オランダが舞台の戦争サスペンス映画「ブラックブック」

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新作でないどころか、旧作と言える2006年のオランダ映画(原題 “Zwartboek” )。Amazonプライムビデオの見放題から消えることをきっかけに書いています。めくるめく展開で飽きることのない戦争サスペンス映画。多くの波乱、どんでん返しを備えています。“事実に着想を得た物語” とのことです。

第二次世界大戦中のオランダが主な舞台。ナチス・ドイツ占領下で運命に翻弄されつつ、家族を殺されてナチスへ復讐を誓ったユダヤ人女性をめぐってストーリーが展開していきます。

どのみち配信終了するのですから、Amazonより “あらすじ” を転載しておきます。

1944年、第二次世界大戦時ナチス・ドイツ占領下のオランダ。若く美しいユダヤ人歌手ラヘルは、ドイツ軍から解放されたオランダ南部へ家族とともに逃げようとするが、何者かの裏切りによって家族をナチスに殺されてしまう。復讐のために名前をエリスと変え、ブルネットの髪をブロンドに染め、レジスタンスに身を投じる。そしてナチス内部の情報を探るため、ナチス将校ムンツェに近づき、彼の愛人となることに成功するが…。 果たして真の裏切り者は誰なのか?

Amazonプライムビデオより

「ゲーム・オブ・スローンズ」のあの人が主役

将校の愛人となり、ナチスへ潜入するユダヤ人歌手ラヘルを演じるのが、カリス・ファン・ハウテン。「ゲーム・オブ・スローンズ」ではスタニス・バラシオンに仕える、ル=ロールの女祭司レディ・メリサンドルを演じていました。カリスマ的魅力をもつ魔術師、宗教家の役です。

「ゲーム・オブ・スローンズ」の撮影に参加していたのは2012~9年ですから、「ブラックブック」は彼女のずっと若い頃の作品となります。実際のところ、見た目が「ゲーム・オブ・スローンズ」時代より明らかに若いです。

「ブラックブック」でユダヤ人歌手を演じているカリス・ファン・ハウテンは、自身も歌手として活動しています。彼女は愛人の将校ルドウィグ・ムンツェ役だったセバスチャン・コッホと実生活でも交際していましたが、2009年に破局。2016年にガイ・ピアースとの間に息子を出産。ガイ・ピアースは「メメント」の主演俳優です。カリス・ファン・ハウテンは「ゲーム・オブ・スローンズ」撮影期間中に妊娠していたので、同作中のレディ・メリサンドルの妊娠中の姿は自前のお腹だったのかもしれません。

「ブラックブック」では早々に殺されてしまいますが、ユダヤ人歌手ラヘルを助けるロブ役ミキール・ハースマンも「ゲーム・オブ・スローンズ」に出演しており、そのときはダーリオ・ナハーリス役でした(後任で毒気のないほう)。ミキール自身はオランダ系ユダヤ人のようです。

エロ・グロ・殺人・謀略が絡み合って展開

「ブラックブック」は2時間25分ありますが、長尺を感じさせません。カリス・ファン・ハウテンの歌手としての歌声も楽しめます。冒頭と締めくくりの舞台は1956年10月のイスラエル。それらにサンドイッチのように挟まれているのが1940年代半ばのオランダ(主にハーグ)です。

イスラエルのキブツ・シュタインに見学バスツアーがやってくるところから物語は始まります。キブツの小学校で子どもたちと歌うラヘル・ローゼンタールは、ツアーに参加していた知人ロニーと再会。それをきっかけに、ラヘルは第二次大戦終結間近(連合軍がオランダをナチスから解放していった時期)の出来事を回想します。ラヘルがユダヤ人であることを、再会するまでロニーは知らなかったようです。

「ブラックブック」には、お子様向けではないエロティックなシーンがあります。変わり果てた死体を土中から掘り出すシーン、バケツに溜めた人間の排泄物を頭からかぶるシーンもあります。人間の影や闇の部分を刺激する、ドキっとする場面が何カ所か挿入されています。

そういうのをひっくるめての全てが人間なのだ、とポール・バーホーベン監督が思ったかどうかは定かでないものの、白黒や善悪を分かりやすく表現しない姿勢が、事件のオチにたどり着くまでの展開を面白いものにしていると思います。

生きるため、ナチスへのレジスタンスを成功に導くためには汚れ役も汚れ仕事も必要で、そこをとやかくジャッジしない描写が “めくるめく感” を生み出しているとも感じました。

組織としての人間、個人としての人間をリアルに描いた作品

この作品ではナチス勢力もレジスタンス組織も一枚岩ではありません(そういうものだと思います)。組織としての方針もさることながら、個人的な価値観や私情が意思決定を左右している面もあります。社会の動乱に乗じて利益を得ようと企む者たちも出てきます。

レジスタンス側のスパイとして、ナチスの将校ルドウィグ・ムンツェの愛人となるユダヤ人のラヘル(レジスタンスでの名前はエリス・デ・フリース)も、戦前は歌手だったためか、決してお堅い部類の女性ではなく、禁じられていた英語の歌を聞いたり口ずさんだり、命を助けてくれた若い男性(ロブ)のところに身を寄せたり、露出度の高い身なりをしたりしています。反骨精神もなかなかで、素直に言いなりになるタイプではありません。冒頭のイスラエルでラヘル(エリス)と再会するロニーは、戦時中のオランダではラヘルの愛人ルドウィグ・ムンツェの元で秘書的な仕事をしていましたが、当時の彼女も清廉潔白な振る舞いの女性ではありませんでした(隠れた政治的意図をもっていたと思われる)。

それがどんな “どさくさ” であったとしても、それを生き抜いて、最終的には前向きに人生を捉えることのできる人間が “心の安穏” と “形のない勝利” を得る、というふうに感じた作品です。

Amazonプライムビデオの見放題からは消えるようですが、どこかで見かけたら視聴してみてください。

[ロケ地]オランダ、イスラエル、ドイツ、イギリス

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