“インド・サラセン様式”の建物や色遣いに魅了されるドラマ「ベロニーにまつわるウワサ話」

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「ベロニーにまつわるウワサ話」(原題 “Vadhandhi: The Fable of Velonie” )。このサスペンスドラマには独特のリズムやテンポがあります。そして事件被害者を知る者たちの主観を糸口に謎が少しずつ紐解かれていく手法が面白い作品です。

美人女子大生のベロニーと母はキリスト教徒で、おとぎの国のような教会へ通っています。インドは人口の8割をヒンドゥ教徒が占めています。母娘を人口の2%程度に過ぎない “キリスト教徒” とした点に興味深いものを感じます。

そしてベロニーが母と暮らすロッジの建築様式、内装、インテリアがとってもかわいくて素敵であることに魅了されます。

仮に物語がつまらなかったとしても、映像をずっと観ていたいので最後まで視聴する類のドラマ。建築物に限らず、風景や景観の構図や色も非常に美しいものになっています。

ドラマの製作にあたったプシュカル&ガーヤトリは、インドのチェンナイ出身で夫婦のようです。

物語はこんなふうに始まる

まずはドラマ導入部分の紹介です。

物語の展開はアメリカのドラマ「13の理由」と少し似ているところがあります。同ドラマでは自殺した女子高生ハンナを巡って、彼女が残した録音テープ、そこに表現されている関わった同級生や友人たちの視点から “彼女の真実” が明らかにされていきます。

「ベロニーにまつわるウワサ話」では美しい女子大生ベロニーが何者かに殺され、関わりのあった人たちがそれぞれの視点から証言することで、ベロニーの “いくつもの顔” が浮かび上がります。

導入部分のあらすじ

●映画の撮影現場(カンニヤークマリ)で女性の遺体が発見されます。当初は出演予定の人気女優マムタと報道されます。しかし彼女ではなかったことが判明。

●美しい女子大生ベロニーの母が切り盛りする “エンジェル・ロッジ”(エラニエルにある) には宿泊客のほか、ベロニーに会いたいファンの男性たちもやってきます。しかし彼女には母親の決めた婚約者がいます。母とベロニーはよく口論をしています。父親はベロニーが6歳のときに亡くなっています。

●身元不明の遺体をもとに生前の似顔絵を描きます。そして遺体がベロニーであることが判明。マドゥライ裁判所が担当することになり、捜査官のビベックとラーマルらが捜査に当たります。

●ベロニーがあまりに美しかったので、警官を含め男たちは「美人だ」「男が放っておかない」「彼女とヤリたい男は多かっただろう」と彼女を “品定め” するような表現を多く発します。

●捜査官のビベックも家庭では妻に怒鳴ってばかりの “寄り添わない亭主” であり、力で妻を従わせようとして疎んじられます。

●殺されたベロニーは、関わった人それぞれが語るような「我儘」「男を翻弄」「放縦で」「父性に飢えた」18歳だったのでしょうか。ひとり歩きするベロニー像は事件が解明されることで、より的確な人物像へと収束するのでしょうか。

南インドの建築や景観が魅力

舞台はインドのタミル・ナードゥ州。チェンナイは州都に当たります。チェンマイとチェンライはタイ。チェンナイはインド。紛らわしいです。

ドラマの舞台はチェンナイよりもずっと南のほうで、インドのなかでも南端に属します。ざっと調べた程度ではロケ地がどこなのかが分かりません。南インドで撮影したかどうかもさだかではありません。キリスト教徒は人口の2~3%であるにも関わらず、Googleマップを見ると “Church” の数がいかに多いかがわかります。写真検索をするのは好きなので時間のあるときに、もう少し調べてみようと思います。

私は建築に詳しくありません。ベロニーと母親が暮らすロッジは、ドラマのなかで宿泊客の作家が「インド・サラセン様式で見事だ」と言っているので “インド・サラセン様式” なのだと思います。

モロッコで泊まったリアドにも構造が似ていますし、色の遣い方や中庭に大木があるところは新疆ウイグル地区の民家に近い面があります。モロッコもウイグルもイスラムのテイストが強い文化です。

“インド・サラセン様式” について調べてみました。あまりクリアにならなかったのですが、簡単にまとめておきます。

“インド・サラセン様式” とは

19世紀後半にインドの英国建築家によって、特に公共および政府の建物で使用されたリバイバル建築様式。裕福なインド人の大邸宅にもみられる。インド・イスラーム建築、ムガル建築、ヒンズー教寺院建築にみられる様式的で装飾的な要素を採用。ヨーロッパの様式要素としばしば組み合わされる。

典型的な構成要素

  • ドームやミナレット(塔)
  • 張り出した軒。しばしば目立つブラケットで支えられている
  • 尖頭アーチ、ホタテ貝型のアーチ
  • 馬蹄形のアーチ ⇒ スペインのイスラム教文化や北アフリカ文化の特徴。ゆえにモロッコの建物と似ている面があるのだろう
  • アーチ周りの迫石の対照的な色(特に赤と白) ⇒ これもスペイン、北アフリカでみられる
  • 複雑な装飾用透かし細工 ⇒ この辺りはインドの隣の国ネパールでも見かける
  • マシュラビヤまたはジャロカスタイルのスクリーン付き窓 ⇒ カシュガルの建物との近似性がある

そもそも “サラセン” とは

ギリシア・ローマ時代にシリアやアラビア地方のアラブ人を “サラケノイ” や “サラケニ” と呼んだことに端を発する。したがって “インド・サラセン様式” が中東の文化を汲んでいても不思議ではない。7世紀当時、キリスト教徒のヨーロッパ人はイスラム教徒の軍勢を “サラセン帝国” と呼んでおり、“サラセン” とは “イスラム勢力の文化” を包括的に指す表現と考えられる。

母娘の住むロッジ、捜査官ビベックの家などは濃い色の壁や天井の組み合わせで、こんなところでひとときを過ごすことができたら、どんなに楽しかろうと思います。

Googleマップで見た各種教会も、それぞれが起伏に富んでおり(のっぺりとした建物は少ない)色鮮やかです。ひとつひとつ写真を閲覧しているとワクワクして、仕事がちっとも捗りません。

かつて私が塗った自宅の壁と天井も、色遣いのみですが “インド・サラセン様式” っぽいですよ。映画に出てくるものに比較すると、かなり淡い色ですが。

もうひとつのメッセージ

インドの作品ということもあり、男性による女性蔑視、性差別を表現しており、主観ばかりのウワサ話が他者や死者の品位を貶めること、また何か事件が起きた際、実行犯の男性よりも被害者の女性が責められることなどの不条理を伝え、問題提起しようとしているように感じました。

物語がスタートした時点では「こんな夫との暮らしでは地獄だろう」と感じたビベック捜査官の家庭でのあり方も、事件捜査のプロセスで変化していきます。

サスペンスドラマとして、社会的なテーマを扱った作品として面白いと思います。私は“インド・サラセン様式” の建築と濃い緑の景観にやられました。

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