荒涼とした美しさ。アイスランドが舞台の犯罪ドラマ「トラップ 凍える死体/流血の聖地」

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“北欧ノワール” のタグがつくドラマは比較的好きです。北欧の風景やインテリアは美しく魅力的ですし、人々の生活感にも独特のテンポやリズムがあります。サスペンスやスリラーに北欧神話との関連がみられることも多いです。そして結構な確率で漫画的世界が繰り広げられます。ファンタジーの世界とも言えます。悪くないのですが、適度でないと現実と乖離して興味が持続しないことがあります。その点で、アイスランドの「トラップ 凍える死体」「トラップ 流血の聖地」はバランスが取れています。

ドラマ「トラップ」シリーズの特徴

漠然としたものですが、ヨーロッパ(特に北欧とイギリス)の犯罪ドラマの警察関係者は、主役級であっても美男美女が多くない印象があります。「トラップ」シリーズもそのひとつで、デブチンのおじさんアンドリ(オラフル・ダッリ・オラフソン)と、いぶし銀のおばさんヒンリカ(リムル・クリスチャンスドッティル)がタッグを組みます。かえってそこが味わい深く、心に残ります。

ひとつ言えるのは、私の目には大男で太り過ぎのおじさんでも、ヨーロッパ方面のみなさんにはカッコよく見えているのかもしれない、ということです。大男アンドリさんにも恋愛エピソードが用意されています(ということはそういう要素を求めている視聴者がいるということでしょう)。異文化ゆえの価値基準の相違は如何ともしがたいですが、美男美女をあえて主役クラスに据えない、ヨーロッパのドラマや映画が私は好きです。

「トラップ」シリーズを通じて、アイスランドはデンマーク(国や人)との交流が頻繁であることが感じられます。両国は、地図で距離だけみると決して近くないように思うのですが、かつてデンマークがアイスランドを統治していたことから現在も関わりが深いのかもしれません。いろんな写真を見る限りでは自然の美しさが並外れていて観光向きな印象があります。基本は金融立国。冬は雪深いものの日本同様の火山国です。

また「トラップ 凍える死体」のシーズン1では人身売買で連れてこられた姉妹、シーズン2ではアフリカから働きに来ている兄弟というふうに、黒人が登場します。そのような背景がアイスランドにあるのか、何がしかのバランス調整なのか、よく分かりません。東洋人は出てきません。「トラップ 流血の聖地」には障害のある子どもが配役されているので、マイノリティを取り上げるという姿勢なのかもしれませんね。

出演者に関する意外な情報として、ヒンリカ役のリムル・クリスチャンスドッティルは女優、脚本家であると同時に政治への関与度が高く、レイキャビク市長選に出馬したことがあります。

また個人的「へええ?!」として、アウスゲイル役のイングヴァール・エッゲルト・シーグルソンが映画「エベレスト」のアナトリ・ブクレーエフ(「マウンテン・マッドネス隊」のロシア人登山ガイド)役だった、というものがあります(イングヴァールさんはロシア人ではなくアイスランド人。雪山には慣れているかもしれません)。

シーズン2の最後に “In memory of Jóhann Jóhannsson 1969-2018” と出てきます。ヨハン・ヨハンソンは(面白い名づけだなと思いますが、それはさておき)同作品の音楽制作に携わり、2018年2月9日、ドイツのベルリンのアパートで死亡しているのが発見され、死因はコカインとインフルエンザ治療薬の併用摂取による急性薬物中毒死の可能性が高いと報告されています。日本語Wikiにも掲載されている人なので、きっと著名だったのでしょう。

「トラップ 凍える死体」(原題:TRAPPED)

