スピリチュアルビジネスの闇―ドキュメンタリー「ソウルメイトを求めて~SNSに潜むカルト~」

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“ツインフレームス・ユニバース“ の元メンバー、ならびにグループを創始したカップル(ジェフ&シャレイア)への取材を基に製作されたドキュメンタリー。副題に「~SNSに潜むカルト~」とあるようにインターネットやSNSを使ったプロモーション、支持拡大の手法を取り上げています。原題は “Desperately Seeking Soulmate: ESCAPING TWIN FLAMES UNIVERSE” で「必死のソウルメイト探し:TWIN FLAMES UNIVERSEからの脱出」という意味。

“ツインフレームス・ユニバース“ では主にオンラインで啓発プログラムを学び、創始者ジェフ&シャレイアとのセッションを通じて神からの指示・預言を受け取ります。それにより、メンバーは完璧なパートナーを見つけることができるとジェフ&シャレイアは主張しています。

調べてみると “ツインフレームス・ユニバース“ のサイトは引き続き運営されていますし、彼らのチャンネルはYouTubeで観られます。今なお平常運転なのだろうと思います。

スピリチュアルビジネスは大なり小なり相似形

人には生きる意味や拠り所を認める面があります。人生のなかに確信できる何かがないと生きていること自体に不安を感じます。それに加え、例えばコロナ禍、戦争といった人々を分断、孤立化させるような社会事象が起きると元々抱えている不安定感が増幅されます。

「ソウルメイトを求めて~SNSに潜むカルト~」は “ツインフレーム(神から贈られる究極のパートナー/自分の魂の残り半分をもっている相手)” を得られることを謳い、①ジェフ&シャレイアがアドバイスを乞う人たちを支配する、②意のままに動かされている人たちがジェフ&シャレイアに継続的に大金を支払う、という構造を取り上げたドキュメンタリーです。世の中のほかのスピリチュアルビジネス、スピリチュアルグループのありようとも大いに重なります。

人生に強く欲しいもの、どうしても逃れたい苦痛があると “胡散臭い人物” の発する “まがい物” の言葉を真に受けて、彼らを師と仰いでしまいがち。そして促されるがままにプログラムやセミナー、セッションにお金を投じます。

“ツインフレームス・ユニバース“ の特異性

この作品ではジャーナリストのアリス・ハインズが “ツインフレームス・ユニバース“ の活動内容、創始者ジェフ&シャレイアに切り込みます。

突き詰めるとスピリチュアルビジネスのエッセンスはどれも同じ。「支配、コントロール、物質主義」です。そんななかドキュメンタリーを観て得た情報から “ツインフレームス・ユニバース“ の特異性を挙げるとするなら以下の通り。

  • ジェフ&シャレイアは「自分たちは神につながっている。神の啓示を聞いてメンバーのパートナー探しをサポートする」と主張。自分たちへの忠誠や崇拝を強く求めた
  • ジェフ&シャレイアカウンセリングの素人であるにも関わらず、メンバーたちを精神的に追い込む行為を行った。メンバーのトラウマを刺激することで優位に立ち、それを楽しんでいた。自分たちのアドバイスによって問題が起きても、ミラー・エクササイズ(同グループの自己啓発ワーク)を根拠に「メンバー自身の責任」として責めた
  • ジェフ&シャレイアはメンバーたちを支配することで、彼らが望んでいないことも強制
    • たとえば①ジェフ&シャレイアが “ツインフレーム” と認定した人物へのストーキング・迷惑行為、②女性から男性に性別を変えることなど
    • ①を繰り返したところで恋人同士にはなれない。嫌がられ、危険視されるだけである。ジェフ&シャレイアは「その人があなたのツインフレームだ。嫌がられても気にすることはない。手に入れろ」と指示し、アクションを促した
    • ジェフ&シャレイアのアドバイスでパートナーを得られたメンバーは少なかった。よって女性が8割のコミュニティ内でマッチングを行うほかなく、ジェフ&シャレイアは目をつけたメンバーたちに女性から男性に変わるよう促し、メンバーの女性たちとマッチングした
  • ジェフは学生の頃から “最小のコストで最大の利益” を生むことを第一に考えていて、ビジネスマンとしての素質があり、大金を手にすることを人生の目的としていた。シャレイアはスピリチュアルな世界に造詣が深かった。ふたりが組むことで “ツインフレームス・ユニバース“ はオンラインビジネスとして大きく成長。ジェフは次第に自らをキリストの再来と位置づけるようになり、風貌(髪型&髭)をイエス・キリストに近づけた

