ブラジルのサスペンスドラマ「グッドモーニング、ヴェロニカ」(シーズン1~2)のおさらい

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シーズン3(最終シーズン)が配信されるということで復習を兼ねて再視聴。原題は “Bom Dia, Verônica”。イラナ・カソイとラファエル・モンテス(ペンネーム:アンドレア・キルモア)の同名小説を原作としています。原題と邦題は意味が同じ。さわやかな内容をイメージしますが、まるで違います。

ブログに取り上げるか否かはタイミングもありますが、シーズン1に登場するクラウジオが気持ち悪すぎて反芻するに堪えないため、あえて書いてこなかったという事情もあります。サスペンスものは多数視聴してきたものの、あの人には特に虫唾が走ります。しかしストーリー自体は飽きないため、ブラジルの作品のなかでは成功しているドラマと思います。

あくまでも印象だけで言うと、評価の高い欧米作品のツボを抽出してブラジル風に構成した感じです(ゆえに「面白いのだけれど、この感じ、どこかで観たよなあ」となる)。

どのあたりがそれに該当するのか、それは後半に書きます。

シーズン1は8エピソードまでありましたが、シーズン2は6エピソードとコンパクトに構成されています。それでよかった感じがます。シーズン3は、3エピソードで完結するようです。

シーズン1(8エピソード)

シーズン1のポイントは①家族そっちのけで捜査にのめり込むヴェロニカのゴリ押し気質、②男性が女性に向ける暴力性、③カベサの聖母です。

ドラマ視聴前だとしたら「“カベサの聖母” って何?」という感じでしょう。スペインで羊飼いのフアン・アロンソ・リバスに奇跡を施した聖母です。作中の“カベサの聖母 ” 像は片手に子どもを抱き、もう片方の手に子どもの首を持っています。ゆえに “カベサの聖母” を信仰する異端または新興の宗教なのかなと思いました。本流の “カベサの聖母” は子どもの首は持っていません。

導入部あらすじ

2人の子育てに追われるヴェロニカ・トレースはサンパウロ警察の殺人課で事務を担当する警察官。カルヴァーナ本部長の反対を押し切り、署内で自殺を図った女性マルタ・カンポスについて調べを開始します。マルタはカルヴァーナ本部長の元へ、男性からのDVについて相談に来ていた女性でした。

一方、ジャネチ・クルーズ夫クラウジオによる虐待に苦しんでいました。クラウジオには犯罪に値する、極めて特異な性的嗜好もあり、妻ジャネチはその片棒を担ぐことを強いられていました。テレビで警察官ヴェロニカの呼びかけを見たジャネチは彼女に連絡を取ろうとします。しかしなかなか上手くいきません。

シーズン1では出会い系サイトで出会った男性に財産等、身ぐるみ剥がされて絶望の底に突き落とされた女性たち、ジャネチの夫クラウジオによる女性虐待について事務職警官ヴェロニカが満身創痍で捜査にあたります。

「クラウジオの背後にいる巨悪とは?」「ヴェロニカの父ジュリオにまつわる事件の真相とは?」辺りでシーズン1は終わります。

登場人物

警察関係者

ヴェロニカ・トーレス:サンパウロ警察の殺人課で事務を担当している警察官。夫パウロ娘リラ息子ラファエルがいる

ネルソン・モラレス:ヴェロニカの同僚でハッキングを得意とする。彼女に好意をもっており、彼女の独自捜査に協力する

ウィルソン・カルヴァーナ:定年間近の本部長。殺人課を率いている。ヴェロニカの父とは同僚だった

ヴィクトール・プラタ:監察医。ヴェロニカに協力的

アニータ・ベルリンゲル:警部。ヴェロニカにとって目の上のたんこぶ的存在。シーズン1の終わりに本部長となる

リマ:殺人課の警官。アニータの部下

カルロス・アウベルト:「長官」と呼ばれている。日本の場合、警察庁長官というポジションがある。ブラジルの場合、連邦警察庁長官と呼ばれるポジションがあるようなのだが、それに該当するのだろうか。とにかく「長官」である

ジュリオ・トーレス:ヴェロニカの父で元警察本部長。妻を射殺した後に自殺したことになっている。実際は「アントニオ・メネーゼス」の名で施設に収容されている

エネイダ・リマ:対女性犯罪課に所属。恐らく殺人課のリマの妻

ジャネチ・クルーズ周辺の人たち

ジャネチ・クルーズ:流産を繰り返している。夫クラウジオによる支配に苦しんでいる。夫とは事実婚

クラウジオ・アントネス・ブランダオン:ジャネチの夫。軍警察の中佐。妻に息子を産んでもらいたいと願っている。彼女を「パサリーニャ」(小鳥/カワセミ)と呼んで自由な行動を制限。精神面も支配している。異常な性癖がある。マラニョン州の出身。ドラマの最初のほうでは名前すら明らかにされないので不気味さが募る

