エピソード1~10の続きです。
各エピソードのまとめ
エピソード11(あなたが向かう場所に火がある)
あらすじ
●少年たちがキャッチボールをしています。ボールを取り損ねて道に出たとき林の中に血まみれの保育士ミリアムを発見します。
●“NEW FAT TROUT TRAILER PARK”。シェリーの娘ベッキーは電話中。「私は車を持っていない」と叫んで奇声を上げます。
●RRカフェ(ダイナー)。シェリーの携帯電話に着信音。「スティーヴンのことで車が要るの。貸して!」とベッキー。シェリーは慌てて店を出ます。心配そうに見つめるノーマ。
●トレーラーハウスにいるベッキー。ベッドの下に隠していた拳銃を取り出します。シェリーが車で駆けつけてきます。母シェリーの車のキーを奪って車を出します。シェリーはボンネットに乗って阻止しようとしますが、彼女を振り切り危険運転で走り去るベッキー。
●振り落とされたシェリーのところにカール・ロッドが寄っていきます。シェリーはRRカフェ(ダイナー)まで車で送ってくれるようカールに依頼します。
●シェリーとカールを乗せたフォルクスワーゲン。シェリーはノーマに電話します。すると「ボビーに電話したら?」と言われます。現在、シェリーとボビーはどのような関係にあるのでしょうね(過去作を復習していないので把握していない)。カールは無線でツイン・ピークス保安官事務所のマギー(名札 “M.BROWN” の女性)に連絡。シェリーはボビー保安官補に、ベッキーが銃を持ちだし、シェリーの車で行方知れずになったことを伝えます。
●ベッキーは建物の階段を駆け上り、208号室のドアを拳銃をもった手で叩きます。隣人が顔を出し「さっきふたりで出て行ったから留守よ」と言います。「ふざけるな。スティーヴン!」と怒鳴り、ベッキーはドアに銃弾を撃ち込みます。スティーヴンと女性は建物内のどこかに隠れていたようです。
●ツイン・ピークス保安官事務所。マギーは通報システムに対応しています。事件ばかりで忙しそうです。
●サウスダコタ州バックホーン。車が2台やってきます。バックホーン警察のマックレイ刑事とFBIのメンバーがウイリアム・ヘイスティングスとともに、彼の指示した場所へやってきます。ブリッグス少佐を見たというその場所で何が起きたのかをタミーが問いただします。「何があったのか覚えていない」とヘイスティングス。フェンスの向こうに浮浪者風の男(ウッズマン)の影。ゴードン、アルバートもそれを目撃します。
●ゴードン、アルバートはフェンスの裂け目から中に入り、タミーは後方から援護します。フェンス内に「ジリジリ」という音が響き、上方を見つめるゴードンの身体がふらつきます。そして爆発音。空中に巨大な渦巻が出現して何かを飲み込んでいきます。ゴードンは両手を上に広げます。渦巻の奥には黒い男たちがいました。ゴードンは渦に引き込まれそうになりますがアルバートが腕を掴んで阻止。渦は消えます。
●気づけば、草むらには首のない女性の死体が転がっています。ルース・ダヴェンポートと思われます。浮浪者風の黒い男の影が建物の陰に現れては消えます。男の影はデイヴ・マックレイ刑事とヘイスティングスの待機している車へと近づいていきます。それをダイアンが見つめています。
●ルースの死体を撮影し「座標は腕に書いていたようです」とアルバート。そのとき車の後部座席で音がします。驚いたマックレイ刑事が車外に出て内部を確認すると、ヘイスティングスの頭頂部がなくなっていました。現場はシカモア2240番地。ダギーとジェイドが密会していた住宅もシカモア通り付近でした(ダギーたちはネバダ州ですが)。
●夜。RRカフェ(ダイナー)でテーブルを囲むボビー、シェリー、ベッキーのブリッグス親子。カウンターからノーマが心配そうに眺めています。浮気相手の女性の部屋のドアを修理するお金は父ボビーが貸す、トレーラーハウスを離れてスティーヴンから距離を置くことが提案されます。「彼は今ツイていないだけ。本当はいい人」とダメ夫を擁護するベッキー。彼女は母シェリーを車から振り落としたことを涙ながらに詫びます。
