シーズン3では、シーズン1からの伏線があらかた回収されます。なかなか見事な展開・顛末となっています。
[ストーリーの流れ]
卒業パーティーで、誰かが殺されたようです。時を遡り、卒業パーティーまでのエピソードが、登場人物それぞれについて展開していきます。自分にとって何が大切かを考える機会が増え、自業自得を受け入れざる得ない状況も訪れます。ラス・エンシナス高校の生徒たちの将来はいかに。
シーズン3のテーマは「選択&喪失(トレードオフ)」(個人の解釈です)。何かを得るためにあえて捨てるものもあるし、失ってしまったからこその決断もあります。資産家や貴族階級の子女も、親が逮捕される、親に勘当されるなどの危機に陥ります。プールサイド殺人の容疑者は保釈され、事の次第を知る者たちは「真犯人を告発するか」「真犯人が逃げ切れるよう守るか」の間で心痛を抱えます。
“周囲に要求すれば欲しいものは手に入る/ものごとが実現する” という疑似万能感に満たされているのが小さな子どもの特徴で、そういう時期が早々に終わる人もいれば、いつまで経っても小さな子どものままの人もいます。
ドラマ「エリート」シーズン3では、登場人物それぞれが頭打ち感に苛まれ、いかに打開するかについての選択を迫られます。自分のためだけに用意された “オリジナルな大人への階段” を一歩一歩上っていきます。満たされた子どもでいられた時代に別れを告げ、得たいものに対して自分自身が痛みと責任を負うフェーズへと移っていくのです。高校卒業が少しずつ近づき、各人が真剣な瀬戸際勝負を展開せざるを得なくなっていきます。
[シーズン3の新キャラ:有色人種の転入生2人]
マリック ⇒ セネガルからの裕福な転入生。大金持ちのイスラム教徒で、ナディアの家族に好意的に受け入れられる
イェライ ⇒ SNSを通じてカーラに精神面で助けられたことがある。転入してカーラに近づく。自身の事業で成功している大金持ち
シーズン3で、さらにもうひとりが死を遂げます。卒業パーティーでの出来事です。やはり、犯人となる人物の心の痛み(ないことにしたい「本当」)に触れてしまったことがきっかけです。
警察は、果たして真犯人を捕まえることができるのでしょうか。絆が生まれる瞬間や旅立ちもあり、ドラマとして上手く完結しているのでシーズン3で終了かと思いきや、シーズン4がありました。よって次の記事へと続きます。
このドラマが観る者を惹きつける要因の三つ目を話しましょう。それは「全体のストーリーに影響を与える、登場人物の個人的ストーリーの想定幅がそこそこ広い」ということです。
登場人物が「何を捨てて何を得ようとするか」によって、まずは個人のシナリオが変わります。登場人物たちのシナリオ同士が影響し合い、全体のストーリーが決まります。例えば「殺人の真犯人を告発する」「真犯人が逃げ切れるように協力する」というどちらも同じくらいあり得そうなとき、視聴者は次の展開がどうなるかに関心をもち、話に引き込まれます。「エリート」は「この登場人物は次にどんな選択をするのだろう」という要素が多すぎず、少なすぎず、[人数×想定される選択肢]が適切です。
シーズン3をもって何人かのレギュラーが降板します。カーラ役もそのひとり。作中でグスマンが「カーラは冷血で強い女だ」と言っていました。私は「他者の痛みを感じられる人」と感じました。「最終的には親の教え通りに金と地位を取るけれど、冷血のように見えて心優しく内面に痛みを抱えている」役どころだったのでしょう。カーラ役のエステルに限らず、どの登場人物も素晴らしい演技をすると思いました。
[シーズン3でお仕事を終えたキャスト]
エステル・エスポシト(カーラ役)
2000年マドリード生まれ。女優でモデル。16歳から故郷のコミュニティで演技の勉強をスタート。2013年と2015年にはマドリッド・シアター・アワードで主演女優賞を受賞。「エリート」の成功によりSNS上でも有名人となる。インスタグラムでは2800万人のフォローをもつ。意外なところでは水泳とハイキングが好き。2018~2019年、ポーロ役のアルヴァロ・リコと付き合っていた。その後メキシコの俳優アレハンドロ・スペイツェと、2022年2月現在はウルグアイの俳優と交際。恋多きスペイン女性を体現している。
アルヴァロ・リコ(ポーロ役)
1996年トレド生まれ。2011年から俳優としての活動をスタート。2018~2019年、カーラ役のエステル・エスポシトと交際。「エリート」では “板前” を連想させる髪、特徴的な鼻の形がマイナスポイントだった。しかしYouTubeで見たメイキング動画では驚くほどイケメンで、基本は美形と思われる。
ダンナ・パオラ(ルクレティア「通称ルー」役)
1995年メキシコシティ生まれ。歌手、女優、モデル、ソングライター。メキシコのミュージシャンの娘であり、自身も4~6歳時に歌手並びに子役デビューとキャリアが長い。歌手としても女優としても実績がある。クレジットでは最後に “AND DANNA PAOLA” と表示されて格上感あり。十二分に若いはずが、作中でスレンダーなエステル・エスポシトと並ぶと “弾けるおばちゃん” に見えるのはなぜかしら、と思っていたが、ふたりが5歳違うと知って腑に落ちた。
ホルヘ・ロペス(ヴァレリオ役)
1991年チリのサンフェリペ生まれ。アルゼンチンに住んでいたこともある。現在はスペインのマドリード在住。俳優、歌手、モデル、ダンサー。成績優秀であったが、16歳のときに俳優になるためにサンティアゴへ行った。その後、いくつかの機関で演技を学ぶ。ルー役のダンナ・パオラととても仲良しとのことだが「へー」としか言いようがない。「エリート」では不思議な “いかれぽんち” ヴァレリオを見事に演じていたと思う。
レイティ・セーヌ(マリク役)
1998年バルセロナ生まれ。俳優で歌手。情報が少ない。
セルジオ・モモ(イェライ役)
1996年テネリフェ島生まれ。俳優でダンサー。情報が少ない。