ジャニース・クルーズ:ジャネチの妹。母親とジャレスで暮らしている。転売で稼いでいる模様

出会い系サイトの被害者たち

マルタ・カンポス:設計事務所の主任。出会い系サイト “理想の愛” で出会ったピエトロ(偽名)に財産を取られる

ターニャ・コスタ・デ・メネゼス:出会い系サイト “理想の愛” でフェリポ(偽名)騙された女性

シーズン2(6エピソード)

シーズン2には唐突にLGBTQの世界がぶち込まれます。

ヴェロニカの息子ラファエル、宗教的カリスマであるマティアス・コルデイロの娘アンジェラなど、主に若い世代で同性愛が(多少ですが)描かれます。個人的には不要のネタですが、どこかに入れ込まないといけないムードが制作サイドにあるのでしょう。

シーズン1と2のブランクはせいぜい1~2年のはずですが、ヴェロニカの子どもたちを演じている子役たちの成長が著しいです。

シーズン2でも引き続き “カベサの聖母” が鍵になっています。新出のキーワードは “爪・肉・血” です。

導入部あらすじ

監察医ヴィクトール・プラタの協力を得てジュネチ・クルーズになりすましたヴェロニカは潜伏し、クラウジオ中佐や警察組織の背後にいる “巨悪(彼ら)” の特定に乗り出します。

ヴェロニカは長官のカルロス・アウベルト、警察本部長アニータ・ベルリンゲルらがブリーフケースに入った札束を何者かに渡す様子を隠し撮り。その場にいた地方検事ペドロ・ロッシをヴェロニカは後日呼び出して脅迫します。彼から「黒幕はドウム」と聞き出します。

彼らとの関わりが示唆される、いわくありげな孤児院をかつて運営していたのが “コスマス&ダミアヌス”。“聖コスマス” と “聖ダミアヌス” は双子で “ドウム” はその弟であると、作中でヴェロニカは言っています。

調べてみると以下の通り。 “ドウム” という名は創作っぽいです。

  • “コスマス” と “ダミアヌス” は3世紀の医師であり、アラビア生まれの双子。病気や怪我に対して奇跡的な治療を行ったといわれている。ローマ帝国のディオクレチアヌス帝の迫害により4世紀に殉教
  • “コスマス” と “ダミアヌス” には3人の弟(血が繋がっているかどうかは不明。弟分あるいは弟子という意味かもしれない)がいて、それぞれアンティムス、レオンティウス、ユープレピウス。“ドウム” という名は記録にない

黒幕の “ドウム” に辿り着きたいヴェロニカは、カルロス・アウベルト長官の連絡先にあった「マティアス・カルネイロ」という名を手掛かりに「マルタ」を名乗って宗教組織に潜入します。

マティアスは信仰治療やヒーリングを行う宗教的カリスマでしたが、信者の女性に治療と称して性的暴行を繰り返している形跡がありました。

そして彼は “聖人の家” という孤児院を支援していました。

「シーズン1のクラウジオ中佐は、ただの変態DV男ではなかったのかも」「いよいよ大きな闘いが始まるのかも」辺りを予感させてシーズン2は完結します。

登場人物

ヴェロニカと彼女の協力者

ヴェロニカ・トーレス:ジュネチ・クルーズになりすましている。夫パウロ娘リラ息子ラファエルはヴェロニカは死んだものと思っている

ヴィクトール・プラタ:監察医。当初はヴェロニカが生きていることを知っている唯一の人物だった。ダヴィというジャーナリストのパートナーがいる

ネルソン・モラレス:警察ではアニータ・ベルリンゲルの部下。アニータの指示による画像解析のプロセスでヴェロニカが生きていることを知り、陰で彼女の動きに協力する

グローリア・ヴォルプ:マティアス・カルネイロの性的暴行を立件しようとしているサンパウロ警察、対女性犯罪課の課長

警察関係者(ヴェロニカに協力している人物を除く)

アニータ・ベルリンゲルウィルソン・カルヴァーナの後任の本部長

カルロス・アウベルト:11年「長官」を務めた後、警視総監となった

リマ:殺人課の警官。アニータの部下(を通り越して手下)

