ロシア国境近くの北欧ノワール「ボーダータウン 犯罪が眠る街」シリーズ(シーズン3)

スポンサーリンク

シーズン1と2についてはコチラをどうぞ。

ロシア国境近くの北欧ノワール「ボーダータウン 犯罪が眠る街」シリーズ(シーズン1)
“北欧ノワール” は観てはいても書いたのがごくわずか。せっかくの正月休みということもありフィンランドの「ボーダータウン 犯罪が眠る街」シリーズを取り上げることにしました。まずはシーズン1です。
ロシア国境近くの北欧ノワール「ボーダータウン 犯罪が眠る街」シリーズ(シーズン2)
フィンランドのドラマ「ボーダータウン 犯罪が眠る街」シリーズのシーズン2。シーズン1よりクオリティが上がり安定しています。

フィンランド語について

このドラマを観ていると「はい」が “Joo(ヨー)” で「いいえ」が “Ei(エイ)” であることが分かります。互いに「ヨー」「ヨー」「エイ」「エイ」言っているシーンではラップを聴いている気分になります。「エイ」が日本語の「い(い)え」と音の順序が逆というのも面白いです。

本職とは言いかねるのですが日本語教師であるため、その土地の言語に興味をもつ傾向があります。

フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語。フィンランドとスウェーデンが隣国同士であるがゆえに、そのふたつが同じ流れから来ているかというとそうではなく、フィンランド語はウラル語族でエストニア語、スウェーデン語はインド・ヨーロッパ語族で英語やドイツ語と近似性があります。

またフィンランド語は膠着語である点が日本語と共通しています。膠着語とは “ある単語に接頭辞や接尾辞のような形態素を付けることで文法関係を示す” タイプの言語類型です。

シーズン3

シーズン1・2同様、扱う事件によっていくつかのパートに分かれています。「ヒューマン・ステイン」(エピソード1)、「野獣人間」(エピソード2~3)、「息子たちと恋人たち」(エピソード4~6)、「鏡のなかの貴婦人」(エピソード7~8)、「チェスの話」(エピソード9~10)という構成。ただしシーズン3では、シーズン1で起きた事件の流れを汲む展開も用意されています。

「ヒューマン・ステイン」(エピソード1)

カリの妻ポーリーナは脳の腫瘍を摘出する手術を受けます。腫瘍の全摘出ができず状況は深刻なようです。レナはロシアへ行ったっきり身を潜めています。彼女の娘カティアはラーコネン兄弟がカリ宅に立てこもった際、兄バルデクに発砲した件(S2・E9~10)で裁判にかけられています。

このエピソードは特別な位置づけにある挿入話。シーズン1のエピソード1で描かれた目や口を縫われた少女の遺体。その生母の逮捕という中央警察(NBI)時代のカリが担当した事件。彼の妻ポーリーナの脳腫瘍の治療に伴いラッペーンランタへ引っ越すことにしたいきさつ。

今までざっくりとしか明かされていなかった部分を描写し、ポーリーナの看取りまでを描いています。過去と現在が去来するため、少女殺害事件や看護学生誘拐事件、ポーリーナの病状の現状を理解するのに混乱を伴いますが、ソルヨネン家の “今” と “かくある経緯” を詩的にまとめています。

【評価】〇+

本作の冒頭で投げておきながら回収されていなかった部分をまとめてくれたのはありがたい。「そして犯人はどうなった?」という部分をこのドラマは詳しく解説しないので、ときに物足りない。カリの妻ポーリーナの死をエピソードの一部としてだけ取り扱うのではなく、美しき葬送となるよう表現しているところがよいと思った。

「野獣人間」(エピソード2~3)

妻ポーリーナを失ったカリと娘ヤニナはふたりの生活をスタートしますが空虚感を埋めることができません。レナはフィンランドへ戻りラッペーンランタ警察で働いています。レナの娘カティアは社会奉仕活動をしています。ニコがタイナを引き継ぎ重犯罪調査班(SECRI)を率いています。仲間たちはカリにゆっくり休んで欲しいと思っていますが、彼は早々に現場復帰しようとします。

ネズミに内臓を齧られた男の遺体が雪の路上で発見されます。拷問による死と思われます。被害者には双子の兄弟がいました。兄弟は素行において正反対であり、加害者は間違った人物を死に至らしめたとも考えられました。切断された女性の遺体も発見されます。エラ・ラウニオという看護学生でした。見せしめ的な殺し方をされた遺体がさらに発見されます。発見現場を結んだところにあるのはカリと因縁のある人物の家でした。危険はやがてカリの娘ヤニナにまで及びます。

【評価】〇+

シーズン1のエピソード10~11(「秘められた狙い」)とつながっている。エピソード8~9(「湖底の女」)とも関連がある。シーズン3でシーズン1の続きの話となるといろいろ思い出さなくてはならない。両者の間隔をもう少し縮めて欲しかった。ストーリーは面白い。

「息子たちと恋人たち」(エピソード4~6)

