバレを含むので気になる方は飛ばしてください。

①ジュリアン・ハーカー卿(1890年当時)

ロンドンで一番の富豪。ビルマで戦死したはずが帰還。使用人の証言によればジュリアン・ハーカー卿を名乗る別人だった。しかし交霊会を主宰する霊媒体質の母親(レディ・アガサ・ハーカー)は彼を息子として受け入れる。ヒリングヘッド警部補の娘ポリーと結婚(おっさんなので歳の差婚)。1941年に99歳で死去。病気や老衰ではなく殺害によるもの。

②ポリー・ザ・レディ(1941年当時)

ジュリアン・ハーカー卿の妻。ヒリングヘッド警部補の娘。ホワイトマンに電話で指示を出していた謎の人物が彼女であり、指示に従わないホワイトマンに代わってエスターを殺害。ハーカー銀行の支配人でもある。ジュリアン・ハーカー卿との間に息子がいる。

③エライアス・マニックス(2023年当時)

4歳から養護施設で育ち、12歳でモーリー夫妻の養子となる。生母はサラ、父親はダニー。指紋が1941年に死んだジュリアン・ハーカー卿と一致。モーリー家の雇っている弁護士はジュリアン・ハーカー卿が設立した “ハーカー法律事務所” に所属。養父アンドリューは警察を退職した後、ハーカー・ハウスで警備員を務めていた。エライアスとハサン巡査部長の関係性が大きな事件に発展する。

④マニックス司令官(2053年当時)

“エグゼクティブ(KYAL)” を創始した司令官。エライアスの未来の姿。

⑤ある人物(2053年当時)

“チャペル・ペララス” のトップ。アイリス・メイプルウッドを拘束して真相を語る。

物語は完結したのか?

事の次第をまとめるとこんな感じです。タイムスリップ(ドラマではタイムトラベルと言っている)によりマニックス司令官はループの起点となる1890年へ。ジュリアン・ハーカー卿に成りすまし、その時代に基盤を作ることで2023年のエライアスを誘導。そして2053年には誰もが “愛されている” 社会を作り権力を握っています。

タイムスリップに必要なテクノロジーは2050年に発見され、それがスロートと呼ばれる装置に結実。それを使ってマニックスは1890年へ。“チャペル・ペララス(反体制グループ)” はループを破壊することで一連の過去を翻す術を模索、しかし上手くいかなかったと言っています。

「マニックスはスロートを利用するため(この場所に)戻ってくる。僕の死体が証拠だ」(デフォーの言葉)。マニックス司令官がスロートを再度利用することがないのであればデフォーを殺す必要がないため、いろんな時代において彼が死体として発見されることはない、という理屈から導き出されているのでしょう。エピソード5くらいから視聴していて難解な部分が出てきます。

マニックス司令官は再度1980年へタイムスリップして “彼女(ポリー)” を見つけ、家族に囲まれた愛の世界を体験し直そうとします(あわよくば前回のさらに上を行く展開で)。

デフォーは「前提条件に左右されるため自由意思など幻想。自分の意思で変えられるものはない」と言い、マニックス司令官もエライアスの養父アンドリューも同じようなことを言っていました。

だとすれば何かを変えようとすることも予め決まっているのかもしれません。前提を変えることが決まっていれば、すべての流れが変わるのでしょうか。そういう問いは脇に置くとして…。

アイリス・メイプルウッドは “チャペル・ペララス” に味方するのか否か。彼女の選択が世界のシナリオを決めることになっています(自由意思はない、ということでしたが)。それは観てのお楽しみ。

自分は愛されているのか?それを知りたい皆の物語

満たされて幸福ならば、他者との間に争いや戦いは生まれません。自分の幸せ、自分が愛されていることを誰かに証明してもらう必要もありません。

エライアス・マニックスは愛されなかった幼少期の傷を癒し、自分が愛されているという未知の世界を知りたくて起爆装置にスイッチを入れました。その仕組みはエライアスという個人を超えて世界全体が抱える「愛されなかった」トラウマを表現しているかのようです。また再度1890年に戻ろうと考えるマニックス司令官は過去への愛着や執着によって支配され、バランスを失っているように見えました

誰もがもっている同様の筋書きが変わらない限り、世界や時代は変わらない。そんなメッセージを感じた作品。

気になっていることや周辺情報

  • 養父アンドリューは「起きることは変えられない。結果的にエライアスは後悔し、苦痛を味わう。父として息子が後悔することをさせる。動機として出発的には痛みが必要。そのために孤独な子ども時代を経験した」といった趣旨のことを言っていました。やけにいろいろ知っているふうだったのですが「アンドリューとは何者だったの?」という点が回収されていません。知らない間に消えていました。大爆発のときに死んだのでしょうか。影のドンだった感じがします。
  • シー・スペンサーによる『めまい』シリーズの「Bodies」を原作としています。あるソースによればNetflixの「Bodies」は全19話で構成されるとのこと。シーズン1は8エピソードだったので「19話 ⇒ 8エピソード」にまとめ直したということでしょうか。リミテッドシリーズですし、次の話に発展していく要素をあまり感じなかったのですが、最終シーンのビルディングに “KYAL” と浮かび上がったのは何かの伏線?マニックス司令官(KYAL創始者)に「1890年へタイムスリップしよう」という動機がなくなった場合、2023年の “KYAL” は誰が何の目的で創始した組織なのでしょう?1980年がループの出発点でなくなったとしたら、新しいステージへの出発点はどこ(時期と場所)になるのでしょう?不思議に思いませんか?
  • シー・スペンサーへの弔意がエピソード1の冒頭に示されます。2021年、60歳で心不全によって亡くなっています。
  • このドラマの終盤を観ているとカルマの側面が伝わってきます。カルマがなければ “袖触れ合う” ことが次の出来事へと発展しないんですよ。

[ロケ地]イギリス(キングストン・アポン・ハル ⇒ ハーカーの家など、リーズ大学 ⇒ 2053年のシーンの一部、ウエスト・ヨークシャー、サウス・ヨークシャー)

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