シーズン1とシーズン2からなります。

シーズン1の導入
  • 若い恋人たちが無人と思われる夜の工場にいます。青年(ヒヨルトゥル)がトイレへ行っている間に火事となり、女性(ダグニー)は死にます。
  • 7年後。シグルフィヨルズル警察署長アンドリは妻アグネス(ダグニーの姉)と別居しています。アンドリはアグネスの両親と娘たちと暮らしていて、そこにアグネスが新しい恋人を伴って滞在します。すごく不思議な家族関係に見えますが、アイスランドでは珍しくないのでしょうか。
  • 工場火災の生き残りヒヨルトゥルはデンマーク船籍のフェリーの厨房で働いています。港で人間の胴体が漁船の網にかかり、折しも大雪の荒天。バラバラ殺人事件の発生に、フェリーの乗船客たちも待機を余儀なくされます。レイキャビク警察本部犯罪捜査局トラウスティらが捜査を主導します。地元シグルフィヨルズルの警察署長アンドリ、彼の部下ヒンリカのほか、男性警官アウスゲイルが事件に対応します。
シーズン1の見どころ
  • ヒヨルトゥルが大怪我を負った7年前の火災の真相、彼の乗り組むフェリーと切断された胴体の謎、警察署長アンドリの家族問題(別居中の妻、死んだ義理の妹、同居している義理の両親など)、港湾開発事業や地域の人間関係、リトアニア人による組織的人身売買などが、シグルフィヨルズルの大自然の驚異と絡み合い、壮大なストーリーとなっています。
  • 後半のエピソードで、アンドリがレイキャビク警察を去ることになった事件の存在が匂わされ、それが後のスピンオフ作品「トラップ 流血の聖地」へとつながります。
  • シーズン2との比較で言うと、シーズン1は “アイスランドの大自然” の壮大さが魅力です。お勧め度:★★★★(星4つ)
シーズン2の導入
  • 産業大臣ハーラが牧羊を営む自身の兄ギスリに自爆テロ的に襲撃される事件が起きます。ハーラは助かりますが、ギスリは死亡。刑事アンドリはギスリ周辺の捜査のためシグルフィヨルズルへ向かいます。そこでは発電所の増設をめぐってグループが対立していました。
  • ギスリ(建設反対派)の息子ヴィキングルは発電所で働くゲイで、出稼ぎに来ている黒人と恋愛関係にありました。シーズン1でアンドリの義理の妹ダグニーの恋人だったヒヨルトゥルは発電所でセキュリティ監視の仕事をしています。
  • シーズン2では、アンドリの次女は別居中の妻アグネスとレイキャビクで暮らしています。何かと反抗的な長女はシグルフィヨルズルで伯母ローフェイ(←不思議なヒューマニスト)と同居、ギスリの甥アーロンと親しくなります。
  • 刑事アンドリは、シグルフィヨルズル警察の現署長ヒンリカやアウスゲイルとともに捜査を行います。トラウスティは特殊部隊を指揮します。
シーズン2の見どころ
  • シーズン1⇒シーズン2で、警察人事によりメンバーの肩書や配置は変わったものの、同じ顔触れ(+α)が事件に対応します。
  • 発電所増設による自然破壊、死んだギスリの属していた環境保護グループと産業大臣ハーラの一族を含む産業振興勢力のせめぎ合い、ハーラ一族の軋轢と闇、ゲイのヴィキングルと出稼ぎ外国人の関係の行方、警察署長ヒンリカと夫(←自由人でフラワーチャイルド)の関係性、アンドリに対して反抗的な長女ソーヒルドゥルと恋人アーロンにまつわる出来事などが絡み合うなか、アンドリらは事件の核心へと迫っていきます。
  • 中年警察官アウスゲイルに恋の兆し?そして…。
  • シーズン1との比較で言うと、シーズン2は “プロットが新しい” のが魅力。ストーリー構成が細かなところまで考えられていて意外性もあるので、私はシーズン2のほうが好きです(シーズン1も細かいけれど、全体に重くて古め)。お勧め度:★★★★★(星5つ)

「トラップ 流血の聖地」(原題:ENTRAPPED)

タイトルが「トラップ 凍える死体」との並列的関係を感じさせますが、前作のスピンオフ作品です。シーズン3として作られたわけでもないようです。「トラップ 凍える死体」シーズン1でトラウスティ(当時の所属は警察本部犯罪捜査局)が言っていた “アンドリがレイキャビク警察を去ることになった事件” 周辺を回収します。

「トラップ 凍える死体」に比較すると “こじんまり感(低予算)” を否めませんが、エピソード数も「トラップ 凍える死体」の10に比較して6と少なく、コンパクトな作品として楽しめます。

本作の導入
  • 自然信仰のカルト教団に所属するイーヴァルの遺体がアウサルの洞窟で発見されます。彼は7年前(2013年)に起きたリーナ失踪事件(未解決事件)の容疑者で、当時警察庁本部に在籍していたアンドリとトラウスティが担当しました。
  • 教祖オドゥールとバイクチームのグンナーが土地を巡って争います。オドゥールはグンナーの父で、その土地は死んだ母とともに購入したものだったからです。彼のバイクチームに加勢した叔父ホッパー率いるデンマーク勢には、大きなビジネスの目論見があるようです。
  • 死んだイーヴァルは失踪したリーナとともに、元はバイクチームに所属していました。その後、グンナーの父のカルト教団へ拠点を移しました。
  • ヒンリカは夫バルドゥル、甥と暮らしています。アンドリは元妻アグネスの父エイリクと再会し、一時的に同居(元妻と娘たちはスウェーデンで暮らしている)。
  • アンドリはレイキャビクの警察本部に所属。担当は金融犯罪です。過去に自分が担当した事件の容疑者が殺害されたことをきっかけに、シグルフィヨルズル警察署長ヒンリカ、レイキャビクから駆け付けた捜査課長トラウスティらに加わります。麻薬取締部長ソニアも絡みます。
本作の見どころ
  • 奇妙なカルト教団と、デンマーク暴走族の加勢を得たバイクチームの対立。
  • アイスランドのカルト教団とはこういう感じの集団なのか(もろもろ気持ち悪いな)とか、暴走族、愚連隊でもあるバイクチームに初老の人がいるんだ(気持ちが万年青年なのかな)とか、ある種のカルチャーショックをもって楽しめます。
  • 死んだイーヴァル、失踪したままのリーナから派生した人間関係や家族関係とカルト教団、アンダーグラウンドビジネスのつながりが解き明かされていきます。
  • トラウスティ、アンドリは捜査で大きなミスを犯し、後半のエピソードで職務を解任。署長ヒンリカが引き継ぎます。捜査から外れたふたりは別の形でイーヴァル殺害の周辺を調べていきます。
  • アンドリに恋バナ。ふたりして身長がドアの高さを超える勢い。彼らの色恋パートは不要というのが個人的感想(巨人同士だからではなく、ストーリーに必要のない要素だと思う)。
  • 「トラップ 凍える死体」のいくつもの要素が複層的に重なり合う面白さに比較すると今いちな気がします。しかし低予算のコンパクトな作品として、それなりに楽しめます。この作品には「アイスランド観光ならアウサルもいいよ」というメッセージも多少ですが含まれている感じがあります。お勧め度:★★★(星3つ)
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