●店の外に “革ジャン+白Tシャツ” の男(レッド)が現れます。シェリーはいそいそと駆け寄って彼とキス。「後でいつもの場所で会う」ことを約束します。うっとりした表情で席に戻ったシェリーを見つめるボビーとベッキー。そのときダイナーに銃弾が撃ち込まれます。
●ボビーは外に出ます。車内に置かれた銃を子どもが誤って撃ったようです。ジェシー・ホルコム保安官補も駆けつけました。先を急ぐ車がけたたましくクラクションを鳴らします。後続の女性ドライバーは「彼女のおじが夕食に来るの。彼女はおじに長いこと会っていない。なのに遅刻する。まだ家までだいぶあるのに」と怒り心頭。“彼女” は病気であるそうです。ボビーの目に映る、その姿はゾンビのようでもありました。
●ツイン・ピークス保安官事務所。トルーマン所長とホーク副所長はグーグルマップみたいなものを見ています。「俺の計算ではここが目的地なんだがな。だが道路はない」とトルーマン。ホークは自分の地図を取り出して考えを述べます。かつて少佐の基地があったブルーパイン山は聖なる山。「少佐はそこへ向かうよう我々に示唆したのでは」と。
●ホークの地図にある絵を指し「この焚火みたいなものは何だ?」とトルーマンは尋ねます。「焚火ではなく火のシンボル。炎の一種だが現代の電気に近いものだ」とホークは答えます。「それは善か?」「善か悪か。それは背後にある意図による」。そして地図の星々が示しているのも、少佐によって示された日付と場所であることを説明します。黒いコーンは病、異常、死を示し、炎のシンボルと合わせ読むと意味するのは “黒い火”。
●少佐が残した紙にあったシンボルと同じものが地図上にあることに気づいたトルーマン保安官は意味を問います。「これについては知らないほうがいい」とホークは答えます。それは以前、ロン毛クーパーがダーリャに見せた悪魔のエースのカードと同じマークです(なお、私の目に “悪魔” に見えただけで本当のところ何なのかは知りません)。
●そこへマーガレット(丸太おばさん)からホークへ電話が入ります。「探し物を見つけたのね」「すまない。君に知らせるべきだった」「何を見つけたの?」「それは言えない」「私の丸太が火を怖がっている。あなたの進む先には火があるわ」という会話がなされます。
●会議室のドアがノックされます。開けるとジェシー・ホルコム保安官補が立っていました。彼は新車を見せたかったようですが、トルーマン保安官は断ります。ジェシーは少しズレたところのある人物のようです。
●FBIのゴードンとアルバート、そして元捜査官のダイアンがバックホーン警察にいます。ルースの腕に刻まれた数字の写真を取り出すと、ダイアンは記憶しようとしているかのような表情をします。そして後半の数字が消えてしまっているが、北部の小さな町を指し示しているとアルバートは説明します。タミーとマックレイ刑事がコーヒーとドーナツを運んできます。禁煙であるにも関わらず、ダイアンは強引にタバコを吸います。
●検視の結果、発見された遺体がルース・ダヴェンポートであったことがマックレイ刑事から報告されます。これで見つかっていないのはブリッグス少佐の頭部のみとなりました。ゴードンとアルバートがルースの遺体の奥に謎の男(ウッズマン)を見たこともシェアされます。「同じ男が警察の車から出てくるのを見たかもしれない」とダイアン。タミーとマックレイ刑事は「誰も見なかった」と言います。ゴードンは「謎の男に似た男たちをある部屋で見たことを思い出した」と語ります。
