いよいよやってきました、最終回。このエピソードのタイトルは、まんま「さらばソウル」。
そのなかで、ソウル(ジーン)はウォルター先生と2年前に出会ったと言っています。
…ということは
キムと離婚 ⇒ エミリオ釈放(2回目の釈放の頃にはウォルター先生はメス製造の世界にいる)⇒(ここから)メイヒューを騙るウォルター先生と知り合う ⇒ オマハのジーンとして逮捕される(ここまでが2年)
ということですよね。なお、最終エピソードでジーンは逮捕されますが、その先のストーリーがあり、そちらのほうが重要です。
…ということは、キムと別れてから6年ちょっとと思われることから
(ここから)キムと離婚 ⇒ メイヒューを騙るウォルター先生と知り合う(ここまでが4年)
という計算になりますよね。
どうも腑に落ちません。徐々にワケが分からなくなってきました。
ウォルター先生の資金洗浄等を手伝い、自らの失踪後、11月12日を挟んだ雪のシーズンに2回、タクシー運転手ジェフらを誘って “ゲーム” をするのに、トータル2年で収まるということがあり得るのでしようか。1回目の “ゲーム” と2回目の間が、さほど空いていないとしたら、1回目の時期に “わだち” ができるレベルの積雪があるのはおかしいように感じます(例年、オマハの積雪は11月9日頃かららしいので)。
なお、スカイラーの出産は、ソウルとウォルター先生が知り合って以降。
ドラマの尺は、現実の生活のように均等なタイムラインで制作されていないので、ソウルが言っていることが答えなのだと納得することにして、話を先に進めたいと思います。
エピソード13(さらばソウル)
さて、今回の「さらばソウル」にサブタイトルを付けるとしたら、 “後悔。やり直せるなら” ではないかと思いました。
「やり直すことができるなら、やり直したい出来事が誰の人生にもある」「しかし何年経っても、変わっていない自分(そんな自分であるから、人生など変わりようもない)」「人間は、結局のところ、その人でしかいられない」「それでも、未来に一縷の望みをもつことが許されるだろうか」という余韻、もの悲しさを残す最終話でした。
最終エピソードは、シーズン5のエピソード8(運び屋)と繋がるシーンから始まります。ラロのお使いで保釈金の700万ドルを受け取りに行き、マイクとともに荒野を彷徨うことになった、あの回です。
エピソード8(運び屋)の荒野で、こんなやりとりがあったことをご記憶でしょうか。
もう動けない。アンタはなぜ歩けるんだ
自分がここにいる理由を知っているからだ
一体、何のためだ?
大事な家族が帰りを待ってくれている。守るために仕事のことは何も教えていない。俺がこの仕事をすれば、いい暮らしをさせてやれる。死ぬときは、彼らのために力を尽くしたと思って逝く。これが理由だ
最終エピソード冒頭の荒野のシーンではソウルはマイクにこんなことも訊いています。
タイムマシンを作るとしたら、どこへ行って、何をしたい?
初めて賄賂を受け取った日へ戻る。そして未来へ行き、ある人たちの5~10年先の様子を確認したい。平穏に暮らしているかどうか
フィラデルフィアの警官時代に賄賂を受け取っていなかったら、息子のマティを失うこともなくマティの妻や孫娘の人生も変わっていただろう、マイクはそんなふうに思っていたように感じます。
一方、ソウルはこう言います。
俺は投資家のウォーレン・バフェットがバークシャー・ハサウェイを買収した日に行き、その株を買う。そうしたら今頃、億万長者だ
すべては金か?変えたい過去はないのか?
