シーズン2まで視聴していたものの記事にはしていませんでした。スペインの学園サスペンスドラマ「エリート」の南アフリカ版というのが当時の印象。このたびシーズン3がリリースされたので取り上げたいと思います。
いろんなドラマや映画が日々リリースされる状況に流され本ドラマのことを忘れていましたが、面白い作品であるのも事実です。お国柄なのかテンポがゆったりしています。そして「エリート」ほどイっちゃってはいません。シーズン1(2020年リリース)こそ濡れ場が多かったもののシーズン2以降ではラブシーンの占める割合や過激さはレベルダウンしていきます。
変わった企画やパーティーは南アフリカの名門高校生たちも好きなようです。アルコールやドラッグ、SNSを使ったコミュニケーションやイジメ・中傷といった要素が盛り込まれているのも「エリート」と同じ。LGBTQの表現については「ブラッド&ウォーター」のほうがマイルドです。恐らくシーズン1のリリース後の反応から「『エリート』の二番煎じはいかがなものか(国や文化も違うわけで)」となり、シーズン2以降は犯罪ものとしての色合いを濃くしたのではないかと思います。
「エリート」では高校生たちが事件に巻き込まれ図らずも命を落としたりします。一方「ブラッド&ウォーター」は女子高生プレンが生後間もなく誘拐された姉フメレレを捜し出し、拉致の真相を突き止めようとする物語。「エリート」が群像物の色合いが強いのに対し、本作は高校生それぞれを描きつつも一貫してプレンを中心に据えています。
南アフリカは多民族国家。1994年までアパルトヘイト政策が採られ、白人による有色人種差別が行われていました。イギリスの植民地だった時代があるため英語も公用語のひとつ。本ドラマのセリフもほとんどが南アフリカ訛りの英語です。主人公を始めとして黒人の占める割合が高いドラマ。
ドラマの見どころ/ポイント
まずは南アフリカというロケーションが新鮮
南アフリカは北を除く三方が海であり、国の広範が海に面しています。そしてドラマの舞台はケープタウン。海からさほど遠くない位置に不思議な形の山(テーブルマウンテン)があったりと地勢や地形に特徴があります。リゾート地風でありながらテンション低めの “のどかさ” や “ローカルな雰囲気” を備えています。
南アフリカへはなかなか行くことができませんので、まずはロケーションと風景に心惹かれます。
高級住宅の作りや調度品が楽しい
パーカスト高校の生徒の家庭は大半が大金持ちなので豪邸に住んでいます。豪邸にもいろいろあり、アメリカの豪邸、メキシコの豪邸、イギリスの豪邸…、国によって特徴や似て非なる部分があります。
南アフリカの豪邸についても「ふーん、こんなふうに設計しているんだ」と興味深い点が多々あります(例えば床がガラス張りのベランダなど)。
インテリアや調度品にもアフリカのテイストがあって目を引きます。
生徒たちと各家族が絡むストーリー構成でわかりやすい
ストーリーのメインは女子高生のプレン(+フィキレ)。主要な役どころの高校生の数とバランスがほどよく、生徒たちの家族も秘密や問題を抱えていて、それが少しずつ明らかになっていきます。細部のパーツが大きな出来事や真相へとつながっていく点が面白いし、わかりやすいと思います。
やたら多くの生徒が登場して事件が随所で巻き起こるという展開の場合、何に注目したらいいのか、どの出来事が何につながっているかがわかりづらいことが少なくありません。それがドラマ全体としてのまとまりを損ないます。「ブラッド&ウォーター」の場合、そういった欠点は少ないように思います。
ハイテンポ/ハイテンション過ぎない“ゆったり感”
お国柄や文化によるものか、空気感はゆるくてのんびりしています。パーティーのシーンでも「エリート」に比較するとウェイウェイなハイテンション感は希薄です。
パーティーの衣装はアフリカ的ゴージャスさがあって色とりどり。髪型やメイクにも独特のセンスが見られ、目を楽しませてくれます。
