各国諜報機関の実態に迫るドキュメンタリー「スパイ・オペレーション」

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ドキュメンタリー「スパイ・オペレーション 諜報工作の舞台裏」(原題:SPY OPS)。興味深く感じる人もいるだろうし「つまらんわ」の一言で終わる人も同じくらいいそうな作品。軍事作戦に惹きつけられる人、各国の諜報合戦に興味のある人、国際的な事件の謎解きが好きな人、好みは人それぞれ。私が興味深く感じたのはエピソード3~6です。

8エピソードをエリアで括っています。そして周辺のドラマ・映画の記事へのリンクをはっています(事実と異なるフィクションも含んでいます)。

エピソードを順に観て行くと大国などの利害関係者がいかに法の枠を逸脱して、自国の利益を導こうとしているかもわかります。

アフガニスタン紛争の舞台裏(エピソード1・7)

  • 題材:アフガニスタン紛争(20年のうち2001~2004年頃)
  • 内容:
    • エピソード1「ジョーブレイカー作戦」:2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが発生。CIAはアフガニスタンに赴き、同地の北部同盟と協力して、オサマ・ビン・ラディン率いるアルカイダを守っているとされるタリバンの壊滅を目指す
    • エピソード7「タリバン内部の協力者」:2003年、アフガニスタンの問題は解決したと考えた米国はイラク戦争に乗り出す。パキスタンではオサマ・ビン・ラディンはアルカイダの活動を再開。タリバンは自爆テロ志願者を育成。CIA工作担当官は複雑なアフガン社会を理解するため、タリバン内部から情報提供者を得る行動に出る
  • 舞台:アメリカ、アフガニスタン、カナダ(ニューファンドランド島)、タジキスタン、フランス、パキスタン
  • 感想・メモ: “ジョーブレイカー” 作戦でのCIAの役割は、首都カブールでアメリカ特殊部隊が活動できるよう北部同盟との協力体制を敷くことだった。2001年11月に北部同盟がカブール入りして人々をタリバンから解放するが、オサマ・ビン・ラディンはパキスタンへ逃亡。シーズン7のように、パキスタン国境を不法に越えさせ、タリバン内部から情報を得るというやり方は興味深く感じた。やがてタリバンはアフガニスタンにおいて勢力を回復していく。2021年、米軍は同国から撤退。「アフガニスタン紛争とは何だったのでしょう?」という疑問がただ残る
  • 周辺ドラマ・映画:ザリファ・ガファリ 混沌の中の希望」「HOMELAND/ホームランド」「モーリタニアン 黒塗りの記録

大義名分作戦の舞台裏(エピソード2)

  • 題材:パナマ侵攻
  • 内容:1989年12月、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領はパナマ侵攻を決断。同国に駐留していた米軍は、軍最高司令官ノリエガの率いるパナマ国家防衛軍との戦闘を開始。パナマ在住の米人保護・ノリエガの拘束などを目的とした「大義名分作戦」の顛末が語られる
  • 舞台:パナマ、アメリカ、キューバ、ニカラグア、コロンビア
  • 感想・メモ:パナマは米軍の後ろ盾を得てコロンビアから1903年に独立。もともとはCIAの協力者で、その働きにより金銭を受け取っていたノリエガ。次第に指示に背くようになり、自分たちの中米政策に沿わなくなったので独裁者の座を降りて民主主義に転換してもらいたいとアメリカは考えた。ノリエガの増長っぷりも度を越していたが、アメリカもアメリカだ。ノリエガが魔女に傾倒して魔術で権力を拡大しようとしていた、という話が面白かった(最終的には魔法は効かなかったと言える)
  • 周辺ドラマ・映画:ナルコス」⇒ ノリエガはメデジン・カルテル(パブロ・エスコバル)のためにも動いていた。「THE 11-シリアル・キラー:エド・ベル・ケース」⇒ パナマに逃げたエド・ベルが捕まらなかったのは当時のパナマ情勢によるものと言われている

ピムリコ作戦の舞台裏(エピソード3)

