
このシーズンも合同捜査チームはデンマーク、ドイツ、ベルギーの3カ国で結成されます。合同捜査チームのことを “JIT(Joint Investigation Team)” っていうんですね。シーズン1の字幕にはその用語が(たぶん)出てこなかったので、シーズン2のセリフに “JIT” が頻出して戸惑いました。
[JIT(Joint Investigation Team)とは]
欧州連合(EU)加盟国の国内捜査機関が共同で国境を越えた犯罪を扱うために設置される。複数国で並行して行われる捜査と起訴を調整する機能をもつ。EUの司法・法執行協力機関であるユーロジャストやユーロポールによって支援される。
JITの運用条件はEU理事会決議に基づく協定に定められているが、彼らの活動はJITを主導する加盟国の国内法によって規定されている。
各捜査機関や事件の舞台となるエリアは、シーズン1と若干の違いがあります。シーズ2では、事件の多くはデンマークとドイツの国境付近で起こります。
[シーズン2の各捜査機関の拠点/合同捜査チームの主要メンバー]
- デンマーク:コペンハーゲン/ネリー・ウィンテル(コペンハーゲン警察本部/JITのリーダー)
- ドイツ:ハンブルグ/グレゴール・バイス(ハンブルグ警察)
- ベルギー:ブリュッセル/ポーラ・リーケンズ(ベルギー情報機関の中東担当)
このシリーズは、捜査メンバーを含む各国の人たちは現地で使われている言語を話します。JITの人たちも同様で、合同で動くときは異言語話者間における意思疎通のために英語で話します。
したがってシーズン1と2では言語が一部異なります(例えばベルギー。同じ国でも都市が違うと話す言語も違う)。その点が、舞台をヨーロッパとする本シリーズの特徴のひとつであるらしいのですが、日本語話者にとってはあまり重要でないかもしれません。
社会問題を強く意識したシーズン1よりはエンタメ寄りな感じがしました。世界各国の視聴者における評価はシーズン1のほうが高いようです。
導入部あらすじ
デンマーク南部の湿地帯マシュファーム。雨のなか、難民支援施設ペンション・ヴェンクの屋外で作業をしていたボブ・ケルナーは “ファリス” と名乗る男、彼のガールフレンドである “マルー” に出会います。「イギリスへ向かうエスビアウ港で警察に止められた。この場所はFacebookで知った」と経緯を説明。シリア出身と聞いてボブは逡巡しますが、彼らを受け入れます。
マルーとファリスはそれぞれ2枚の装飾版を、腹部にラップで巻くようにして運んでいました。それらは価値あるシリアの芸術品 “イシュタルの庭” でした。
ふたりが身を寄せた難民支援施設が何者かによって襲われます。6人がライフルで撃たれ、1人が狩猟用ナイフで刺され、マルーと施設運営者ボブ・ケルナーは行方不明となります。監視台に隠れて様子を窺っていたボブはデンマーク警察のネリーによって発見されますが、直後に何者かによって射殺されます。犯人は赤い車で逃走します。
その後、マルーは別の赤い車の女性によって助けられ、JITのメンバーは空からの写真によって事件現場周辺の湿地帯に “かぎ十字” が描かれていたことを知ります。
息子と共有できる時間を確保できるライフワークバランスを望んでいたはずのネリー(デンマークの捜査責任者)は、結局ワーカホリックな動きをすることとなり、ペンション・ヴェンクの地下に隠された部屋ともうひとりの遺体を発見します。
上記あたりが初期設定として用意された伏線です。
登場人物
3都市合同捜査チーム
- ネリー・ウィンテル:コペンハーゲン警察本部所属。7人が殺されたマシュファーム事件の捜査責任者。シングルマザーで息子はバスター(11歳)。息子との時間を大切にするため、プライベートな時間を確保したいと思っている。かつてはアフリカにおける国連の安定化ミッションに従事。デンマークに戻ってきたばかりらしく、息子とともに両親の家に居候しているようだ
- グレゴール・バイス:ハンブルグ警察本部の刑事。現在の妻はバーバラ。シルケ、レオン、ベンという子どもたちがいる。前妻はエレナ。エレナとの間の娘クラウディアは17歳で刑務所帰り(どちらかというと社会運動に関連した罪を重ねている模様で反権力/反体制)。エレナのほかにもうひとり、前妻が存在する(子どもはひとり)。グレゴールはたぶん軽率な男なのだろう
- ポーラ・リーケンズ:ブリュッセルの情報機関のメンバーで中東担当。合同捜査においてはベルギーエリアの司令官。オーガニック野菜のビジネスに関わっている恋人はトーマス。ふたりして野菜みたいなカップル
警察関係者/協力者
コペンハーゲン警察本部
- ヘニング・シュルツ:ネリーの上司で警視正
