戦争のあり方は変わりつつある。映画「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」

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原題は “EYE IN THE SKY” で2016年の作品。「舞台がケニア」「現在の戦争や諜報活動はこの映画にあるように手法を変えつつあるのだろう」という点に関心が向きました。

子どもの頃よく観ていたTV番組に「すばらしい世界旅行」があり、ケニアの風土・人々・文化がしばしば取り上げられていました。しかし日本で暮らす者にとっては縁遠く、おぼろげなイメージしか持てない国です。

物語のあらまし

ナイロビで、イギリスとケニアの情報部に属するスパイがソマリアのイスラム武装勢力アル・シャバブによって射殺されたところから始まります。

ケニアはイギリス連邦加盟国であり、信仰の自由が憲法によって保障されています。国民の7割以上がキリスト教でイスラム教は1割程度に過ぎません。一方、隣国ソマリアの国教はイスラム教。ケニア軍はアル・シャバブ掃討のために2011年にソマリアへ侵攻しており、地理と歴史に疎い私は「その辺りの因縁でアル・シャバブがナイロビまで報復にやってきているのかな」という認識のもと視聴しました。

【アル・シャバブとは】

ソマリア南部を中心に活動するイスラム勢力。ソマリア内にもイスラム勢力はいくつかあり、アル・シャバブは原理原則に忠実な強硬派に位置付けられている。幹部には非ソマリア出身、ペルシャ湾岸諸国から来た者が多いとされ、自爆攻撃の多用は外国からのメンバーの影響によると指摘されている

イギリス軍とアメリカ軍は、ケニアのナイロビ上空6000mを飛ぶ “Eye in the sky” を使ってアル・シャバブの重要メンバーたちを捕獲することを合同で計画(イーグレット作戦Ⅲ)。そのプロセスで重要メンバーたちが自爆テロを目論んでいることをつきとめ、キャサリン・パウエル大佐率いるイギリス軍はテロリストらを攻撃しようとナイロビにいる部隊に情報収集を命じます。しかしイギリス政府は作戦の目的は捕獲であり殺害ではないと主張。攻撃の承認は難航します。

この物語では離れた場所に拠点をもつ、おおよそ5つの組織が連携して作戦を展開します。在ナイロビのケニア特殊部隊以外はリモートで関与。イギリスの外務大臣はシンガポールに、アメリカの国務大臣は北京にいます。

[イギリス内閣府 作戦会議室A(コブラ)]

拠点はロンドンのホワイトホール。国家的な意思決定を行う

[イギリス軍]

拠点は常設統合司令部(PJHQ:ロンドンのノースウッド)。軍事的な意思決定を行う

[アメリカ空軍]

拠点はクリーチ空軍基地(アメリカのネバダ州)。無人機リーパーの操縦、ヘルファイアーによる攻撃を担当

[アメリカ軍 画像解析班]

拠点はハワイのパールハーバー。ケニアで撮影された人物が標的に該当するかどうかを解析

[ケニア特殊部隊]

拠点はケニアのナイロビ。人的な戦術部隊であるが、ドローンを使った偵察も行っている。恐らくはイギリスと協力関係にあるケニア軍の特殊部隊

ようやく攻撃許可が下り、クリーチ空軍基地の兵士らは無人機を操縦して実行に移ります。そんなときモニターに、攻撃対象付近に少女アリア・モアリムがパンを売りにやってきた姿が映し出されます。

標的が揃って建物内にいるうちに攻撃を仕掛けるよう指示するパウエル大佐。無人機操縦士のスティーブ・ワッツ中尉は少女の命を救うことのできる機会を待とうとし、大佐の指示を受け入れません。ナイロビのメンバーは少女アリアを危険な地点から遠ざけようと試みます。

映画の後半はイギリス軍のキャサリン・パウエル大佐(ヘレン・ミレン)、アメリカ空軍のスティーブ・ワッツ中尉(アーロン・ポール)、ケニア特殊部隊のジャマ・ファラー(バルハド・アブディ ※ソマリアで生まれ、内戦から逃れるためにイエメンへ移り、その後アメリカへ渡った俳優)が、限られたわずかの時間で組織内外で駆け引きを行う展開となっています。ミサイルを打つべきか、打つとしたら最適のタイミングはいつか、イギリスとアメリカ両政府は調整に追われます。

視聴しての感想

ナイロビにいるのはケニア特殊部隊だけ。最終的な権限をもっている政治家はもちろんのこと、現地に外国の兵士はいません。イギリス軍はロンドンから指示を出し、アメリカ軍の無人機はネバダ州から遠隔操縦されています。

作戦展開を複雑にしたのは、少女アリアが攻撃予定地点付近でパンを売り続けたこと。アリアは近くでテロリストたちが自爆テロを目論んでいることなど知りません。

「東アフリカ “殺害リスト” にある人物たちが居合わせ、2人の男性が自爆テロを起こす以上、ためらうことなく攻撃せよ」というのがアメリカの姿勢。イギリスの政治家たちはそこまで非情にはなれないのか、自分の責任のもとに決断することができず、意思決定をほかの政治家に委ねようとします。

そんなやりとりの場に加わっていたイギリスのアンジェラ・ノースマン政務次官補は「安全な場所で椅子に座って攻撃を行っている」と非難します。

この映画は2016年の製作ですが、今後は「安全な場所で椅子に座って攻撃を行う」戦い方がますます主流になっていくのでしょう。高価で重厚長大な戦闘機を動かさなくても、無人機やドローンで攻撃できます。標的に気付かれることなく柔軟に接近することができ、仕掛ける側に戦死者が出ることはありません。

原題には副題がありません。日本語タイトルには “世界一安全な戦場” という文言が付け加わっています。

恐らく “世界一安全な戦場” とはイギリス内閣府作戦会議室A(コブラ)やクリーチ空軍基地を指すのでしょう。確かに身の安全は確保されているかもしれません。しかし少女アリアが背負った運命に、キャリアの浅いアメリカ空軍のスティーブ・ワッツ中尉ら実働部隊は大きなショックを受けます。この先、場数を踏んで慣れていけば “世界一安全な戦場” は痛みとリアリティの欠如したゲーム空間になっていくのかもしれません。それはそれで危険な状況です。

複数の国家、複数の軍部が意見を調整するプロセスも “安全な戦場” のように見えました。

[ロケ地]南アフリカ(※ 南アフリカ、イギリス、カナダによる制作であるため、イギリスやカナダでのロケもあっておかしくない)

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