「カーラとサムエル」
- ストーリー:ロンドンへ旅立つカーラを空港まで追いかけるサムエル。カーラは女性らしい気持ちの切り替えの早さを見せ、サムエルはラテンの男らしく情熱的に迫る。ふたりは互いに質問し始める。ルールは「説得しないこと」。いろいろと忙しい展開のなか、ふたりは互いの裏腹な気持ちを察する。
- 評価:展開の面白さ◎ | ほっこり度○ | インパクト◎
- 感想:カーラが下着姿のような服装(もちろん、よそ行きの高級な衣装)で街中を闊歩する。普通の人ではあり得ないゴージャスさを体現していて感心する。裕福な女性と貧しい男性は、生活価値観が違い過ぎて幸せを共有・維持し続けられないことが多い。男の生活レベルに合わせた価値観を共有するようになると女が生活感漂う(しみったれた)存在に変化しがち。男は不甲斐なさを感じることになる。男がそれまでの生活を捨てて裕福な女から差し伸べられた手を取るならば、ヒモ的生活が待っている。その場合、女の手のひらで転がされている感や自己不全感と上手に付き合う決意が必要だ。特別な体験を共有していると特別な相手と思いがちだけれど、共に生きる相手でないことを理解して「ありがとう。さようなら」で終わることのできる関係はよいものだと思う。若いときならなおさら。
「オマールとアンデルとアレクシス」
- ストーリー:ガンの治療を続けるアレクシスをアンデルとオマールのカップルが訪れる。過去にアレクシスのアイデアで、アンデルからオマールを遠ざけようとした件が持ちだされる。白血病治療中の浮気がアンデルにバレていたことを知り、オマールはいたたまれなくなる。その後、ふたりはアレクシスを、プールのある家へ引っ越したレベカに引き合わせる。お膳立て感にアレクシスは困惑気味。彼は余命2~3カ月を宣告されていた。
- 評価:展開の面白さ△ | ほっこり度◎ | インパクト○
- 感想:本編でアンデルが手に持って見つめる指輪のバックグラウンドストーリー。レベカはきっかけ作りのためにだけ登場する。パート1~3のうち、最終であるパート3の筋書きは読めるので意外性はない。友達の重要な意思決定に真摯に寄り添うことがアンデルのその後にもたらした影響を、本編と合わせて見ることで理解できる。お別れは清らかでありたいね。生死を問わず、別れは人の穢れを帳消しにし、清めることのできる大きな機会だと思う。
「ナディアとグスマン」
- ストーリー:ニューヨーク留学中のナディアは、没交渉だった姉の結婚式でマドリードへ戻ることになる。ナディアは、高校時代の恋人グスマンにマドリードで再会することに対し複雑な思いを抱いている。そんなナディアにグスマンは、ある提案をする。結婚式で再会した姉は、ナディアに助言する。
- 評価:展開の面白さ◎ | ほっこり度◎ | インパクト○
- 感想:再会したグスマンとの別れがつらくならぬよう「平均的なデート」を求めるナディア。会えば互いの正直な我儘(?)から口喧嘩に発展するが、電話なら一歩引いて、互いに理解を示すことができる。物理的にも心理的にも、ほどよい関係を続けるために距離感は大切。でも、適切だったと思っているその距離が、後戻りできない溝を作っていくんでしょうね、と思わせる短編。
「グスマンとカエタナとレベカ」
- ストーリー:時間軸としては「オマールとアンデルとアレクシス」の後の物語。オマールたちが帰った後、レベカの新居にグスマンとカエタナがやってくる。マジックマッシュルームの入ったケーキを食べた彼らは幻覚を見て奇妙な行動を取り始める。グスマンがレベカの家で発見をする。嘘が上手いカエタナの事情、レベカの母の転職事情が明らかになる。
- 評価:展開の面白さ◎ | ほっこり度◎ | インパクト◎
- 感想:ドラッグによって、その人の本性・本質が垣間見えるところが面白い。日頃の物言いが大変失礼であるにも関わらず、私がグスマンを好きなのは、結構真面目で物事をきちんと考えようとする、自分に正直、他者に対する思い込みが激しくお節介ではあるものの、見方を変えれば面倒見がよいという、私好みの “父性” をもっているからだろう。後半の展開で何かと足を引っ張るカエタナの挙動が面白くて可愛い。レベカは、私のなかにあるスペイン女性のひとつの典型であり大好きなキャラ。こういう出来事を通じて人は仲良くなるのだと思う(この物語はかなり極端であるが)。万人受けしそうな楽しい短編。
「サムエルとオマール」