視聴しての感想

ジェフのハイテンションはまともな大人に見えません。シャレイアはあまり口を開きませんが、軽率なジェフの発言を肯定する後方支援の役割。ビジュアル面での重みもあって、痩せたジェフの隣にいることでバランスを取っている感があります。

ジェフの目は奇妙なまでに輝いていますが、輝きの渦が下方へと向かい、逃れ難い闇へとつながっている感じがします。シャレイアがスピリチュアルな世界に詳しいとしたら、自分たちのしていることの罪深さにどこかで気付いていないとおかしいですね。年月の経過とともに月のように膨らんでいった彼女の顔に配置されたふたつの目は、しばしば自信なさげに泳ぎます。

ジェフと出会った頃の映像ではもっと普通に近い女性だった気がするのですが、彼とオンラインビジネスをすることの旨味を知って離れがたくなったのかもしれません。ジェフから離れたら “ツインフレームス” という、大金と彼らのステイタスを生んできた概念や教義(あるいはビジネスモデル)を根底から翻すことになるため、アイデンティティの危機をも招きます。ビジネスの維持拡大を狙うなら、ふたりに “別離” はありえません。

自分は無力だ、この人たちからの助けが欲しい、彼らのアドバイスによって一時的に酷い目に遭っても人生を好転させられれば元は取れる。そういう気持ちがあると、この手のものに引き寄せられます。 “ツインフレームス・ユニバース“ のみならず、似たような枠組みやエッセンスをもつ団体・グループは多いので気をつけるに越したことはありません。

ジャーナリストのアリス・ハインズは「メンバーたちは自分たちの自由意思で物事を判断しているように見える。しかしジェフ&シャレイアは時間をかけてメンバーたちの判断能力を奪っている」と指摘しています。つまり、ふたりはメンバーとセッションを繰り返すことで彼らを少しずつ洗脳していくのです。

オンラインがなかった頃はリアルに人が人を勧誘していたカルトも、現在はパソコンやスマホから容易にアクセスできるSNSが入口になっている、という事例を取り上げた作品。私は興味深く感じました。

追記:「ツインフレームを逃れて」(Netflix版)について

Netflixでも “ツインフレームス・ユニバース“ を取り上げた3回のドキュメンタリーシリーズがリリースされました。「同じようなものがふたつなくても」とは思うのですが、 “ツインフレームス・ユニバース“ の活動をさらに可視化&社会問題化し、より広範に被害者や協力者を集めたいのかもしれません。

内容について違うところを指摘するならば以下のようです。

  • 登場する元メンバーが異なっている(一部、同じ人たちも出てくる)
  • 登場する専門家たちの顔ぶれが異なっている
  • 入信(?)して以降、連絡を絶っている等に困惑し、家族を “ツインフレームス・ユニバース“ から奪還したい人たちが「ツインフレームを逃れて」には登場する
  • 「ツインフレームを逃れて」のほうが “ツインフレームス・ユニバース“ 運営側の実情を多く取り上げている
  • 「ツインフレームを逃れて」はジェフ&シャレイアに子どもが誕生したところまでを盛り込んでいる
  • 「ツインフレームを逃れて」のほうがシャレイアが主導権を握っている感が伝わってくる

端的にまとまっているという点で、私は Amazon Original のほうが視聴しやすく感じました。しかし、どちらも観てもあまり違いはないと思います。

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