●ラッキー7保険の社長室。元ボクサーらしく、社長ブッシュネルはデスクで腕立て伏せをしています(それなりの歳なので普通の腕立てではキツイというのもあるでしょう)。彼はダギーを呼び出し、コーヒーを鼻先の人参のようにして、フィルがダギーを部屋まで連れてきます。アンソニー・シンクレアがその様子を気にしています。
●ダギーの働きにより汚職警官を含む組織犯罪、その協力者が社内にいることがわかったと社長は語ります。ミッチャム兄弟の件については「ダギーの調査によって放火でなかったことがわかったため保険金は支払われる。ならばダギーの命を狙ったのはミッチャム兄弟以外の誰かだろう」との推理を披露。3000万ドルの小切手をミッチャム兄弟に手渡すよう、ダギーに指示します。…ということはダンカン・トッドが調査員アンソニー・シンクレアに吹き込んだ話は作り話だったのかな。
●ミッチャム兄弟はプライベートスペースで朝食をとっています。「ダグラス・ジョーンズを殺す夢を見た。憎くてたまらない」とブラッドリーがロドニーに語りかけます。彼らは殺る気満々です。
●社長ブッシュネルがダギーをビルの1Fロビーへと連れていきます。ロビー右手にあるのは本来コーヒーショップのようですが、そこは赤い部屋となっており “マイク” がダギーを手招きします。その方向へと歩いていくダギー。
●ダギーは段ボール箱を持たされ、社長ブッシュネルとビルの外を歩いています。ミッチャム兄弟が手配した白いリムジンに乗って出発です。運転手によれば「サンティーノ」という店に向かうはずでした。
●草原と砂漠の中間のようなところに黒塗りの車が停まっていて、中にミッチャム兄弟が乗っています。彼らは懐に入るはずだった3000万ドルの保険金をダギーのせいで失ったとアンソニー・シンクレアによって吹き込まれています。ロドニーは「いよいよ俺たちをコケした奴を始末できる」と言い放ちますが、ブラッドリーは「アイク『ザ・スパイク』を倒してくれた恩がある」と朝食時からは発言がトーンダウン。
●ダギーを乗せた白いリムジンがミッチャム兄弟の待つ場所に近づいていきます。
●ブラッドリー・ミッチャムは夢の中の話をロドニーに聞かせます。夢ではキャンディに殴られてできたロドニーの顔の傷がキレイに治っていたと言い、無理やりロドニーの絆創膏を剥がすと夢で見た通り、彼の傷は治っていました。ブラッドリーは予知夢を見たのでしょうか。
●白いリムジンが到着。中から段ボール箱を抱えたダニーが降ろされます。ブラッドリーは夢で見た箱をダギーが持っているとロドニーに伝えます。そして箱の中に夢で見たものが入っていたら、ダニーを殺すことはできないと強く主張。
●ロドニーは銃を抜き「その箱の中身は何だ?チェリー・パイなのか?」とダギーに問います。「チェリー・パイ」とダギーはオウム返しに言います。ブラッドリーが箱を開けると彼の見た夢の通り、そこにはチェリー・パイがありました。そしてダギーの内ポケットからミッチャム兄弟宛ての小切手を発見。ふたりは狂喜してダギーに対する態度が180度変わります。
●生ピアノ演奏のあるラウンジ。件の「サンティーノ」という店でしょうか。ミッチャム兄弟はダギーを接待。ダギーの息子サニー・ジムが遊具セットを持っていないことを知ってプレゼントすることを決めます。
●ダギーのアドバイスで大金を得た老女が「ミスター・ジャックポット!」と叫んで駆け寄ります。息子のデンヴァーが帰ってきてくれたこと、ダギーと出会ったことで人生が好転したこと、彼への感謝を忘れる日はないことを訴えます。ブラッドリーは「我々にとっても恩人だ」と言います。幸せそうにダギーはチェリー・パイを食べます。
登場人物メモ
※本家に登場している人は一部を除き、割愛しています。
[ワシントン州ツイン・ピークス関係者]
レッド:犯罪組織ではリチャード・ホーンの上役。エピソード2・6・11に登場するが、シェリーと親しい間柄のようである。 “革ジャン+白Tシャツ” が彼の定番
結局、どういうことなの?