- カーステン・ホルム:マシュファーム事件を捜査する現地警官
- ティナ・B:現地警官
- トーゲ&ケニー:現地警官
- ヘルガ:事件の通報者
- ギセラ・ヘマー:国際博物館会議(ICOM)のドイツのメンバー。マルーが落とした装飾版の1枚を警察から持ち帰る
- ラミズ・マラッシュ:シリア人でギセラに同行した同僚
- ジュール:マルーの主治医
- アル・ジワイド:シリア政府代理。マルーの身柄引き渡しの件でやってくる
ハンブルグ警察
- バスティアン:刑事。括りとしてはJITのメンバーだが、ドラマではサブの位置づけ
- サビン:刑事
- アドラー:ハンブルグ民族学博物館の専門家
- アレックス:警官
ベルギー情報機関
- ヴァン・デル・ブルグ:ユーロポールとの窓口
- アクセル:情報機関の捜査官
- ヤン:ローラの同僚。ローラの判断ミスを被ることがしばしばある
- マルワ・ハッサン:ポーラの情報源だったが、2カ月前に姿を消す
- トミー・シュミット:オーストリアで活動する捜査官
デンマークの人たち(警察関係者以外)
※ あくまでも「その場面において、その土地にいた人たち」であり、出身や本拠地と一致しません
事件当時、難民支援施設にいた人たち
- ボブ・ケルナー:ドイツ国境に近いマシュファームにあるペンション・ヴェンク(難民支援施設)運営者で、難民の密出国を手伝っていた。ドイツ国籍。人身売買の罪でドイツ警察によって8年前に逮捕された。6年前に刑期を終え、結婚後にデンマークへ移住。ルディというザンクトパウリのレーパーバーンを拠点とする弟がいる。「ザンクトパウリはこういう所」の参考ドラマ ⇒ 事実に基づく売春ビジネスの物語-ドラマ「ルーデン~歓楽街の王者~」
- アグネス・ケルナー:デンマーク国籍。ボブの妻。ライフルで撃たれた
- マルー・バルキリ:シリア人。父はシリアの博物館長だった。4枚の金の装飾板(フリーズ)からなる “イシュタルの庭” を、恋人ファリスと手分けしてイギリスへ運ぼうとしている
- ファリス・アルノー:マルーを伴って支援施設を訪れた男。彼女の恋人
- マルワ・ハッサン:行方知れずになっていたベルギー情報機関の情報源。イラン系ベルギー人でモーレンベーク(移民出身者が多く住み、テロ事件関与者もいるエリア)出身。カリフ連合のコインを持っていた。ライフルで撃たれた。父はカルバン、母はサレー
- ハリム:マルワといた男。ライフルで撃たれた
- オルガ・デュー:殺害された7人のうちのひとり。狩猟用ナイフで刺された
- あと2人の人物:ライフルで撃たれた6人のうちの2人(たぶん男性)
その他
- ヘレ・ニールセン:ホイア在住。マルーを助ける赤い車の女性。リサイクルショップで働いている
- モルテン・ソレンセン:ヘレの友人(?)。ウザいクズ男でレイシスト
- サイード・ガブール:「モロッコから来た」「野鳥観察家」と語るシリア人。“フィリップ・ローラン”、マルーの父 “オルハン・バルキリ”、“アミール” 等を名乗る。妻はヤラ、息子はマフムード、娘はヤスミン。冷徹な殺し屋なのに、気の強そうな妻の尻に敷かれている
- ラスムス・ブレッズガード:デンマークテレビのキャスター
イギリスの人たち
- マリアム・バルキリ:在イギリスの不法滞在者。マルーの母。夫オルハンはシリアで射殺された
- アルバート・グリーブス:マリアムの夫の友人で、彼女たちの支援者。大英博物館所属の専門家
オーストリアの人たち
- ルーシー・マイヤー:ウィーン在住の美術商。振る舞いがわざとらしい女性(あえてクサめに演じているのかもしれないが、わざとらしさしか印象に残らない)。夫はティボスはギャラリーを経営。娘ベラは4歳
- アダムス:ルーシーの父が慕っていた実業家。とある芸術品の入手をマイヤー夫妻に依頼している。シュタイヤマルクの豪邸住まい。財務顧問はニック・タラモナ
- フランツ・パチャー:マイヤー夫妻の依頼で動く仲介人。実は元刑事
シリアの人たち
※ あくまでも「その場面において、その土地にいた人たち」であり、出身や本拠地と一致しません
- サファ・ハッサン:イラン系ベルギー人。マルワの妹。カリムとシリアへ行った後、デンマークのペンション・ヴェンク(難民支援施設)の地下で遺体となって発見される
- カリム・ダジュウ:サファの恋人。カリフ連合の民兵を志願。隊長の指示に従っている
- ダハム:骨董品を換金する役割の人物。嘘がバレて制裁を受ける
- ウムト・チャルック:カリフ連合の入手した美術品の取引相手。トルコ人でオーストリアの市民権がある
- ムハーバラート:シリアの情報機関で、シリア人民に対する監視・抑圧を行った
