まさかシーズン2が製作されていたとは思ってもみませんでした。シリーズとしてのタイトルは “Vadhandhi” (ウワサ)のようです。あの美しい色々の世界にまた触れることができます。

シーズン1は “The Fable of Velonie” で直訳すると「ベロニーの寓話」。
シーズン2は “The Mystery of Mani” で直訳すると「マニの謎」であるはずですが「マニにまつわるウワサ話」となっています。シリーズの邦題については「ウワサ話」というワードで大きく括るのがよいと思ったみたいですね。舞台は引き続き、インドのタミル・ナードゥ州。
物語はこんなふうに始まる
チェナンイとマドゥライ間の8車線道路建設について中央政府と地域(州政府)との間で軋轢があり、マーン・シン大臣主催による起工式において思いもしなかった事態となります。土を掘って大臣が礎石を置くはずが、土中から白骨化した遺体が見つかったのです。
「呪われた計画であることをアピールするために州政府が仕組んだことだ」と中央政府は州政府を非難しました。
その頃、ムーサ・ラーザ警部補は左遷され、妊娠中の妻を置いて単身赴任でパダンバトゥール警察署に勤務していました。アラブ系の名をもつ彼はムスリムです。部下はモハン・クマール巡査長、ポルチェルビ巡査、マーリ巡査ら。
新しい上司であるラティカ・ネア警視によって、ムーサ・ラーザ警部補は起工式で発見された白骨遺体の身元特定に関する捜査主任を命じられます。友人のカンニヤークマリ署の警部補ラーマルを呼び寄せ、協力して捜査に取り組みます。
白骨遺体には片腕がなく、一部に排泄物が付着。後に片腕の骨も発見されますが別人のものでした。DNA鑑定等により、既に殺人の罪で収監されている男モダッカターン・マニとの関係が確定的になります。しかしムーサ・ラーザ警部補は白骨化した2遺体の殺人者は、本当にマニなのかを疑います。
登場人物
[警察の関係者]
ムーサ・ラーザ:左遷によってパダンバトゥール警察署にやってきたムスリムの警部補。当初は妊娠中の妻スマヤを置いての単身赴任だった
モハン・クマル:パダンバトゥール警察署の巡査長。「長」と付いているが、賢くないし頼りない(田舎の警察官だから?)
ポルチェルビ:パダンバトゥール警察署の巡査
マーリ:パダンバトゥール警察署の巡査
ラティカ・ナイール:ムーサの新しい上司で警視。夫スクマランは弁護士で気難しい
ラーマル:シーズン1から引き続き登場。ムーサの友人で警部補。シーズン1では、カンニヤークマリ警察署でビベックと捜査にあたっていた
ダナパル:法医学専門家の医師
セルバム:定年間近の警部。モダッカターン・マニが関与したとされる殺人事件の捜査担当
ローレンス:マドゥライ中央刑務所長
グナ・シェカール:南部管区の警視監
リンガム:ディルネルヴェーリ警察署の捜査官
デビッド・ムトゥ・ルーダ:エピソード6から捜査に加わる警部補
タマラ/ジェビン/デシングほか:エピソード6から捜査に加わる巡査たち
プガジェンティ:トリチー署の警部
カルナカラン:トリチー署でムーサ・ラーザ警部補に対応する警官
[白骨遺体/殺害事件の周辺人物]
モダッカターン・マニ:ジャリカットゥ(牛追い競技)のヒーロー。その後、殺人罪で逮捕される。妹はベンバ。母はパンジャヴァルナム
ニラバーティ:マニを誘惑する若い女性。兄はニーラカンダン
プラバー:マニの友人で恋に悩んでいる
スンダレサン:マニ、プラバーの友人。1年前からチェンナイで働いている
ティープ:マニ、プラバーの友人
サンギータ:プラバーの恋の相手
サーム・ベンジャミン:マニ、プラバーの友人
プールニ:ベンバの通うラサイヤプラム女子高校の友だち
カンナッパ:白骨遺体が出た土地の管理人
デバキ:看護師。ディルネルヴェーリ署管内で遺体となって発見される
デビ:教師。被害者のひとり
ゴヌ・ラル:“ファーマニュー” の工場で働いている
プニヤムルティ:ゴヌの上司
[その他]
ペランブ・プラバカール:ジャーナリスト
ディリップ:警察署にお茶のデリバリーにやってくる少年
セトゥラマン:シーズン1から引き続き登場。“フォース・コラム タミル・デイリー” の編集長
マテイ:“フォース・コラム タミル・デイリー” の記者