シェリーの娘ベッキーは夫スティーヴンの浮気に大激怒。その収拾のため、母シェリーと父ボビーとダイナーで話し合います。現在シェリーはリチャード・ホーンの上役レッドと親しいようで、ブリッグス母娘はともに下種な男が好きであることが判明します。
サウスダコタ州バックホーンでは、容疑者ウイリアム・ヘイスティングスの証言に基づき、少佐に会った場所(シカモア通り)へとマックレイ刑事、FBI関係者が向かいます。
そこで不思議なことが起こり、ルースと思われる頭部のない死体が発見されます。ヘイスティングスは死亡します。浮浪者風の男(ウッズマン)をゴードン、アルバート、ダイアンが目撃。ルースの腕には座標を示す数字が書かれていました。その写真を見つめるダイアンの表情をアルバートは訝し気に見つめます。
ツイン・ピークス保安官事務所ではトルーマン保安官とホークが、ブリッグス少佐の残したメモと地図とを参照して重要地点を洗い出しています。“火” が鍵になるようです。
ダンカン・トッドとアンソニー・シンクレア調査員の謀略により、ミッチャム兄弟はダギーを敵とみなし、落とし前をつけるために殺そうと目論みます。しかしブラッドリー・ミッチャムが見た夢の通りに3000万円の小切手をダギーが持参したため、彼らは態度を改めてダギーに対して非常に友好的になります。
保育士ミリアムは負傷しながらも助けを求め、治療を受けることになりそうです。
エピソード12(さあ やろう)
あらすじ
●FBIのゴードン、アルバート、タミーはホテルの部屋でワインを嗜んでいます。アルバートはタミーに重要な任務を説明します。長いので箇条書きにすると以下の通りです。
- 1970年、アメリカ空軍は“ブルーブック計画”(20年かけたUFO調査計画)を封印。“UFOが実在するという確たる証拠はなく、国家への脅威にはなりえない” との見解が表向きには示される
- 計画中止の数年後、軍とFBIは極秘チームを結成してブルーブック計画が解決できなかった不可思議な事件の捜査に乗り出す
- 関わった女性が死ぬ前に口にした言葉から “青いバラ事件” と呼ばれている
- ゴードンとアルバートは答えを得るため通常とは異なる捜査を行ってきた
- プロジェクトのリーダーに任命されたのはフィリップ・ジェフリーズ。彼は3人のメンバー(アルバート、チェット・デズモンド、クーパー)を選んだ。うち2人は何の説明もなく姿を消している
- ゆえにゴードンは新メンバーを加えるのをためらってきた
●ゴードンとアルバートは優秀なFBI特別捜査官タマラ・“タミー”・プレストンを “青いバラ事件” の捜査チームに参加するよう誘います。彼女はメンバーに加わることを快諾します。
●「ダイアンがもうすぐ来る」とゴードン。赤いカーテンの向こうから登場したダイアンにゴードンはイスを勧めます。“青いバラ事件” について彼女の助けを得たいと伝えます。見返りは多くないが現金で支払う、クーパー失踪の謎を知ることができるとアルバートに言われたダイアンは「さあ、やろう」と言います。
●山中の木々の間からジェレミー・“ジェリー”・ホーンが走り出てきます。
●セーラ・ジュディス・パーマーはスーパーで買い物をしています。キャッシャーの背後にターキーのジャーキーとビーフのジャーキーが吊るされているのを見つめます。「そのビーフジャーキー、前はそこになかったわよね?」とセーラ。「ターキーのほうが新商品なんです」とキャッシャーが答えます。「それが入荷したとき、ここにいた?」というさらなる問いに「はい。2~3週間くらい前ですが」と返したところ、セーラは「あなたの部屋は様子が変わり、前と違う。男たちが来る」と理解しがたいことを言い始めます。
●「警告したのよ。あなたに何かが起きるのよ!!私にも起きたのよ」とわめき立てるセーラには複数の人格が存在しているように見えます。「気分が悪いわ」「セーラ、止めて」「ここを出ましょう」「車のキーはどこ?」…ひとりで芝居をしているようです。セーラが取り乱して店を出て行ってしまったので、もうひとりのキャッシャーが「あの人の家を知っているから、あとで買った商品を届けようか」と言います。
●“NEW FAT TROUT TRAILER PARK”。「午前9時30分(絶対にそれ以前に呼ぶな)から午後5時30分」と書かれた立て札があります。杖を突いた年配の男性クリスコルが歩いてきます。管理人の部屋から出てきたカールは彼を呼び止めます。彼が売血をしていること、ジェンキンズ家のプロパンガスの交換をしたこと、トレーラーパークの掃除をしたことをカールは確認します。クリスコルは無報酬でちょっとした雑用をしているようです。カールは手間賃として50ドル渡し、今月分の家賃は支払わなくていいことを伝えます。
