ブラッド・ピットは好きですか?私は5段階評価で「やや好き」くらいでしょうか。
素敵な人とは思いますが、世が称えるほどの美形なのかどうかをまず判別できません。これまで「ブラッド・ピットが出ているから観よう」ということは皆無でしたが、たまたま「マリアンヌ」を観て「なかなかいいじゃないか、ブラッド・ピット」と思ったので、今後は彼の出演作を観ることが増えるかもしれません。
“いい男” としての彼に着目したことはありませんが、比較すればトム・クルーズよりブラッド・ピットのほうが好きです。ブラピのほうが人間っぽく見えるので。そしてプロに対して失礼ですが、彼の演技はなかなかだと思いました。
Amazonプライムビデオの『あなたが興味のありそうな映画』というところに「マリアンヌ」があったのでクリックしました。軽い気持ちで視聴し始めたら、冒頭シーンの砂漠が、2017年5月のモロッコ旅行の際に訪れたサハラ砂漠とまったく同じ。「砂漠なんて、どこも同じでしょう?」と思うかもしれませんが、質感・曲線・規模感もろもろ、すべてが同じで超既視感。そして滞在したロッジのフロントに、ブラッド・ピットとオーナーらしき人が一緒に写った写真が飾ってあったことを思い出しました(「マリアンヌ」の撮影は2016年)。そのときの投稿は記事はコチラ(↓)。
「あのとき見たあの写真、この映画の撮影時のものだったんだ!」と合点がいったこともあって「マリアンヌ」、最初から最後まで真面目に観ました。
この作品でのブラッド・ピットは「ブロークバック・マウンテン」のイニス役ヒース・レジャーに趣きが似ています。どちらも抑制の利いた表情をしていて、一部の心を許した相手以外には感情を押し殺して接する性格(キャラクター設定)に見えます。「ブロークバック・マウンテン」についてはコチラ(↓)。
どうしても「あのとき行った、あの砂漠」という視点からの物言いが多くなってしまいますが、この映画のざっくりとしたあらすじと感想など。
マックス・ヴァタン(ブラッド・ピット)は諜報部員。ストーリーが砂漠から始まるのは先に書いた通りです。
映画冒頭は恐らく日の出の頃。こちらは私の撮影した日の出。
マックスはパラシュートでフランス領モロッコの砂漠へと降り立ちます。第二次世界大戦中である1942年のことです。パラシュートでやってきたのは指令や武器を受け取るにあたり足取りを掴まれにくくするためか、空からでないとアクセスしづらい場所であるためか、正規の手続きを経ない入国をしようとしたためか、職種がパイロットであったためか、よく分かりませんが、おおよそそんなところではないでしょうか。
こんな感じのところを歩いていくマックス。砂なので風等で形状は変わるでしょうが、尾根と呼べなくもないところを、顔をターバンでグルグル巻きにし、ひとり前進していきます。
彼はやがて道に出ます。そこを歩いていくと正面から車が走ってきます。車に乗り込みドライバーから任務に関する伝令と必要な物品を受け取ります。
マックスは受け取った結婚指輪をはめ、知らされた妻役の外見的特徴を記憶してパーティー会場へ行き、初めて会う赤の他人とキスをして夫婦を演じます。不自然さを感じ取られては命取りなので、高度なスキルが求められますね。このシーンはカサブランカということになっています。
マックス(ブラッド・ピット)はパリから6週間の休暇でやってきたモーリス、妻はクリスティーヌという設定です。パーティーを後にしてから、ふたりは初めて互いに自己紹介をし、彼女はマックスに、自分の名はマリアンヌ・ボーセジュールであると告げます。マリアンヌ役はフランスの女優マリオン・コティヤール。ストーリーの流れのなかでマリアンヌの心的変化を見事に演じ分けています。
ふたりの本当の顔ですが、夫を演じるマックスはカナダの軍人で諜報部員、妻を演じるマリアンヌはフランスのレジスタンス運動の女性リーダー。ふたりの重要任務はドイツ人大使の暗殺です。
マリアンヌはマックスのフランス語を「パリ訛りとしては最悪」と指摘。彼は「何カ月も練習した」と返します。「完全にケベック訛り。フランス系モロッコ人は騙せてもパーティーまでパリっ子には注意が必要」とマリアンヌ。「ケベック人」と彼をからかいます。
先にカサブランカ入りしたマリアンヌのほうが振る舞いが上手で、不器用なマックスを主導したように見えました。男女関係についても同様です。マリアンヌはマックスを挑発します。しかしマックスはなかなか誘いに乗りません。「相棒とヤるとヘマをやり、敵にやられる」と。
ドイツ人大使暗殺の際、警護する者たちによってマックスとマリアンヌが殺害されることも十分にあり得ます。ふたりは決行前夜、夜明けを見に砂漠へと向かいます。サハラ砂漠の夜明けはこんな感じ(旅行時に私が撮影したものであり、作中の画像ではありません)。
時は第二次世界大戦中で「戦後はメディシン・ハットの郊外に牧場を買う」と以前話したマックス。そこは「緑豊かでゆるやかな丘、澄んだ水。つらい時に想う場所」とマリアンヌに語ります。「戦争が終わったら、どこにいようと構わない。もう死ぬなら誰にも気づかれない」とマリアンヌ。どうせ死ぬのなら、この秘密もあの世にもっていけるとばかりに、ふたりは関係をもちます。
そしてドイツ大使暗殺を実行。ハラハラしますが成功し、ふたりが死ぬことはありませんでした。その後マックスの求めに応じてイギリスへ行き、彼と結婚するマリアンヌ。結婚式のとき既にマリアンヌは妊娠していました。空襲の夜、爆撃の最中に彼女は産気づきます。ずっと寄り添っていた夫マックスに「これが神に誓って偽りのない私」と言い、戦火のなか女の子アナを産みます。
その後1年、家族にとって幸せな日々がハムステッドの街で続きます。しかしマリアンヌにドイツによる二重スパイの嫌疑がかけられ、マックスは72時間以内に妻の無実を証明しなくてはならなくなります。本当のマリアンヌは1941年に死に、マックスの妻はドイツ工作員による “なりすまし” だという証言が上がってきたためです。もし妻が裏切り者であれば、夫であるマックスが責任をもって殺害するよう命じられます。それに背けばマックスは大逆罪で死刑になります。
この辺りで諜報ものというよりは、ラブストーリーであることを強く感じ始めました。ただし、マックスはハニートラップにかかっていたのか否か、それは物語の終わりまで本当のところが分かりません。
マックスと諜報活動を行っていたときのマリアンヌ、妻としてのマリアンヌ、母としてのマリアンヌ…というように、彼女はそれぞれ違った顔と表情を見せます。同様に妻の二重スパイが疑われるようになってからのマックスの困惑や焦燥などの変化もきちんと描かれています。ブラッド・ピットって、演技もなかなかの人なのだなと思った所以です。
実話をベースにした映画のようですが、確たる事実として把握されておらず、むしろ伝聞に基づいたものと捉えておいたほうがよさそうです。最後まで真相が分からず(マリアンヌがどこまで本当のことを言っているのか等)、マックスとマリアンヌ、どちらかひとりは必ず不幸な状況になることが予想され、スリリングな展開を見せる作品と思います。
フランスのディエップで、マリアンヌとともにいたガイ・サングスター役がマシュー・グード。1シーンだけ登場しますが、彼と分かりませんでした。「マリアンヌ」はロバート・ゼメキス監督作品です。