意外に面白かったインドの諜報サスペンスドラマ「ファミリー・マン」

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監督は RAJ & DK で、偽札づくりのドラマ「フェイク」と同じ人たち。“実際のニュースに着想を得た物語” だそうで、インドであった複数の事件やそれに関わる組織(ISやスリーパーセル)を部分的に取り入れています。スリーパーセルとは一般市民を装って潜伏している工作員を指します。原題は “THE FAMILY MAN” とそのままです。

“アーティスト”がハマった偽札ビジネス-インドのドラマ「フェイク」
貧しい無名の “アーティスト” サニーと幼馴染のフィロズが、祖父の新聞社の借金を返すために偽札づくりを始めるところからスタートするコメディタッチの犯罪ものです。

「フェイク」がなかなか面白かったので「ファミリー・マン」も観てみました。なお「ファミリー・マン」のほうが先に製作された作品です。そもそもの期待なきところに失望はないこともあり「意外に面白かった」というのが率直な感想。飽きのこない構成になっています。

TASC(脅威解析・監視班)と主人公スリカント

主人公スリカント・ティワリはインド国立捜査局(NIA)の情報チームTASC(脅威解析・監視班)に所属するシニア分析官でムンバイで暮らしています。シリアのIS、パキスタン、アフガニスタン等の動きを注視し、テロを未然に防ぐことが仕事。監視対象はSNSやチャットがメインのはずですが、現場の仕事もしばしば担当します。なお安月給です。インドの新聞に情報機関で働く人たちの報酬の低さが取り上げられていました。

諜報ものとして観た場合、アメリカのCIA、ロシアのSVR、イスラエルのモサド、イギリスのMI6などに比較して脇が甘くて仕事が杜撰な印象です。組織力は脆弱でメンバーに層の厚さがありません。でもTASCはフォースワンや調査分析局REW、対テロ対策班ATSと連携して銃撃戦や潜入捜査なども行います。

基本がモニターに向かうデスクワークなので、TASCは現場でへなちょこなのかもしれません(とはいえ新入り女性部下であるゾヤはたくましくなっていくし、へなちょこっぽいのはシーズン1のはじめだけです)。

タイトルに「ファミリー・マン」とあるように “家族” もテーマのひとつ。仕事の重要な局面で妻から電話が入り、その対応をしている間に容疑者に逃げられるとか、家族の大切なイベントの最中に緊急の呼び出しが入って現場に向かうとか、スリカントの職務は家族によい影響をもたらしていないし、家庭が仕事への集中を妨げています。

具体的な仕事内容は家族にも明かしておらず、オフィスで書類整理をしていることになっています。肝心のときに緊急の呼び出しで消えていくスリカント。妻のスチトラとは口論になることが多く、甘い父親であるため生意気盛りの娘ドリティや息子アターヴからは軽んじられています。

シーズン1~2の内容

現時点でシーズン1と2があります。諜報ものサスペンスということで、利害関係のある他国が物語に絡みます。情報/諜報機関としてのレベルが高いとは思えないインドのTASCですが、対するテロ組織の計画が用意周到であるため先の展開が気になります。

最近視聴したインドのドラマ「スクープ」にもそういうところがあったのですが、2008年に実際にあったムンバイ同時多発テロ事件の影響が感じられます。発生から10年以上経っても、インドの人たちにとって2008年の事件が依然として大きなトピックであることが窺えます。

[シーズン1]

シリアのISと思われる3人組が船でインドに向かう。彼らをフォースワンが捕らえるが、移送中に逃走。街中での銃撃戦となり、うちひとりは射殺され、アシフとムーサは負傷して病院に収容される。一方パキスタン軍部はCIAの懸賞金がかかっているシリアのファイザン・アーメッドをかくまい、アンサリ将軍の指示のもと軍事情報機関ISIのサミール少佐が “ズルフィカール作戦” の指揮を執っていた。その後、スリカントは捜査上のミスにより懲罰人事を兼ねてカシミール地方のスリナガルへ赴任。カシミールはインド・パキスタン分離独立以来、両国の係争地となっている。スリカントは “ズルフィカール作戦” の全容に迫ろうと、危険を冒してパキスタン入りする。

