このブログは海外のドラマ&映画を取り上げることを趣旨としており、日本のドラマ&映画は対象外(基本、日本の作品は観ないので)。今回は例外的な記事です。
この1カ月というもの、死ぬかと思うほどに仕事が忙しくてブログ更新どころではありませんでした。
毎日午前2~3時まで働く日々。仕事のBGMとして意外になじんだのが「怪談」「事故物件」系の YouTubeであり、広告少なく手間いらず。とっても仕事が捗りました。
そこでいろいろ見聞きするうちに「事故物件住みます」芸人の松原タニシ氏、大島てる(屋号)、オカルトコレクター田中俊行氏などのトークの内容に興味をもちました。ようやく、本当にようやく仕事が一段落したので、松原タニシ氏の実体験に基づく著作「怖い間取り」を元にした映画を視聴。しかし、びっくりするくらい怖くない。面白くもありませんでした。
それはなぜかと考えてみますに、①演技が大袈裟で学芸会っぽい、②撮影手法が素人くさい(ワイドショーの再現ドラマみたい)、③主人公らの人間像・不動産業界・霊的世界等のいずれについても掘り下げが浅くて上っ面をなぞっているだけの子ども向けマンガのよう、といった理由が思い当たります。映画の最後に出てくる、実際の事故物件の写真のほうが画面を通して迫ってくる「何か」をいっぱいもっています。
YouTubeで知った映画「犬鳴村」も観てみました。こちらは福岡を舞台とする都市伝説系なんでしょうかね。「怖い間取り」よりはストーリーが込み入っているものの、これもちっとも怖くない。面白くもない。これといって意外なところがないんですよね。
画面に薄もやがかかったり、声にエコーがかかったり、演出なのかもしれませんけれど異界っぽさよりも嘘くささを強く感じてしまいます。大いなる退屈感に包まれつつ視聴終了。
その次は「冷たい熱帯魚」。こちらは見ごたえがありました。少々長尺ですが。埼玉県で1993年に起きた「愛犬家連続殺人事件」に着想を得た作品のようです。
映画の舞台は静岡県。3年前に結婚した後妻の妙子とは冷めた夫婦関係にあり、死んだ前妻との子ども美津子の素行の悪さが悩みの種の社本信行(社本熱帯魚店主)。店頭も家族の食卓もしみったれていて愛情が感じられません。
一方で、ぱあーっとド派手な商売をしている村田幸雄(熱帯魚やエキゾチックアニマルを取り扱う AMAZON GOLD 店主)。村田には場違いな露出度のお色気妻の愛子がいます。ひょんなことから、ふたつの家族は距離を縮めます。素行のよくない社本の娘を自分の店で預かって自活に導くと、村田は言います。
ささやかな夢や希望はあっても現実との乖離が大きい卑小な中年男の社本。一方で彼の後妻や娘は、派手な生活を送る豪放な村田夫妻に取り込まれていきます。社本や後妻は、想像のはるか上を行く異常性をもつ村田夫妻から逃れることができません。
この映画は日本映画特有の表現しがたい気持ち悪さをもっているので引き込まれます。それぞれの性質や性格が “支配⇔被支配” の関係を形作り、そこから逃れることができず、イヤでも繋がり続けざるを得ないポジションへと追い詰められていく社本が、極まって怒りと暴力性を発動していく姿を見事に描いています。
人間の内面の不気味さが言動・行動・小道具とリンクしているので、弱みに付け込んで親切そうに近づいてきた村田から、いいように扱われる社本の恐怖感、行く末のもの悲しさを疑似体験できます。登場人物のほぼ全員がロクでもなくて身も蓋もない物語ですけれどね。
1993年のドラマ「あすなろ白書」(柴門ふみ原作。掛居<筒井道隆>となるみ<石田ひかり>にイラつくドラマ)に出演していた黒沢あすかが、村田のお色気イカレ妻の愛子を熱演していたのが印象に残りました。
監督は園子温(性加害で告発された人)。社本の妻、妙子役の神楽坂恵が奥さんなんですね。