原題は “Sebastian Fitzek’s Therapy”。タイトルの通り、セバスチャン・フィツェックの作品を基にしています。ドイツのサイコスリラーです。
まず思うのは邦題の「治療島」というセンスが秀逸であること。視聴を進めていくと、このタイトルの見事さに気付きます。原題の「セラピー」では伝わらない、当事者にとって物理的&心理的リアリティそのものであるスペース(場所)が「治療島」。
何に似ているかというと、この辺りでしょうか。


「セバスチャン・フィツェックの治療島」も先入観をもたずに観るほうが面白いので、詳細については差し控えます。
娘ヨーズィの失踪から2年が経過。ベルリンの精神科医ヴィクトル・ラーレンツはパルクム島へ渡る。隠遁が目的だったにも関わらず、アンナ・シュピーゲルという謎めいた女性がやってきて彼の治療を希望する。ヴィクトルは断る。しかしアンナが行方不明の娘ヨーズィについて思わせぶりな情報をチラつかせるため、彼女の来訪を受け入れるようになる。
ヴィクトル・ラーレンツ : ベルリンの精神科医。演じているのはシュテファン・カンプワース。「ダーク」でペーター・ドップラー役だった人。若い頃のペーターを演じたのが彼の実の息子パブロ・ストリーベック、という重要度の低い情報を添えておく
ヨーズィ・ラーレンツ : ヴィクトルのひとり娘。失踪当時13歳
イザベル・ラーレンツ : ヴィクトルの妻。互いに信用しておらず、夫婦仲はあまりよい状況ではない
ヴォルフガング・リガー : ラーレンツ家の弁護士。あまりにも顔が濃い。ヴィクトルとは親友
モニカ・リガー : ヴォルフガングの妻
メルクト教授 : ベテランの精神科医。パーク病院の医長だった
ロート博士 : 謎の治療法を探求している精神科医。メルクト教授によってパーク病院の新医長に任命される。演じているのはトリスタン・ピュッター。「バビロン・ベルリン」(シーズン3)でユダヤ人弁護士ハンス・リッテン役だった人
イネス・メルゲントハイマー:パーク病院のベテラン助手。ロート博士に付く
フリーダー・イエシュケ先生 : パーク病院の精神科医。自分の患者をロート博士に取られる。彼のやり方には否定的
アンナ・シュピーゲル : ヴィクトルの治療を希望して島を訪れる。謎めいていて、次第にヴィクトルのほうが執着するようになる
マルタ・ロート : ロート博士の妻。夫が仕事人間であるため夫婦仲はあまりよくない
ミラ・ロート : ロート博士の娘。自由奔放な性格。ヨーズィと友だちになる
グロールケ医師 : ヨーズィの主治医。パーク病院の医長となったロート博士のクリニック(部屋)を引き継ぐ
ゲッスル院長 : ロート博士らの勤務するパーク病院の院長。ロート博士の大胆なやり方には否定的
個人的な評価は、世間のそれよりも高い。理由として以下が挙げられる。
- 風景や映像がとても美しい(ロケ地選定が素晴らしい)
- 人間の意識の多層性(表面から剥いていっても、どんどん下層が出てくる構造になっている点)を上手に表現している
- 意識が旅(時間と空間の移動)であることを物語とダブらせることで上手く表現している
- ピアノによる親子のテーマ曲が美しい
無駄のないプロットになっている。例えば以下の通り。
- アンナ・シュピーゲルはヴィクトルの抑圧された潜在意識が人格化された存在と思われる。アンナはヴィクトルが顕在意識では知らないことを知っている。その矛盾や破たん、アンナとヴィクトルの相互作用のバランスが取れている
- 潜在意識から浮かび上がってくる物語は、現実に存在する駒で構成されている。無秩序に見えるが背景に “その人ならではの秩序” があることを感じさせる
- ヴィクトルの潜在意識の旅の繰り返しにより、物語の筋書きが書き直され、上書きされていく描写にリアリティがある(健常な人間にも日常的に起きていることが描かれている)
- 小説を読んでいないので「原作ではどうなっているのだろう?」と思うのは、ロート博士のチャレンジ。認められていない強い薬を使うことで潜在意識のクリアランスに大きな影響を与えたり、昏睡状態から目覚めさせたりできた、という実例があるのだろうか。真偽はともかく、そういうストーリーになっている
[ロケ地]ドイツ(ベルリン、アムルム島、フェール島)