[シーズン2]

スリカントは民間IT企業に転職している。スリランカからタミル人の分離独立を目指す反政府組織のキーマンたち(バースカラン、ディーパン、スブ)による亡命政府はインドの支援を受けることを目論む。インド首相はスリランカとの関係を重視し、チェンナイに滞在していた亡命政府の外務大臣スブを拘束しようとする。TASCも対応に追われる。シーズン1に登場したサミール、サジードはロンドンにいて、亡命政府の首相バースカランと手を結ぶ。妻スチの意向もあってスリカントはTASCに復帰。シーズン1を回収しつつ、スリランカ案件に対処するシーズン2。スリランカの反政府組織は、実在していたタミル・イーラム解放のトラ (LTTE)がモデルでは。

感想-インドの諜報ものとして面白い

主人公スリカントは有能だが間抜け

スリカントには独特の勘のよさがあり、ここぞというときの腹の括り方もなかなかのものなのですが、如何せん、シーズン1の最後が致命的なレベルで間抜け。シーズン2でもやらかします。「有能な彼なら、あんなミスはしないだろう」というようなことも生じますが、トータルでは面白いドラマです。

このドラマシリーズにはコメディ要素もあり「ひょっとして、ここは笑うところなのかな」という微妙なシーンが時折あります。

インド社会に精通しているともっと深く楽しめるのかも

インドは多民族国家であり、公用語はヒンディー語と英語、州公用語は18言語あります。そういった言語や民族文化の違いがドラマ内の姻族関係や地域差に影響していてインド社会の複雑さを垣間見ます。

日本で育った人が日本の映画やドラマを観て大阪弁、名古屋弁、東北弁などの違いから地域の特性を推し量ることができるように、インドの人はこのドラマの言語から、もっといろんなことを読み取れるのだろうと思います。インドは多民族からなるので、日本より地域差、民族間の相違がずっと大きいはず。演じる俳優たちも何語を話せるかで出演作品や主戦場が決まる面があるみたいです。

インドを含む周辺国から見た世界観が新鮮

西洋国制作の諜報ものはCIAやMI6、モサドやSVRなどの有名どころを中心としたストーリーが目立ち、シリアのISやパキスタンのイスラム組織も頻出します。しかし本作シーズン2のようにスリランカの反政府組織が登場するドラマは珍しく、インドならではのストーリー設定と思います。

作品の視聴数が多くなるにつれ、独自の視点やコンテンツ、テイストがないと面白味を感じなくなっていきます。このドラマはインドから見た世界がそれなりにわかるので、なかなかの好作品。

イスラムの教えに則り、異教徒に大ダメージを与えようとしたシーズン1のテロリストの残党が、シーズン2で異教徒のタミル人亡命政府と手を組む点がはじめは謎でした。スリランカ政府と対立するタミル人亡命政府はインド政府にも恨みをもつようになり、同じくインドに復讐したいイスラム勢(パキスタンISIのサミール、テロリストのサジードら)と協力することで両国首脳に大打撃を与える大がかりな計画に辿り着きます。インドのバスー首相による政治的駆け引きも一枚噛みます。

家族パートもそれなりに重要になってくる

「ファミリー・マン」というタイトルを鑑みるに諜報パートのみならず、家族パートも重要な位置づけにあるのだと思います。箸休め的に家族ネタも楽しめますが、私にとってはあまり重要ではありませんでした。

ただしシーズン2の後半ではスリカントの家族がストーリーに大きく絡んできます。そして大きな見どころを作ります。

そしてドラマはシーズン3に続く?

シーズン2でスリランカ反政府組織の戦士ラジ役だったサマンサ・アッキネニ(サマンサ・ルース・プラブ)は、すべてのアクションシーンを自分で演じたそうです。かなり切れ味のよい動きを見せていて、すごいと思いました。

シーズン3も製作予定があるそうです。次は中国が関わってくると思われます。Amazonプライムビデオの作品は面白くても続編がキャンセルになることが多い気がします。シーズン3が実現しても私の好きなミリンドが出てこないのは残念ですが、リリースを待ちたいと思います。

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