シーズン1で蒔かれた種子がシーズン2で育ち、シーズン3で刈り取りが行われ「一応の完結をみた」感がもたらされたところで、シーズン4がリリースされました。
[ストーリーの流れ]
シーズン3までのラス・エンシナスの校長(アンデルの母)はいきなり解雇され、学校のテコ入れのため新しい校長(有能な事業家で大金持ち)が着任。彼は、自身の3人の子どもを同校へ転入させます。3人の子どもはそれぞれ個性が強く、彼らが動くことで新たなエピソードが生まれ、事件が起こります。ナディアの弟オマールが奨学金を得て新学期から転入。サムエル、グスマン、レベカ、アンデルは引き続き在学。カエタナもラス・エンシナスにいます。
[シーズン4の新キャラ:新校長の子ども3人+1人の転入生]
アリ ⇒ 新校長ベンジャミン・ホワイトの長女。パトリックとは双子。水泳が得意。普段は階級意識が強く気位の高い優等生だが、アルコールが入ると人が変わる
パトリック ⇒ 新校長ベンジャミン・ホワイトの長男。アリとは双子でゲイ。以前交通事故で2年間寝たきりとなった
メンシア ⇒ アリとパトリックの妹。性的に奔放で、破滅系の遊び人。父ベンジャミンにとって頭の痛い存在だが学業成績は優秀らしい
フィリップ ⇒ フランスとスペインの血を引く王位継承者。世界的デザイナーのパトロンでありアイコンでもある
このドラマでは、奇妙なパーティーがいろいろ催されます。スペイン人の発想力、妄想力には感心します。男性と女性のドレスコードをチェンジして女性はタキシード、男性は露出度の高い服装をするパーティー、風呂上りのようにタオルを身体に巻き付けての半裸のタオルパーティー、照明を一定時間オフにしている間に参加者たちが好きなことをする暗闇パーティーなど。私自身がパーティー好きではないので、何が楽しいのかまったくもって理解不能ではありますが、作中の高校生たちはとても楽しそう。そしてパーティーの場面で何か重大なことが起きるケースが多いです。
シーズン4のテーマは「欲しいものはコレではなかった」(個人の解釈です)。
登場人物たちは “自分にとっての『得(よき展開)』” のために選択や意思決定をします。しかしその手段では欲しいものが得られない、あるいは得てから「自分の欲しいものではなかった」ことに気づくのです。彼らは、自分の目を引く人物や物事が、さらなる満足をもたらすことを期待します。若い頃の視野の狭い欲望、即物的な野心に対し「本当はコレじゃないんだ」と語りかける “内なる声” に上手く向き合えないため破天荒になり、人間関係においても力任せの更新を繰り返します。自ら招いた破壊の後に満ち足りた日々がやってくるのでしようか。
年越しパーティーで人々が感情と衝動にしたがって乱痴気騒ぎを繰り広げるなか、またひとり殺されます。
このドラマが観る者を惹きつける要因の四つ目について語っておきましょう。それは「安定したレギュラーを後方にシフトするタイミングが絶妙」なこと。スポーツと同じで、試合で上手く機能している間はメンツやフォーメーションをいじらない。でも絶好のタイミングで、それまでのレギュラーを後ろに下げて彼らに新しい役割を与えます。そして個性のある働きを期待でき、起爆剤となる新メンバーを投入する。「エリート」の制作者は、それがとても上手です。かつての登場人物もベストのタイミングでドラマから姿を消しました。残るメンバーは、それまでと少し違った役割を作中でもつこととなり、新たな世界を展開することに貢献していきます。まったく異なる刺激を新しいメンバーが持ち込みます。新陳代謝と拡充が上手いドラマはシリーズ化に成功します。
「エリート」にはシーズン5と6が用意されているようです。リリースまで「エリート短編集」を楽しむことにします。シーズン4では「ゲイのラブシーンが多すぎる」と感じていましたが、制作者は理由があって、熱意をもって描きたかったのでしょう。改めて見直すと、あれはあれでよかったのではと感じています。
[シーズン4でお仕事を終えたキャスト]
ミゲル・ベルナルドゥ(グスマン役)
1996年バレンシア生まれの俳優。女優アナ・ドゥアトとプロデューサーであるミケランジェロ・ベルナルドーの子ども。同夫婦は脱税、マネーロンダリングの罪で告発された模様。母親は慈善活動にも熱心なようで、ドラマ同様に清濁併せ吞んだお金持ちの家庭で育った人と推察される。ミゲルはアメリカに渡って数年間、いくつかの機関で演技を学び、英語も流暢とのこと。本作のヒットまでは目立たない存在だったそうだが、私はこの人の自然でツボを外さない演技が好き。ミゲルとグスマンはまったく似ていないから演じるのが楽しい、自分はグスマンのように不躾な物言いはしない、自分の発言の他者への影響を十分に考えるし、敬意をもって正しくあろうとする、とインタビューで述べている。2021年9月からスペインの歌姫アイタナと暮らしているとのこと(マドリードに€750,000相当の家を購入。本日のレートで換算すると1億円ぐらい)。
アーロン・パイパー(アンデル役)
1997年ドイツのベルリン生まれの俳優、モデル、歌手。父親がドイツ人、母親がスペイン人。ドイツとスペインの二重国籍。2004年に俳優としてのキャリアをスタート。2011年から映画等で実績を積む。音楽でのプロ活動は2020年からで、歌手としてはラッパー系のようだ。「2021年11月、スペイン人モデルで実業家のジェシカ・ゴイコチェアとの関係が確認された」とあるので、私生活ではストレートと思われる。
ミナ・エル・ハマニ(ナディア役)
1993年マドリード生まれ。モデルで女優。両親はモロッコ出身。2014年に女優としての活動をスタート。スペイン語、英語、アラビア語が堪能で「ベルベル語」が母語らしい。ということは親が「ベルベル人」なのかな。ココにも書きましたが「ベルベル人」とは「自由な人」という意味で、モロッコの人口の半分が「ベルベル人」と言われている。