カリの娘ヤニナはロベルト・デガーマンを介して知り合ったギタリストのヤルッコと交流を深めます。依然としてカリとヤニナの父娘は噛み合いません。母ポーリーナの死以来、ヤニナは気難しさを増しています。レナの娘カティアは事件の起きる高齢者施設で働いています。重犯罪調査班(SECRI)ではニコが調査班の存続に危機感を抱きストレスを溜めています。

高齢者施設に入居していた老人ヘンリック・リンドフォルスが殺害されます。弾丸ポーチを口に入れられていました。彼は狩猟クラブに入っていました。

息子が3人おり、ハリ(スキンヘッド)、エリック(あごひげ)、アンティ(シャープな顔)。またロッタという若くて美しい看護師の恋人がおり、周囲からは “金目当て” と思われていました。彼女はヘンリックの息子エリックの幼馴染でもありました。息子たちは死んだ父親のことが好きではなかったようです。

【評価】◎

3兄弟と死んだ老人の若き恋人ロッタが、警察に対してそれぞれ嘘をついていることが判明していく辺りから面白さが増していく。ヤニナがとっても面倒な女に変化していて、観る者としては少々疲れる。ただし本エピソード中で彼女が歌う “Closer” は素敵(イントロの同曲を歌っているのは別の人)。

「鏡のなかの貴婦人」(エピソード7~8)

自分の別人格なのか、故人との通信なのか、死んだポーリーナからのメッセージを受け取って自分の行動や推理を見直すカリ。愛する人を立て続けに失い、荒ぶる女王になっているヤニナ。一方、高齢者施設で働きながら勉強しているカティアは懐の深い女性へと変化しつつあります。デガーマン社内部では過去の暗部に取り組む動きがみられます。欧州刑事警察機構のハクセンが重犯罪調査班(SECRI)の評価を目的とした視察にやってきます。

プールのシャワー室で水泳コーチのマイヤ・コポネンの遺体が発見されます。背中の傷跡、体勢等が独特で、残された痕跡等も何かを象徴しているかのようでした。彼女の母親は「娘の死は自分のせいだ。娘は母の罪を背負うと教団の説法者ラウリラ・マルクスが言った」と証言。彼によればマイヤは真面目な青年たちを誘惑していたとのこと。マルクスは規律に厳しい人物で職業は技師でした。第一容疑者の死により事件をクローズしようとする重犯罪調査班(SECRI)リーダーのニコ。しかし捜査官カリは違和感をもちます。

【評価】◎

ホラーやミステリーにいろいろあれど、一番不気味なのは宗教団体、極端な思想、独善であることが再確認できる。それらが人をさらに歪め追い詰める。このシリーズは “ただのサスペンスドラマ” に過ぎないが、事件そのもの以外の細部を観ていくと “かなり含蓄がある” 点を私は評価している。それはそれとしてヤルッコはよくヤニナと付き合っていられるね。

「チェスの話」(エピソード9~10)

重犯罪調査班(SECRI)は解散の危機にあります。レナは進退に際してロシアとのコネクションを探ります。捜査官の娘たちも成長し巣立っていきます。

ミッキ・アホラ(ロベルト・デガーマンの妹アンネリの夫)は病院の小児病棟へ行きます。娘ユリアを見舞う体ですが、別の少女の個室へ足を踏み入れ、何か別の意図があることを感じさせます。彼の妻アンネリはデガーマン社の不明瞭な化学プラント事業について調査を進めています。

入院していたラッセ・マーサロの娘キアが死に、彼の今後の動きに注目が集まります。ラッセ・マーサロは、S1・E10~11/E8~9、S3・E2~3に登場するラスボス的存在です。

その直後、ある地区を中心に胃痛・震え・鼻血を伴う奇妙な症状が集団発生。患者の隔離のために病院は封鎖され、キアの死について捜査中のカリも病院から外に出られなくなります。レナたちが患者の集団発生の原因を探るため、ある地区の水源を探ったところ、デガーマン社が巨額のロシアマネーを引っ張っていた事業計画との接点が見つかります。ニコは重犯罪調査班(SECRI)の存続のため、チームの指揮をカリに任せてハーグへ向かいます。カリが一連の犯罪計画の黒幕と対峙するときがやってきます。

【評価】◎+

妻ポーリーナの死後、カリは彼女と別次元での共働を行ってきたように見える。それはカリの意識の拡大(カリが認識していなかった能力をポーリーナという存在の仮面を通して発揮している状態)と私は解釈している。そこに私自身は違和感をもっていないのでシーズン3も充実の内容と高評価(ドラマではケアの必要なメンタルの病として取り扱われている)。これまでのいくつかのエピソードにおいて既に忘れてしまっていたような事案の回収も行われる。

[ロケ地]フィンランド(ラッペーンランタ)、リトアニア

旅行は人生の大きな喜び(^^)v
ランキングに参加しています。
応援をお願いいたします。
↓  ↓  ↓
にほんブログ村 旅行ブログへ
にほんブログ村