- ストーリー:家主の逝去に伴い、サムエルは子どものころから暮らしているアパートを追い出されそうになる。姿を隠している母親は3年間家賃を支払っていなかった。思い出多い部屋に住み続けたいサムエル。路上の果物売り、魚屋、デリバリーなどの仕事をかけもちするが、思うように稼げない。サムエル宅に居候しているオマールが、ある提案をする。
- 評価:展開の面白さ◎ | ほっこり度○ | インパクト◎
- 感想:お金を得るために身体を張る決心をするサムエル。それ自体が「あり得ない選択」たが、その後も『ありえない』の法則通りの展開。短編としてはよいのでは。マニアに向けて、おかしなポーズをいろいろ取っているサムエルが何気に楽しそう。
「フィリップとカエタナとフェリペ」
- ストーリー:クリスマスに向けて古着のお直しボランティアをすることにしたカエタナ。元カレの王子フィリップに名前が似たフィリペ(新キャラ)と意気投合。一方、王子フィリップはカエタナを忘れるため、他の女性の犬探しに協力。その最中、カエタナに遭遇し、彼女が古着集めのボランティアに関わっていることを知る。
- 評価:展開の面白さ○ | ほっこり度◎ | インパクト○
- 感想:展開自体に新奇なものはないが「いい話」。男女の別れの後、痛みを思い出に変える役割を担い、期間限定でダシに使われる異性っているよね、と思った。心に残るトゲが、折に触れて昔の痛みを思い出させ、揺れるカエタナ。私はフィリップ王子の「へ」みたいな眉からして好きでないので彼の挙動に関心がないのだが、カエタナの葛藤はよく伝わってきた。「へ」の字眉を別にしても、フィリップ王子のどこがいいのかなあ。
「パトリック」
- ストーリー:クリスマスの時期(のようだが実は正月を過ぎた頃では?)父ベンジャミン(ラス・エンシナスの校長)との折り合いの悪さから、パトリックはひとりの時間をもとうと山奥の小屋へ行く。そこへゲイのグループがやってくる。ドラッグを勧められ、パトリックは家族の苦しみにつながるシーンの幻覚を見る。
- 評価:展開の面白さ○ | ほっこり度○ | インパクト○
- 感想:罪悪感の根源は幼少期にあることが多い。そして破滅型の人生の陰には心の傷がある。そこから簡単に自由になることはできない。それを再認識できる短編。「エリート」では、家族関係や子どもたちに “大いに問題あり” のベンジャミンが校長になっていることが不思議なのだが、人間は自分の問題を見つめることより、外野の問題を指摘するほうが得意な生き物である。評価は「展開の面白さ」「ほっこり度」「インパクト」ともに「まあまあ(○)」であるが、トータルではSF的シックスセンスなストーリーで良作。シックスセンスと言うよりは、自分の内なる声なのだけれど、パトリックはそれに従った。パトリックが自分の「本当」を知って受け入れたことで、家族関係にも変化がもたらされたと感じる。
エリを正してドラマ「エリート」を観る-シーズン1
シーズン4についてラブシーンが多すぎることに文句を言ったので、このドラマの魅力についても語ることにしました。このドラマが人を惹きつける一つ目の理由。
エリを正してドラマ「エリート」を観る-シーズン2
シーズン2の展開と、このドラマが人を惹きつける二つ目の理由。
エリを正してドラマ「エリート」を観る-シーズン3
シーズン3の展開と、このドラマが人を惹きつける三つ目の理由。
エリを正してドラマ「エリート」を観る-シーズン4
シーズン4の展開と、このドラマが人を惹きつける四つ目の理由。
さらにありえない方向へと向かう「エリート」シーズン5
スペインドラマ「エリート」のシーズン5がリリースされました。どの登場人物も都合よく気分が変わりすぎで別次元のお話として楽しめます。これはこれでいいんじゃないのというのが結論。
連鎖は続くよどこまでも「エリート」シーズン6
スペインの学園サスペンスドラマ「エリート」のシーズン6がリリースされました。ざっくり言うと“LGBTQ” と “レイプ事件のその後” を二大基軸として物語が展開していきます。
最終章まであと一歩。ひた走る「エリート」シーズン7
シーズン8が最終であることが発表されています。ふさわしい幕を閉じるための下準備が繰り広げられていくシーズン7です。
さようなら。ラス・エンシナス高校!「エリート」シーズン8
スペインの学園サスペンス。最終シーズンがリリースされました。