これも以前視聴したドラマで、エンタメとして観ると面白い2021年の作品です。「カリフェイト」でIS(イスラム国)に触れたので、その流れで「オスロの少女」(原題 “Bortført” )も取り上げます。
「オスロの少女」というタイトルなのに、少女ピアはどちらかというと脇役で “パーツ感” が強いです。彼女の母アレックスの “ゴリ押し外交” っぷりがやたら目立ち、母親が主人公のように感じられます。そんなアレックスを「ウザいわ」と感じる方には向かないドラマかもしれません。その点に寛容であることができれば楽しめると思います。一連の事件はアレックスの “身から出た錆” によるところが大きいのですが「母親だしドラマだし、こんなもんでしょ」と思って観ていました。
「オスロ合意」とは
「①イスラエルを国家として、PLO(パレスチナ解放機構)をパレスチナの自治政府として相互に承認する」「②イスラエルが占領した地域から暫定的に撤退し、5年にわたって自治政府による自治を認める。その5年の間に今後の詳細を協議する」という2点に対する合意が1993年にノルウェーのオスロで取り付けられた。アメリカのビル・クリントン大統領(当時)が仲介。その後2006年7月のイスラエルによるガザ地区・レバノンへの侵攻により、この合意は事実上崩壊。
ゆえにピアの母アレックスらはPLOではなくハマスと交渉。ドラマ内でのハマスの反応は「オスロ合意には失望した」というもので、アレックスのゴリ押しに「それもオスロ流か」と嫌味を言うシーンがある。
「無理を通せば道理が引っ込む」を地で行くアレックス、彼女に翻弄・コントロールされるイスラエルの大臣アリク。ひとり黙々とノルウェーで対処を迫られる弁護士カール。物語は「カリフェイト」同様にハラハラする展開を見せます。ひょっとしたら親子、家族の反目や赦しをピア、ユスフ、ナダヴらを通じて描こうとしたのかな、と思うところもあります。だとしたら上手くいっていないように感じます。エンタメ作品としてなら、全体によくできています。
[出演者トリビア]
「少なくとも5人の俳優がイスラエルのドラマ『ファウダ-報復の連鎖-』に出演している」とのこと。
ひとり目はユスフ役のシャディ・マリ。「ファウダ-報復の連鎖-」(S1~2)ではハマスのメンバーで後に下剋上のワリード役。もともと声が高めで「ファウダ」の頃はまだ少年の面影が残っていました。彼も30歳近くになり髭もじゃアラブのおっさんテイストを醸し出すように。
ふたり目はユスフの母ライラ役のライダ・アドン。「ファウダ」ではハマスに属するニダルの母ウムを演じています(S2)。
3人目は隠密ヒットマン、グラント役のボアズ・コンフォーティ。「ファウダ」では主人公と同じ特殊部隊のメンバーのアヴィハイ役(S1~3)。
4人目はハマスの指導者バシール役のジャミール・クーリー。「ファウダ」ではアブ・サマラ役(S1~3)。グループとしてはハマスに属するもののアブ・アハメドとは仲が悪い人物を演じています。
5人目がアリ役のヒシャム・スリマン。「ファウダ」ではハマスのテロリスト、アブ・アハメド(パンサー)役(S1)。かなりの重要人物です。