多様性に対して不寛容な社会を犯罪を通して描いている
意外に複雑な経緯を辿る物語
…ゆえに8エピソードあっても飽きませんでした。以下のようにストーリーが展開していきます。
- 道路建設予定地から片腕のない白骨遺体が発見される
- 道路建設絡みの事件かと思えばそうではなく、のちに発見された片腕の骨は別人のもの
- イベントの勝利者に渡される記念ブレスレットをしていたので遺体は男性かと思いきや、ボディも片腕も女性であることが判明
- DNAを調べることにより、マニと被害者の片方に血縁関係が認められた
- 「遺体なき殺人で起訴されていたマニがやっぱり犯人だった」ということで一件落着しそうになるが、ムーサ・ラーザ警部補は疑問をもつ(彼が担当したのは白骨遺体の身元の特定。マニを殺人犯として逮捕したのはセルバム捜査官。つながりがありそうにみえるふたつの捜査であるが、切り離して精査すべきと考え始める)
- ムーサ・ラーザ警部補は「マニは2遺体の殺害犯ではない」という確信に至る。白骨遺体から被害者、マニ以外の謎の(=3人目の)DNAが発見される
- ほかの管轄で発生していた女性が被害者の未解決事件からも、謎のDNAと同じものが発見される
- 「これは広域の連続殺人事件なのでは」と物語ならびに捜査網が拡大していく
- (以下略)
不寛容に形作られた社会の生きづらさを描いている
不幸な事件が起きた背景には、マイノリティに対する不寛容な社会、既に定着した価値観や古臭い通念がもたらす暴力性がありました。
家族関係においては男性たちが発言力/権力/フィジカルパワーで優位にあり、それが女性に対する心身両面に及ぶ虐待(DV)を生んでいるのだけれど、当事者たちはそれに気づいていません。むしろ自身を「正義を行使することで、愛する者を正すことを任されている支配者(リーダー)」と思っているふしがあります。そういった “社会的な病(モラハラの残虐性)” も描いていたように感じます。
ムスリムであるムーサ・ラーザ警部補が信仰を理由に左遷され、髭を伸ばすことを権利として認められてこなかったというサイドストーリーも、社会における見えない壁のもたらす生きづらさを表現していたのではないでしょうか。
消化不良な印象を残した面もある
中途半端さを感じたのは、変態(かつ別の事件の犯人)としか思えないゴヌ・ラルとその一味の行く末を、きちんと描かなかった点。
広域の連続殺人事件を想定して警察本部長はムーサ・ラーザ警部補のチームの捜査官を増員しますが、彼らの仕事ぶりに関して重要ではないシーンがあったように感じています。それらを削ることで、ゴヌ・ラルらにいかなる裁きが下されたかの描写に時間を割くことができたのではないかと思うと残念です。
登場人物が全般に賢くないのはなぜ?
例えばプラバー、スンダレサン辺りを見ると顕著ですが、アタマの弱い人が多いというか、あれは彼らが貧困のなかにあって受けた教育が不十分であること(あるいは属するカーストにおける平均的あり方)と関係があるのでしょうか。しかしどんな生まれであっても賢い人はいて、それを感じさせるものだと思います。近親婚とか多そうではありますが。
警察においても、モハン巡査長、巡査のポルチェルビやマーリには打てば響くような理解力の高さ、感覚の鋭敏さが感じられません。田舎の警察という設定だからでしょうか。悪い人たちでないことはわかりますがボンヤリしていて、事件捜査は言うに及ばず、街の治安維持等を彼らに任せて大丈夫なのだろうかと思ってしまいました。
その他
シーズン1から引き続き登場したのはラーマル警部補と “フォース・コラム タミル・デイリー” の編集長セトゥラマン。ラーマル警部補は準主役という位置づけになるのでしょうが、シーズン1からの続投者を配役上の二番手、三番手辺りにもってくるところが面白いなと思いました。
作品の本質とは無関係なところでは、ほかのドラマや映画を視聴していても思うのですが、インドの男性って、短髪にカットしている人は別にして、毛量が尋常じゃないレベルで多くないですか?あそこまで密に生えた髪をもつ人たち、これでもかと膨らみまくることで頭でっかちに見える国民、民族は少ないように思います。ゆえにターバンを巻く文化が生まれたのかもしれません。