危機迫る緊迫感のあるシーンでも、欧米制作のドラマに比較して動作やセリフが一呼吸遅い感じで展開していきます。続きがありそうな雰囲気を漂わせつつシーズン3は終了。
「エリート」は面白いドラマですが「最近のシーズンはトンデモ過ぎてついていけないわあ」と思っている方には「ブラッド&ウォーター」をお勧めします。イケメンはあまり登場しませんが(好みによる)女の子たちはキュートです。
もっと南アフリカに通じていれば、同じ黒人でも民族が異なっていたり、それぞれの言語や文化が異なっていたりといったことまで理解できるのかもしれません。民族の話題が多少出てきますが、深掘りすることなく物語は進行していきます。
シーズンごとのあらすじ
シーズン1:プレン・クマロは招待されたパーティーで出会ったフィキレ(フィクス)・ベレーを、生後間もなく誘拐された実の姉妹ではないかと疑い始める。真相を突き止めるためプレンは調査をスタート。プレンとフィキレは一旦は仲良くなるものの敵対につながる事件が起きる。フィキレはプレンが自分を追いかけていた理由を知ることになる
ちょっとした疑問 若者たちがスケートボードをするシーンが出てくるが揃いも揃って上手くない。撮影のためにやらされている感じ。南アフリカの若者文化にスケボーは浸透していないのでは。
シーズン2:フメレレの拉致誘拐の真相が明るみになると困る人たちが動き出す。フィキレ・ベレーにスクールカウンセラーが付く。パーカスト高校内での犯罪行為が大きな問題に発展する。フィキレの生みの親について重大な事実が明らかになる。彼女の拉致のいきさつについて依然として謎が残される
ちょっとした疑問 フェレイラ先生は罪に問われないのか。スクールカウンセラーのジャネットは妊娠中。父親は?
シーズン3:プレンとフィキレは協力してフィキレの生みの親を捜し出す。フィキレ誘拐の全貌を明らかにしようとしたことでプレンを悲劇が襲う。そしてさらなる大事件が起き、生徒たちは協力して組織的な犯罪に立ち向かう
ちょっとした疑問 ルンガ(プレンのいとこ)の登場理由がよく分からない。ウェイドではリーダーシップに不足があるので、そこを埋めるため?出番も物語における役割もそれなりにあるが登場に唐突感がある。シーズン4があるとしたら、そちらへの布石か?
登場人物紹介
高校生
※一部を除き、どの生徒も家庭は大変裕福。その辺りも「エリート」と似ている
- プレン・クマロ ⇒ 生後間もない頃に誘拐された姉フメレレの誕生日を毎年祝う両親に違和感をもっている。パーティーで出会ったフィキレ・バレーが実の姉かどうかを突き止めようとメドゥリッチ高校からフィキレの在籍するパーカスト高校に転校し奨学金で通う。KB、ウェイドと交際。多民族国家の南アフリカにおいてはズールー人に属する
- ザマ・ボルトン ⇒ プレンの友人。クリスと交際。それによりプレンはパーティに招かれ、そこでフィキレに出会う。メドゥリッチ高校の生徒。プレンに頼まれて姉捜しの協力をする
- クリス・アッカーマン ⇒ 裕福な家庭の子息だが両親は不在がち。水泳部に所属。プレンの友人ザマと関係がある一方でマークとの間で同性愛に目覚める。後にウェンディと親しくなる。学業優秀な彼女と違って成績が振るわない。プレンのいとこルンガにも惹かれる
- フィキレ(フィクス)・ベレー ⇒ 富豪の娘。誘拐されたプレンの姉(フメレレ・クマロ)の可能性がある。名門私立パーカスト高校水泳部のクイーンでインフルエンサー。KBは幼馴染で元カレ。後にサムと交際。2023年のスペインドラマ「エリート」(S7・E4)にチラっと登場している
- ウェイド・ダニエルズ ⇒ パーカスト高校の校長の息子。プレンの転校に口添えする。彼女の姉捜しに協力。プレンに好意をもつが報われず一時タヒラと交際。奥手で真面目、優しい性格。雑誌部メンバーで写真撮影が得意。「ロード・オブ・ザ・リング」のサムと雰囲気が被る