ジュリオ・トーレス:ヴェロニカの父で元警察本部長。「アントニオ・メネーゼス」の名で施設に収容されている

孤児院ならびに宗教関係者

ペドロ・ロッシ:孤児院 “コスマス&ダミアヌス” の内部事情に通じている地方検事

マティアス・カルネイロ:宗教的カリスマ。信者の病気や怪我に対して信仰治療やヒーリングを行う。孤児院 “聖人の家” を支援。信仰における師匠はダヴィラ

アンジェラ・カルネイロ:マティアスの娘。ストレスを感じると異物を呑み込む異食症

ジゼル・カルネイロ:マティアスの妻。娘アンジェラに対して嫉妬心をもっている。夫マティアスによって支配されている

モニカ:治療のためにカルネイロ家に滞在していた患者

ルシア:ガン患者。誘われて治療のためにカルネイロ家に滞在する

ヒルダ・ルディベック:マティアスの性的暴行について最初に告発した人物

オルガ・リベイロ:孤児院 “聖人の家” の院長

ジュリア・モンテイロ:12歳のとき更生施設から “聖人の家” に引き取られた。孤児院で指導員をしている

カロリーナ: “聖人の家” で暮らしている。アンジェラの恋の相手

テナー(パブロ・アルバセテ):人身売買を仕切る人物。マティアスの教会に多額の献金をしている

ジュディチ・カルネイロ:ジゼルの母

その他

アントニア:13歳のときに警察に捕まり “コスマス&ダミアヌス” に引き取られたヴァルド―の母

ジャニース・クルーズ:ジャネチの妹。シーズン1では独身と言っていたが、シーズン2では妊娠している。姉ジャネチが送ってきた写真をヴェロニカに手渡す

カルメン・ゴメス:アニータの生母

なぜ既視感があるのか

その要因は大きく分けて3つあります。

●宗教と児童養護施設(あるいは孤児院)が絡んで児童や女性を人身売買する ⇒ これは欧米の作品に非常によくあるプロット。歴史を振り返ると、そのような事実や事件は枚挙にいとまがないのだろう

●主人公が死を装って別人となり潜入捜査をする ⇒ これも欧米の作品で割とよく見かける。私のなかではヴェロニカのひたすらにやり遂げる姿勢は、イギリスのドラマ「女刑事マーチェラ」の主人公とイメージが被る。ただしヴェロニカが目標に向かってキレッキレに邁進するのに対し、マーチェラはメンタルを病んでいるためヨレヨレで「この世から消えてしまいたい」気持ちが強かったように思う

●登場人物の相関が秘密組織のテンプレに忠実 ⇒ 政治家、実業家、宗教家、警察、軍部、法曹界、マフィア辺りがつながっているのがお約束。例えば宗教的カリスマのマティアス・カルネイロのイメージ(髭面/いい男/セクシー/長身/人を魅了する)はセルビアのドラマ「ブラック・サン」のガブリエル・マクト(秘密結社構成員で麻薬取引に関与する人物)と被る

…とは言っても本作は面白い

出会い系サイトの女性被害者たち、性暴力やDVのターゲットになった女性たち、濡れ衣を着せられて植物人間(?)になった父ジュリオの仇を討つべく、自分の家族を後回しにし、自ら死を装ってまで捜査に没頭していくヴェロニカ。彼女の協力者には命を落とす人たちも少なからずいます。

周囲をこれでもかと振り回しつつ “巨悪(彼ら)” に迫ろうと猪突猛進することで明らかになる意外な事実。彼女の猛烈さに呑まれて視聴を進めると “どんでん返し” にぶち当たり、それらがこのドラマの独特の面白さにつながっているのだと思います。

全体の構図はシンプルで骨組みに目新しさがあるわけではないのですが “社会の闇” “家族や親子の闇” “男女の闇” を上手にブラジル風に仕上げています。

最後に:「超個人的な」お気に入り

それはシーズン1のジャネチの家です。シーズン2のマティアスの家は超お金持ちっぽく、あれはあれでスタイリッシュなのですが、私はジャネチの家のほうがずっと好き。

[ジャネチの家の魅力]

キッチン&ダイニングの壁と床がタイル張りで新鮮

ブルー、淡いブルー、オフホワイトの組み合わせ。壁も床もタイル張りというところが日本にはない発想。窓の白い面格子もおしゃれ。夏の暑い日、こういうところで食事を摂りたい気持ちになる

●リビングもグリーンでコーディネートされていてステキ

壁一面がガラスと面格子に覆われたドア、嵌め殺しの窓になっているところも目を引く。クラウジオの妻ジャネチは服のセンスもよいので、彼女の好みによるもの、という設定だったのかも。ついでに言うと、ジャネチの妹ジャニースの服のコーディネイトも色鮮やかで好き

●照明類の選び方にもこだわりがある

どういうショップで、ああいう照明器具を買えるのだろうと思ってしまう素材や形。日本では売られていなさそう

バレンタインデーにリリースされるシーズン3では、本格的に “ドウム” を交えた闘いが展開されると思われます。楽しみにしています。

細部を飛ばして3エピソードで完結「グッドモーニング、ヴェロニカ」(シーズン3)
シーズン3は大団円で完結。一方で回収されなかった疑問がいろいろあります。
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