調理と計画実行は厨房のリズムとともに―映画「ディナーラッシュ」

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Amazonプライムビデオで見つけました。「ディナーラッシュ(デジタルリマスター版)」(原題 “Dinner Rush” )という映画。2000年に公開されています。カテゴリーでは犯罪ものになるのかもしれませんが、ある種の爽快さを伴います。

「セントルイス国際映画祭観客賞」「サラトガ映画祭最優秀観客賞」だそうです。さもありなんな、通受けしそうな作品。こじんまりしているけれど実は作り込まれていて、低予算ということもあって無駄を一切含まない、そんな感じ。作り手の世界観のなかで完成度の高い表現が結実したとも言えます。

監督のボブ・ジラルディは、舞台となったレストランの実際のオーナーであるそうです。

父に認められない息子の苛立ち

ニューヨークのトライベッカにある超有名イタリアンレストラン「ジジーノ」が舞台。オーナー経営者はルイス。厨房で天才的な料理を作り上げる料理人は彼の息子のウード。ウードは厳しい料理長であり、威圧感をもって調理場を仕切ります。そこは戦場のようで、スタッフが大声で指示を出したり受けたりしつつ、慌ただしく動き回っています。そこで各種のメニューが調理され、盛り付けられ、運ばれていきます。

シェフとして高い評価を得ているウードは、一人前であることの証として、父ルイスからレストラン事業を早々に継承したいのですが、父は思うように動いてくれません。苛立ちを隠せないウードに、父ルイスは「この店は、いつかお前のものになる。いつかだ」と言います。父は評論家受けを狙ったウードのメニューを快く思っておらず、亡き妻の「シンプルでエレガント、天国の香りのする、伝統的でいい味の料理」を大切にしたいようです。

食の評論家たちには好評で、店は毎日盛況であるにも関わらず、「こんなものは料理と言えない」と説教する父ルイスを疎ましく思うウード。そんなルイスのための食事は、料理長ウードではなく、副料理長のダンカンが作ります。ダンカンはギャンブル狂、多額の借金を抱えています。直情的で、ときに理性を欠いた行動に出ます。それを理由にクビになることがないのは、何かしらを見込まれているのか、イタリア系文化圏においては大したことではないのか(日本とは異なる文化基準のもとで生きている)、そのあたりが理由として考えられます。

「ジジーノ」オーナーのルイスには裏の稼業(ブックメーカー)があり、副料理長ダンカンはルイスを通して賭けることがありました。

一癖も二癖もある来店客たち

開店とともに、いろんな人たちが来店します。バーカウンターでひとり酒を飲む金融マン、副料理長ダンカンに大金を貸しているギャンブルの胴元たち、鼻持ちならない老画商の率いるグループ、ウィッグで変装したグルメ評論家、刑事とその妻など。200席程度の店のようです。

予約3カ月待ちの繁盛店ですが、なかには招待されて来店している人たちも。

ちなみに、感じの悪い画商フィッツジェラルドを演じているのはマーク・マーゴリス(ドラマ「ブレイキング・バッド」「ベター・コール・ソウル」のヘクター・サマランカ役)。ヘクターもいけ好かない人物ですが、画商フィッツジェラルドも高慢ちきで偉そうで、かなりの悪印象です。

彼は “酒の肴” 感覚で、壁に掛けられた肖像画に難癖をつけますが、その絵はウエイトレスのマルティが描いたもので、彼女は画家志望でした。マルティ役はサマー・フェニックス。故リバー・フェニックスの妹です。リバー・フェニックスと似ているんだか、いないんだかよく分かりません。彼が今も生きていたとしたら、どんな顔つきになっていたのでしょうか(白人は特に、年を取ると随分印象が変わります)。

奇妙な一日は、名シェフの料理のように

その日は営業中に突如停電したりと、奇妙な一日でした。

オーナーのルイスや料理長ウード、スタッフらと個性豊かな客たちのやりとり、副料理長ダンカンは仕事をしながらギャンブルに借金返済の望みをかけ、ホールスタッフのニコーレとは束の間の情事。戦場のような “ディナーラッシュ” のレストランで、いろいろなことが同時進行していきます。この繁盛店においてはいつものことでしょうが、お客は席に通され、料理が供されるのを待ちわびています。

ただでさえ忙しいのに、息子ウードは父ルイスにレストラン経営権を譲るよう何度もかけ合い、ルイスは副料理長ダンカンをギャンブル地獄から救おうと手を打ち、料理長としてのウードは著名な女性料理評論家の機嫌を取り、まあ大変なこと。

その日、レストランに関わる主要な人物にとって重要なことが、厨房内でフライパンが奏でる音とリズムの陰で成し遂げられていきます。

冒頭に書いたように、犯罪ものの要素がありますが、後味の悪くない(むしろ爽快感のある)作品です。

以前はAmazonプライムビデオの見放題対象ではなかったようですが、本日現在においては追加課金なしで視聴できます。

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