映画「灼熱」:三章からなるセルビア人とクロアチア人の恋の物語

スポンサーリンク

この映画(原題 “Zvizdan/The High Sun” )はちょっと不思議な構成を採っています。小説のように3つの章に分かれていて、時代も登場人物も異なります。しかし3つの物語の主人公男女はどれも同じ女優と男優が演じています。女性がセルビア人で男性がクロアチア人という設定です。脇役も同じ顔触れが多く見られます。

クロアチア人男性を三章にわたって演じるのはゴーラン・マルコヴィッチ。第一章で見たときは「イモくさい兄さんだな」と思いましたが、3人の男の演じ分けはなかなかのものでした。セルビア人女性を演じたのがティハナ・ラゾヴィッチ。こちらも第一章と第二章では「下品で野蛮なお姉さんだな」と思いましたが、第三章では複雑な心境を抱えた若き母親を見事に演じ分けていました。

どちらもクロアチアで定評ある俳優で、特にティハナ・ラゾヴィッチはヨーロッパで高い評価を得ているそうです。ゴーラン・マルコヴィッチは特に舞台で活躍しています。

3つの章を同じ俳優で演じることには意味があり “ループのように繰り返し起こる物語” を示しているとのこと。 

第一章から第三章までを極めて簡単に説明すると以下の通りです。

【第一章】1991年夏。 “セルビア人イェレナ” と “クロアチア人イヴァン” の恋の物語

【第二章】2001年夏。 “セルビア人ナタシャ” と彼女の家を改修にきた “クロアチア人の職人アンテ” の物語

【第三章】2011年夏。 “セルビア人マリヤ” と “クロアチア人ルカ” による元恋人同士の物語

※いずれもクロアチア共和国(アドリア海中部地方の内陸部)が舞台

※ところどころエロティックなシーンを含むのでお茶の間視聴に不向き

そしてクロアチアの歴史と本作の関係は次のようになっています。

  • 1991年6月、クロアチアはユーゴスラビア(ユーゴスラビア社会主義連邦共和国)からの独立を宣言
  • 当時クロアチア領内には多数のセルビア人が住んでいた。セルビア人の村とクロアチア人の村の間にセルビア人たちが検問所を設置。双方の往来を制限する行動に出た。⇒【第一章】はクロアチア人とセルビア人の対立が決定的になる直前の話。若き恋人たちはザグレブへ逃げようとするが、ふたりの住まう村と村の間で行き来が遮断されてしまう
  • 1995年、クロアチア政府は戦後復興に取り組み始めた。クロアチア人たちは比較的早く帰郷したがセルビア人たちのそれは進まなかった。以前のような平和な暮らしを取り戻すことができるかどうか確信がもてなかったためである。⇒【第二章】セルビア人の母と娘がかつての家に戻り、クロアチア人の青年職人に家の修理を依頼する。娘は青年に恋心を抱くがクロアチア人に兄を殺されていたため素直になれない。工事最終日に娘は青年を誘惑する。しかし恋を恋らしく成就することができず悲しみが残る
  • 2011年、戦後20年が経過。平和が当たり前の時代となり、街並みや経済も回復基調にあった。しかし若者が職に就くのは容易でなく彼らは閉塞感に包まれていた。⇒【第三章】セルビア人女性とクロアチア人学生が恋に落ちて赤ん坊が生まれる。男性の親がセルビア人との交際に反対し彼らは別離に至る。しかし男子学生は彼女との関係を再び始めたいと考える

2011年と言えば “東日本大震災” のあった年。約10年前とはいえ、私にとっては比較的最近のことです。この映画を通じて、その当時、遠く離れたクロアチアでは若者の間に停滞ムードが流れ、民族間の溝が依然として消えていなかったことを知りました。日本が戦争に直接的に関わったのは遠い昔のこと。したがって戦争、戦後、民族対立と言われてもイメージが湧きません。この映画を観て、その状況や心境が少し分かった気がします。

クロアチアの映画を観たことがなく、特に主役ふたりの “上っ面のおキレイな演技” でまとめてしまわないあり方にも衝撃を受けました。

旅行は人生の大きな喜び(^^)v
ランキングに参加しています。
応援をお願いいたします。
↓  ↓  ↓
にほんブログ村 旅行ブログへ
にほんブログ村