最終話のシーンはモノクロ(ジーン)へと戻ります。タクシー運転手ジェフの母マリオンを通じて警察に通報されます。ジーンは再び掃除機屋(“人消し屋”)に連絡しようと目論みますが失敗し、逮捕されます。
最終エピソードのキモは逮捕されて以降です。ジーン(ソウル)は自己弁護を希望し、サポートする補助弁護人としてビル・オークリー(ソウルと絡みがあった頃は地区検事補で、現在は弁護士)を指名します。
ソウルは相変わらずの話術と法律知識により司法取引で7年の懲役にまで縮め、入るのをノースカロライナ州バトナー刑務所のD棟とする取引に成功します。
指定メーカーのミントチョコチップのアイスクリーム500mlの定期的な提供も条件に含めていました。先のエピソードで荒野から戻った後は、アイスクリームバーからミントチップだけ外して盛るようキムに頼んでいました。ミントチップ(ミントのアイスクリームにチップが入ったもの)とミントチョコチップは違うものなのかどうか、よく分かりません。とにかく、ミントチョコチップのアイスクリームは彼にとって好物のようです。
過去シーンで、掃除機屋(“人消し屋”)の地下の部屋での、ウォルター先生との会話が出てきます。
ソウルは、ウォルター先生に尋ねます。「科学者の立場から、タイムマシンがあったら何をする?」。「まったく無意味な質問だ。君の考えているようタイムトラベルなど科学的に不可能だ」と切って捨てる先生。「変えたい過去くらいあるだろう?」と食い下がるソウル。
ウォルター先生は論理的で頭脳明晰なので気付きます。「君は “後悔” について知りたいんだろう」。そしてエリオット&グレッチェンと、大学院時代に会社を立ち上げた件について話します(ここが先生にとっての最大の後悔ポイントだったとは)。次はソウルが語る番です。22歳の頃の詐欺について話します。「つまり君は昔から変わらないんだな」と先生。これは耳の痛い言葉ではないでしょうか。
兄チャックとのやりとりもフラッシュバックします。思い合っているつもりでも結局バッドフィーリングな会話で終わる様子が映し出されます。チャックの机にはSF作家ハーバート・ジョージ・ウェルズの「タイムマシン」(物語の詳細は存じません)。
さてソウルは巧妙な言動で、彼が裁かれる法廷へキムの足を運ばせることに成功します。法廷での発言により量刑について揉めた後、ソウルは望んでいなかったモントローズ最厳重警備刑務所に収容されます。受刑者たちは、彼が「ソウルに電話しよう!」のソウル・グッドマンであることを見破ります。ソウルはまんざらでもない様子。姿を消しジーンとなっても、人々の記憶にソウルが生き続けていたことの証だからです。
刑務所に弁護士を名乗る者が面会を求めてやってきます。キムでした。「ハーイ、ジミー」。ふたりはかつてHHMで駆け出しだった頃のように、壁にもたれて1本のタバコを交互に吸います。
キム:「7年まで減刑させていたの?」(You had them down to seven years.)
ジミー:「そうだ。やるだろ?」(Yes, I did.)
法廷で想定外の発言をいろいろとしたことで、ジミー(ソウル)の刑期は大幅に伸びたようです。それをふたりで改めて確認します。
「でも、模範囚なら…」と可能性を示唆するジミー。キムが刑務所を後にするとき、フェンス越しにジミーと目が合います。ふたりの間には道があり、ふたつのフェンスによって隔てられています。ジミーはハンドサインでキムに合図を送ります。「俺がここにいることを忘れないで」と言っているようです。
キムが面会に来た辺りから、言葉でなく、まなざしと間(空気)で語るようになります。かつてジミー(ソウル)がキムを法廷に来るよう仕向けたのも、彼の人生のすべての懺悔の瞬間に、どうしてもキムに立ち会わせたかったのだと想像します。
最初のほうにも書きましたが
- やり直すことができるなら、やり直したい出来事が誰の人生にもある
- しかし何年経っても、変わっていない自分(そんな自分であるから、人生など変わりようもない)
- 人間は、結局のところ、その人でしかいられない
- それでも、未来に一縷の望みをもつことが許されるだろうか
といった余韻、もの悲しさを残す最終話。じんわり、ジーンと響きます。
刑務所の面会室で「でも、模範囚なら…」と言ったジミー。そのときキムが、フッと微笑したように見えました。ふたりに希望と輝きがあった頃からジミーはそういう人で、望みが消えた今も、ジミーとはそういう人なのです。人生とはそう長くありません。若い人たちよりも私くらいの歳頃のほうが、身に染みる最後かもしれません。
歳を取ると「自分に何ができるか」ではなく「自分に何ができないか」が分かるようになっていきます。