●ランスロット・コートにあるダギーの赤いドアの家。サニー・ジムは父ダギーとキャッチボールをしたいのですが、ボールを投げてもダギーは突っ立ったままでキャッチしません。
●ツイン・ピークス保安官事務所の車からホーク副所長が降りてきます。シーリングファンが回っている家屋のドアをノックします。セーラ・ジュディス・パーマーが戸口に現れます。彼女にまつわる一件が噂になっており、心配したホークが彼女を訪問したのでした。「自分に何が起きているのかわからないのよ」とセーラは言います。家の中で音がします。「誰かいるのか?」とホークが問うと「いえ。ただキッチンでちょっと」と答えました。「助けが必要なときは連絡するように」とホークは言います。ローラの母セーラは顔つきが邪悪過ぎて友だちになりたくないタイプです。
●リチャード・ホーンに暴行された保育士ミリアムは病院の集中治療室で治療を受けています。
●ダイアンはホテルでカクテルを飲んでいます。携帯電話に「ラスベガスは?」というメッセージが入り「まだ聞いてこない」と返信します。
●ベンジャミン・“ベン”・ホーンは経営するホテルのオフィスにいて、トルーマン保安官の訪問を受けます。保安官は子どもをはねて死なせた犯人がベンの孫リチャードであると告げます。目撃者のミリアムも殺そうとした、現在彼女は病院の集中治療室にいる、保険に入っていないので手術費用等の負担をお願いできないか、と続けます。ベンは対処を約束します。
●ベンはフランク・トルーマン保安官にグレート・ノーザン・ホテル315号室の鍵を示します。25年前にクーパー捜査官が使っていた部屋なので、思い出の品として病気療養中のハリー・トルーマンに渡そうとベンは考えていました。兄フランクがやってきたので、その鍵を彼に渡します。時を超えて現れた315号室の鍵。ふたりは不思議がります。
●秘書ビヴァリーがベンのところにやってきます。ひき逃げ犯が孫のリチャードだったことを彼女に伝えます。ベンは子どもの頃大好きだった自転車の昔話をした後、病院にミリアムの治療費を支払うようビヴァリーに指示します。保険に入っているとかいないとかが話題になるところがアメリカっぽいです。
●FBIゴードンは赤いドレスの女性を侍らせています。デイヴィッド・リンチに限らず、監督が俳優として作品に登場するとき、美女と絡む役どころが多いような気がします。ゴードンが女好き設定でなくても「ツイン・ピークス」というドラマは十分に楽しめると思うので、演じるリンチは監督としての発言力の強さで自身の煩悩を満たしているのだと思います。
●ドアがノックされます。アルバートは許可を求めることなくゴードンの部屋に入ります。赤いドレスを着たフランス人女性は下のバーで待つようゴードンに言われ、もったいをつけながら退室。ゴードンはアルバートに言い訳半分のウンチクを垂れます。
●無言で立ち尽くしていたアルバートは話し始めます。「ダイアンにメールが来た。“ラスベガスは?”と。彼女の返信は “まだ聞いてこない”」との内容に、ゴードンは「我々がまだ聞いていないこととは?それを突き止めよう」と言います。
●ゴードンは己の煩悩の時間を大切にしています。生真面目に任務に取り組んでいるアルバートは、そんな助平じいさんをじっと見つめます(呆れているのでは)。
●夜。黒い車が停まっています。車内には銃の準備をするハッチとお腹を空かせたシャンタルがいます。もう1台、黒塗りの車がやってきます。ハッチは運転席から降りてきた白髪の男を背後から撃ちます。「パパ!」と叫んで戸口から少年が走り出てきたところで、ハッチとシャンタルは去ります。私はすっかり忘れていましたが、彼らは「2日以内にマーフィー刑務所長を殺せ」と指示されていたのでした。
●夜。森の中のおじさん。トレーラーハウスから放送をスタートします。ネイディーン・ハーリー(黒い眼帯の女性)は “ドクター・アンプ” のメッセージに今日も心酔しています。
●書類や本が雑然と置かれた書斎らしきところにオードリー・ホーンがいます。電話がかかってくるのを待っていたようですが、業を煮やして「ロードハウスへ行こう」と夫チャーリーに言います。息子リチャードを探しているのかなと思いきや、探していたのは “2日前から行方不明のビリー” であり、チャーリー公認の浮気相手のようです。ビリーを最後に見たのがティナという女性であることが会話からわかります。
●オードリーは一方的に夫チャーリーを責めます。話は関係ない方向へと発展し、オードリーには何か署名をしてほしい書類があること、チャーリーとの間の何か重大な契約を破ろうとしていることを匂わせます。チャーリーは仕方なく、ロードハウス(バンバン・バー)への同行に同意。しかし寒い中、闇雲に動き回ることに成果は期待できないと思ったのか、チャーリーはティナに電話すると言い出します。オードリーの発言から「『ビリーを最後に見たのはティナ』と言ったのはチャック」であることが判明します。