  • 題材:東西冷戦時代中~後期の諜報活動
  • 内容:KGB工作員オレグ・ゴルディエフスキーは英国秘密情報部MI6(+デンマーク)のスパイ。彼はなぜ二重スパイの道を選んだのか。彼に関する密告がKGBにあり、早急にモスクワから国外へ脱出する必要が生じる。MI6が展開した大胆な作戦を振り返る
  • 舞台:ソ連(ロシア)、デンマーク、イギリス、フィンランド、ノルウェー、チェコスロバキア(チェコ、スロバキア)
  • 感想・メモ:東西冷戦の時代、どの社会主義国も、東西両者の境目にある小国デンマークにある大使館に諜報員を置いていたという話が「へー」であった

ローマ教皇暗殺計画の舞台裏(エピソード4)

  • 題材:ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世暗殺未遂事件
  • 内容:1981年5月13日、サンピエトロ広場で教皇ヨハネ・パウロ2世が狙撃されるも未遂に終わる。狙撃した男メフメト・アリ・アジャが事件について語る。彼は単独犯とされているが陰謀説も多く、暗殺未遂には多様な諜報機関の関与が疑われている。例えば “灰色のオオカミ(トルコの超国家主義的極右組織)” “KGB” “バチカン” “ほかの狙撃手” など
  • 舞台:イタリア、バチカン市国、ブルガリア、トルコ、イラン、オーストリア、ソ連(ロシア)、ポーランド、アメリカ、ポルトガル
  • 感想・メモ:嘘つきというのは自信満々なものだ。この暗殺未遂事件と下記の失踪事件(↓)は登場人物&組織が大いに被っている。謎を解き明かしてほしい
  • 周辺ドラマ・映画:バチカン・ガール エマヌエラ・オルランディ失踪事件【前編】」「バチカン・ガール エマヌエラ・オルランディ失踪事件【後編】

パレスチナ指導者暗殺計画の舞台裏(エピソード5・6)

  • 題材:イスラエル VS パレスチナ
  • 内容:
    • エピソード5「神の怒り作戦 パート1」:1972年のミュンヘンオリンピックの選手宿舎においてテロ組織「黒い九月」がイスラエル選手たちを人質にとり、イスラエルに収監している250名を解放するよう要求。選手たち人質の救出はうまく行かず、11人全員が殺害された。モサドは「黒い九月」の幹部を殺害する作戦を実行に移す
    • エピソード6「神の怒り作戦 パート2」:モサドはノルウェーで誤って一般人を殺害する。その6年後、残された標的アリ・ハッサン・サラメを殺害するよう首相から指示が出る。モサドのメンバーはほかにもミスを犯すがサラメを追う。サラメはCIAとのつながりが深く、アメリカとパレスチナのパイプの役割を果たしていた
  • 舞台:イスラエル、ドイツ、ヨルダン、イタリア、フランス、レバノン、ノルウェー、アメリカ、シリア
  • 感想・メモ:テロリストは人質を躊躇なく殺害し、諜報員は任務であれば殺人を犯しても罪にならない。どちらも、ただ指令・指示に従って動くのみ。ドキュメンタリーでは当たり前のように淡々と表現されているが、国家のためだったら許されることの範囲が広すぎて当惑する
  • 周辺ドラマ・映画:コードネーム エンジェル」⇒ 「黒い九月」が登場する。「オスロの少女」⇒ 1993年のオスロ合意がストーリーに絡む。「ミュンヘン Munich」⇒ ミュンヘンオリンピック事件を題材とした映画。モサドが「黒い九月」幹部を暗殺していく

アゾレス諸島プロジェクトの舞台裏(エピソード8)

  • 題材:アゾレス諸島海域に沈んだソ連の潜水艦の引き上げ
  • 内容:冷戦時代、ソ連の弾道ミサイル潜水艦(K-129)が海底5000mに沈む。アメリカとソ連は互いの潜水艦の位置や保有能力に関心をもっており、CIAの海洋監視システムは K-129 の沈没を探知していた。K-129 の軍事的装備や部品の回収に乗り出そうとアメリカは考え、そのプロジェクトはCIAに任された。軍艦の回収は国際法で禁じられていたため、架空のストーリーを隠れ蓑にして人の目を欺いて引き上げることを目論む。K-129 は核兵器を搭載していた
  • 舞台:アゾレス諸島(ポルトガル)、アメリカ、ソ連(ロシア)
  • 感想・メモ:CIAが潜水艦やミサイルの引き上げもすることを初めて知った(潜入や暗殺のイメージが強い)。核兵器が海底に残されているケースは K-129 のほかにもあるのかもしれない
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