このドキュメンタリーはアホみたいなタイトルですが、内容はかなり興味深いです。猫の虐待動画を配信している謎の人物を、素人ネット探偵たちが追うところからスタートします。
「猫イジメは断固NO!」の「ゾッとする」要素をリストアップします。
- 猫虐待死連続事件、のちに猟奇殺人事件の犯人ルカ・マグノッタのナルシストっぷりが相当気持ち悪い。芸能界での活躍を目指していたようだが、オーディションの動画などを見ると、自分に酔いしれ過ぎていて鳥肌が立つ。キモさ∞
- いろんな方法で猫を殺す、ゲイの出会いサイトで出会った男性を切り刻み、口では言えないようなことをいろいろする。異常度∞
- 自作自演でファンサイトをたくさん立ち上げたり、ファンを装った絶賛コメントを投稿したり、他人のいろんな写真の首から上をコラージュしてアップロードし世界を股にかけて活躍しているように装ったり。イタさ∞
- 彼(ルカ)を追うネット探偵の個人情報をもっていることを示唆する動画をUPする(勤務先をホームビデオで撮影している)。ストーカーとして一流で薄気味悪さ∞
- ネット探偵はインターネットから得られる情報相互を紐づけて、転々としたルカの住まいや犯行が行われた街などを特定。ネット社会の網から逃れるのは相当難しい。遠くの国であろうと、自宅のPCから情報の国境を軽々と越える。捜査初期には、猫虐待の犯人と素人探偵たちに疑われたアフリカ在住の男性が自殺してしまう。ネット上のなりすましやデマは日常茶飯事。明日は我が身度∞
- カナダ(トロント、モントリオール)で行われた犯行であるが、ロシア、イギリス、フランス、ドイツなどへ犯人(ルカ)は移動している。バイセクシャルで、カナダではセックスワーカーをしていたようだ。儲かる仕事なのかもしれないが、暇でお金のある感じが不思議度∞
- 要所要所でルカ自身が犯人(自分)に関する情報を提供し、他者の関心を引きたい、社会の注目を浴びたい気持ちがあからさま。病み度∞
ネット探偵たちは、猫を虐待死させる動画をUPしていた時期からルカを追っており、彼に関する情報を蓄積していました。彼らはルカの行為の対象が、やがて猫から人間に変わるだろうと予想していました。まさにその通りになります。捨てアカウントから、ルカの猟奇殺人の内容が分かる動画が送られてきたのです。ネット探偵たちはモントリオール警察に情報提供して協力を申し出ますが、ただのネットオタクと見なされ、当初は信用されませんでした。
モデル崩れのキモ美形はカナダから姿を消し、国際指名手配となります。かつて自作自演の投稿で、ルカはレオナルド・ディカプリオ主演の「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」が好きなことを示唆していました。彼は映画鑑賞が趣味で、ほかにも好きな映画をなぞるようなヒントを残しています。そのことから、ルカは意図的に手がかりを残すことで追手との追いかけっこを楽しんでいると、ネット探偵たちは感じていました。
ルカの母親は年老いた魔女風で、元・不思議ちゃんなのか、息子は悪くない、息子を操っていた人物を捜査すべきと主張します。俳優とモデルを目指して16歳でトロントに行ったものの夢叶わず、セックスワーカーをしていたルカには異常な行為を強いるパトロン(彼の飼い主でマニーという名)がいたと言うのです。
最終的に、猫虐待死事件と猟奇殺人事件の犯人ルカはドイツの首都ベルリンで劇的に逮捕されるのですが、彼の起こした事件の内容が常軌を逸し過ぎていて、どの航空会社も彼の移送を引き受けませんでした。両手足を拘束された状態で、カナダの軍用機で帰国したそうです。スターになりたかった男が自分を主役とした動画を制作。それをネット探偵と社会が追跡することで、彼のドラマの完成度は高まりました。興味をもったら「猫イジメは断固NO!」をご覧ください。3話完結なのでコンパクトな視聴が可能です。
「カナディアン・サイコ」と呼ばれたルカ・マグノッタは終身刑で服役していますが、獄中で囚人仲間と結婚し、映画を見たり、スポーツや語学の勉強を楽しんだりして過ごしているそうです。税金でムショ暮らしを楽しんでいると思うと、やはりゾッとします。屁の河童度∞です。
カナダのバンクーバーへ旅行したとき、退廃的な街と感じました。このドキュメンタリーはバンクーバーが舞台ではありませんが、そのデカダンなムードが私のなかでは繋がっています。