- ウェンディ・ドラミニ ⇒ パーカスト高校のなかでも優等生でリーダータイプだがあざとい。雑誌部創設者。母親は農業大臣。この人を見ていると「エリート」のルーを思い出す。彼女ほどの濃いキャラではないしルックスや異性関係も派手ではないが。後にクリスと親しくなる。シーズン3ではスペインに留学
- タヒラ・カーン ⇒ 中流家庭の子女で奨学金で名門私立パーカスト高校へ通っている。雑誌部メンバーで美人。成績優秀でウェンディと仲がよい。ウェイドに好意をもつ。生徒会長でもあり、シーズン3では学内で執拗な嫌がらせに遭う
- KB(カラボ・モラポ) ⇒ フィキレの幼馴染で元カレ。その後プレンと交際。ラッパー。やはり豪邸に住んでいてパーカスト高校に通う。“モラポ” はソト語で “川” の意味。モラポ親子はソト族なのかもしれない
- リース・ヴァン・レンスバーグ ⇒ 働きながらパーカスト高校に通っている。麻薬ディーラー。母親が精神を病んでいる。「エリート」に喩えると “カエタナとレベカを足して2で割った” 的ポジションと思われる。名前から察するにオランダ系設定
- マーク・テダー ⇒ ゲイでクリスと親しい関係にあった。パーカスト高校の生徒
- サム・ンコサナ ⇒ スクールカウンセラーのジャネットの息子。シーズン2でパーカスト高校に転入。やはり豪邸に住んでいる。フィキレと交際
- ポーリーン / ザイード ⇒ リースとともに学内での麻薬売買に関与
- リー・アン ⇒ パーカスト高校雑誌部のメンバー。SNSが得意
- ブルース・クワン ⇒ 新入生のシヤ・クマロに難癖を付けて問題を起こす
高校生の家族
- タンデカ・クマロ ⇒ プレンの母。シーズン1では夫ジュリウスとうまくいっておらず、娘プレンと息子シヤと暮らしている。シーズン2ではよりを戻している
- ジュリウス・クマロ ⇒ プレンの父。シーズン1では、ときどき妻や子どもたちの家にやってくる関係性。フメレレが誘拐された件で人身売買の嫌疑をかけられる
- シヤ・クマロ ⇒ プレンの弟。シーズン3ではパーカスト高校に入学。奨学金で通学
- ルンガ・ヴェジー ⇒ プレン、シヤのいとこ。リースと同じパブで働くようになる
- ニコール・ダニエルズ ⇒ パーカスト高校初の女性校長。ウェイドの母。校内の問題を穏便に処理しようとする傾向がある
- ブライアン・ベレー ⇒ フィキレの父。娘のスクールカウンセラーとしてジャネットをパーカスト高校に推薦
- ヌワビサ・ベレー ⇒ フィキレの母。KBの母リズベスとは大学時代の友人。KBの父マトラとは親友
- リズベス・モラポ ⇒ KBの母。フィキレの母ヌワビサとは大学時代の友人。夫と幼い息子を残して姿を消した
- マトラ・モラポ ⇒ KBの父。人身売買が疑われた養子縁組機関ポイントグレースの代理人。弁護士でベレー家を担当する
- ジャネット・ンコサナ ⇒ サムの母。フィキレのスクールカウンセラーを務める。シーズン2から登場
その他
- チャド・モーガン ⇒ パーカスト高校水泳部のコーチ。既婚者でありフィキレと不適切な関係にあった
- ライリー・モーガン ⇒ チャドの妻。シーズン1では妊娠中。シーズン3ではチャドとは離婚しアーティストのアンソニー・ガビサのサポートをしている
- フェレイラ先生 ⇒ パーカスト高校でビジネス研究を担当。リースらのドラッグビジネスに口を出す
- レックス ⇒ ドラッグディーラー 。リースとつながりがある
- ジョゼフ・クープマン ⇒ ポイントグレースとフメレレ拉致事件を担当した元刑事
- ヴァンス刑事 ⇒ フメレレの誘拐・失踪事件、パーカスト高校内の事件などを担当
- ピーターソン刑事 ⇒ ヴァンス刑事とともに動いている
- アンソニー・ガビサ ⇒ アーティスト。チャドの元妻ライリーと仕事をしている
- ベッカー(レイナード) ⇒ モデルエージェンシーを経営。ファイナル・オウスという企業と関係がある
- ハロルド・グルートブーム ⇒ パーカスト高校の内部調査を行う
- アンバー ⇒ レイナードのモデルエージェンシーを受験した女性
シーズン4についてはコチラ(↓)