●「チャックは先週、ビリーのトラックを盗んだことを知っているか?」とチャーリー。…ということはアンディ保安官補がトラックについて事情聴取しようとしていた男がチャックだったのでしょうか。
●チャーリーはティナに電話します。その様子をやきもきしながらオードリーが見ています。電話を切っても、チャーリーはオードリーに話した内容を語ろうとしません。
●FBIの宿泊するホテル。ダイアンは閉店後のバーカウンターに腰掛けます。ダイアンはスマホの待ち受け画面を見つめ、何か考えているようです。ルースの腕に残された座標のことを思い出し、それがツイン・ピークスを示していることに気づきます。
●バンバン・バー。エピソード2の Chromatics が再登場。ボックス席にはアビーとナタリー。ふたりはアンジェラとクラークとメアリーについて話しています。そこに男(トリック)がやってきます。ハイウェイで危険運転をする車と事故を起こしそうになったと言います。トリックは刑期を終えて自由の身になったのだとナンシーは言います。こういう謎の挿話があるのも本作の特徴ですね。
登場人物メモ
※本家に登場している人は一部を除き、割愛しています。
[バンバン・バー関係者]
ナタリー:ボックス席の女性客。演じているアナ・デ・ラ・レゲラは「ナルコス」シーズン1(2015年)でエリサ・アルバロ役、「弁護士ビリー・マクブライド(原題:Goliath)」シーズン2(2018~2021年)でマルソル・シルヴァ役と、それなりのキャリアをもっている
アビー:ボックス席の女性客。演じているエリザベス・アンワイスも有名作品にそれなりに出演している人
[ワシントン州ツイン・ピークス関係者]
オードリー・ホーン:ベンとシルヴィアの娘。リチャードの母。高校生だった本家時代はとても美人。演じているシェリリン・フェンはスージー・クアトロの姪。女性ロックミュージシャンの先駆けスージー・クアトロは割と好きだった
チャーリー:オードリーの夫。演じていたクラーク・ミドルトンは2020年10月、63歳で逝去
ビリー:オードリー・ホーンの愛人?トラックを盗まれたらしい。血を流していたという目撃証言もある。このドラマ、その他大勢的位置づけの男の名が “ビリー” または “ビル” であることが多い
チャック:ビリーのトラックを盗んだらしい。なお、エピソード7でアンディ保安官補に事情聴取されそうになっていたロン毛にキャップの男は “農夫” とクレジットされている
結局、どういうことなの?
これまで水面下で動いていた “青いバラ事件” の捜査チームにFBI捜査官のタミーが参加します。元捜査官ダイアンにもサポート要請がなされますが、彼女はロン毛クーパーらしき人物とテキストメッセージのやりとりをしており、それはアルバートらによって監視されています。
[これまでの『ロン毛クーパー ⇔ ダイアン』のメールのやりとり]
- “農場” から “バックホーン警察” :「食卓の周りでは会話がにぎやかだ」(エピソード9・10)⇒ 「情報屋レイが逃げた/座標の件はどうなった?」あたりの暗号?
- “バックホーン警察” から “?” :返信「ヘイスティングス逮捕。彼らをあの場所へ連れていく」(エピソード10)
- “?” から “ホテル”:「ラスベガスは?」(エピソード12)<午後7:28> ⇒ 「俺たちが最後に会った夜のことを訊いてきたか?」の意味?
- “ホテル” から “?” :返信「まだ聞いてこない」(エピソード12)
ローラの母セーラ・パーマーに多重人格化したような怪しい動きが見られます。演じているグレース・ザブリスキーはとってもホラー向けの顔つきですね。
ベン・ホーンの元をフランク・トルーマン保安官が訪れ、孫リチャードの犯罪、それによって集中治療室に入っている女性がいることを知らされます。ベンは被害者ミリアムの医療費負担を約束。郵送されてきたグレート・ノーザン・ホテル315号室の鍵をトルーマン保安官に手渡します。
オードリー・ホーンはビリーを探しています。彼女がけたたましく吠えるので、仕方なく夫チャーリーが情報をもっていそうなティナに電話。そこで何か重大なことを知ったようです。
そういえばエピソード7の最後でRRカフェ(ダイナー)に飛び込んできた男は「ビリーを見かけなかったか」と言っていましたね。リチャードが運転していたトラック、マーフィー刑務所長のその後といった伏線の回収も行われます。
物語の舵が一気にSF/ファンタジー方向へと切られていきます。