インド社会の独特さを描くサスペンスドラマ「ダハード ~叫び~」

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原題は“DAHAAD”。街並みひとつとってもインドにはいろんな顔があり、多民族による多様な文化、多種の言語からなる国家であることを感じさせます。こちらのドラマ(↓)の雰囲気とはまた異なります。

“インド・サラセン様式”の建物や色遣いに魅了されるドラマ「ベロニーにまつわるウワサ話」
インドのサスペンスドラマ。独特のリズムとテンポで進行。美しい女子大生ベロニーが殺害され、捜査官たちが真相と真犯人に迫ります。主な舞台となるロッジの可愛らしい造りや色遣いに目を奪われます。

インドのドラマ&映画で建物やインテリアを見るたびに「インドって歴史ある土地だけあって、すごいところだなあ」と感心しきりなのですが、なぜか訪れてみたいとはまったく思わない国でもあります。

さて、サスペンスドラマ「ダハード~叫び~」について。ベースに①ヒンドゥ教や植民地支配のもたらしたカースト制度、②①に基づく貧困と女性の結婚問題があります。どちらもインド特有のものです。

[カースト制度]

バラモン(宗教関係者)、クシャトリア(王や貴族)、ヴァイシャ(商人・市民)、スゥードラ(労働者)、アチュード(不可触民)からなるが、それぞれが細分化された階層に分かれている。親から継承されるもので変更することはできない。インドでIT産業が発展したのは、新しい領域であることから属するカーストが影響しにくい業界で、カーストの高くない優秀な人材が多数参入したからだと言われている。なおインドではカースト制度による「差別」が憲法により禁じられている。制度自体は存続している

[貧困と結婚問題]

富の約80%を人口の約10%が所有しているのがインド社会。結婚時に新婦家族から新郎家族へ贈答する風習がある。元は上級層であるバラモン階級の慣習で、現在はカースト制度の下級層にまで浸透している。その金額はあまりにも高額であり、インドの大卒男性初任給の40~800倍程度(年収3~70年分くらい。私だったら苦労して大金を差し出し、嫁として迎えてもらい、新郎家族のお世話をさせていただこうとは思わない)。低カーストの家庭は、生まれた女の子が “階級の低さ” と “持参金の負担の大きさ” により「結婚できない」ことを心配している

導入部あらすじ

舞台はラジャスタン州のマンダワ。ジュンジュヌ県マンダワ署の警部補アンジャリ・バーティは低カースト出身の女性で、彼女の母親は好条件で娘を早く結婚させようと必死です。警察での仕事は時間面での拘束が多く、良妻賢母の仕事ではないと思っています。

何人もの女性が行方不明になりますが、彼女たちの家族は捜索にあまり熱心でなく、残念ながら後に遺体となって発見されます。バーティや同僚のパルギは署長シンの指揮のもと捜査にあたります。犠牲者たちは低カーストである女性が多く、持参金を用意できないため結婚にハンディを抱えていて孤独でした。そんな女性たちにつけ入り身勝手な欲求を満たし続ける犯人。

高カーストの人々が低カーストの人々(特に女性)を見下す社会。「女性を男性と対等の評価を得られるポジションに」と望む父親たち、望まない母親たち。バーティは低カースト出身ですが警部補として存在感を示し、同僚や上司にも一目置かれています。

犯人が誰かは視聴者には早々に分かる構成で、犯人を追う警察(主にバーティ)とのせめぎ合いにドキドキハラハラするドラマです。

見どころ

まずは「インドの人って男女を問わず、足が長くて胸板が厚く、それは得難い財産だな」ということ。多民族国家なので、みんながみんな、というわけではないものの「インドってやはり特別な土地なのかしら」と凡俗な私は思ってしまいます。例えばヨガのポーズはインドの人たちの体型を基本としているので、骨盤が狭くて足の短い日本人向けでないものがいろいろあります。主人公バーティを演じるソクナシ・シンハのゴージャスな顔立ちとスタイルは私の目を奪います。

次に景観のインドっぽさ。先にも述べました通り、インドは多文化の共同体であるので街並みひとつとっても「これがインド」という単一の何かがあるわけじゃありません。ごちゃついた感じがインドっぽいのです。登場するネットカフェなど「そういえばタイのネットカフェもこんな佇まいだった」等、東南アジアに共通するムードも多々あり、とても懐かしい感じがします。

恐らく犯人役(ヴィジャイ・ヴァルマ)の演技が上手く、そのゴミクズっぷりにイラつきながらも目が離せません。大きく括ってしまえば犯罪とは社会構造が姿を変えたものであり、精神構造が行動として具現化されたものです。「インドの抱えている社会問題 ⇒ 家族の問題 ⇒ 人格に与える影響」といった連鎖を確認できて興味深いサスペンスドラマです。

インドでは女性が差別を受けているとは言っても、2022年のジェンダーギャップにおいて日本はスコア0.650で世界116位、インドはスコア0.629で135位。日本もインド同様、世界各国のなかで下位に属しています。

シーズン2があるといいな、と思います。

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