ベルギーの人たち(警察関係者以外)
- オマー&アブドゥル:モーレンベーク(移民出身者が多く住み、テロ関与者もいるエリア)のアジトにいる男たち
- タレク&ラシャ:アレッポ(シリア)からの移民(難民)の子。叔父のハニフはドイツにいる
ドイツの人たち(警察関係者以外)
- ピーター&ウルリケ:クランクスビュルにあるペンション・ミュラーの経営者
- リナ・エルバーハーター:ハンブルグの病院の医師。マルーの母マリアムの知人
- ロイ:ハンブルグ中央駅付近でサイードに間違われる不法滞在者
感想・メモ:登場人物の魅力が弱いところが残念
私はもともと登場人物に入れ込まないほうです。それにしても人間としての魅力に溢れたキャラクターがほとんどいないドラマだと感じました。ポーラを補佐するヤンは好人物だと思いましたけれど。
下記の小見出しを見るとネガティブなことばかりが目立つ作品のようですが、それでも飽きさせない展開で平均点以上の出来ではあったと思います。
合同捜査チームの頑張りはすごいのだが…
グレゴール(合同捜査チーム)のキャラ設定がよくない
刑務所から出所したばかりの、前妻との間の娘クラウディアを現在の妻バーバラに押し付け、合同捜査チームの女性たちに対しては飲みに誘ったり、宿泊している部屋に酒とグラス持参で押しかけたり。不躾/無礼な質問をためらうことなく、投げかけることもします。
バーバラはピアノを華麗に弾いたり、何か著述のような仕事をしていたりとクリエイティブな人物であるようなのですが、その夫であるグレゴールの野卑さが好きになれませんでした。
刑事としてどこが高く評価されているのかがわからないし、大人の男性としても気持ち悪いし、家庭人としても責任ある態度の人と思えないし。職業人としても家庭人としてもアンバランスなんですよね。それが魅力につながっていれば「よし」なのですが、そうでもない。
ということで、あのキャラ設定は私としてはマイナス評価でしかありませんでした。
マリアム(マルーの母)って勝手だよね
そもそもイギリスにいるのも不法滞在なのに、娘マルーを探しにデンマークへ行くと譲らず、支援者のアルバートは仕方なくそれを手助けするわけです。
その後アルバートがトラブルに巻き込まれたら、その場から逃げ、途上で知り合ったシリアの子どもたちとデンマークに向かうという流れ。
振り回されたアルバートが気の毒であるし、たまたま出会った移民(難民)の子どもたちと行動を共にするというのは気ままな自由人とも言えますが、ただの “勢い任せの迷惑おばさん” に見えました。脇が甘く、殺し屋の監視の網のなかで軽率な行動をとるし…。
自分自身の行いによって支援者アルバートや娘マルーが危険な目に遭ったことに無自覚で、あまり役に立つこともなくイギリスへと戻ります(たぶん公的機関の手配でドイツを出国。自分で足代を支払っていない)。
置かれている状況(難民/娘が行方不明)から考えたら仕方ないのかもしれませんが、他者に対して要求が多く、感謝の足りない人。
似たような “おじさん” が多すぎる
警察関係者に似たような記号的要素をもつ “おじさん” が多すぎるんですよね。
- 坊主頭もしくはスキンヘッド + 短めの髭
- 額広めで生え際M字気味 + 長い顎髭
上記ふたつのタイプがわらわらと出てきます。制服を着たり、制帽を被ったりしていると、ますます識別しがたくなります。
西洋人の目には、すべて明確に違う人として見えているんでしょうか?
各国/各地を行き来しすぎてアタマが混乱
これは私だけかもしれません。地理にとても弱いので、JITのメンバーやカリフ連合のメンバー、殺し屋などが文字通り、ボーダーレスに動き回ることで「今のここはどこなのか?」がわからなくなっていきます。
JITのメンバー3人(ネリー/グレゴール/ポーラ)がリアルに顔を揃える場面も多々あり、都度「そこはどこか」「誰のホームで、誰と誰のアウェイなのか」を理解する必要が生じます。
シーズン1(2015年作品)のほうが、なぜかコロナ禍みたいなリモートミーティングが多く、複数の国のメンバーが一緒に動くことはあっても、それぞれのテリトリーがわかりやすかったといえます。またシーズン2では後方支援の警察関係者の数が多かったことも、若干のノイジーさを作り出していたように感じました。
事件捜査にあたる者たちが抱える孤独とやるせなさ
シーズン1と2に通底するものとして、描きたかったことのひとつはコレでしょう。
時間や場所に境目のない状況で捜査に当たる者たちの「家族を求めつつ、家族から離れることを強いられる」「よき家庭人でありたいけれど、家族が求めるような役割を果たすことができない」「いっぽうで仕事に熱中している間は家庭の問題を忘れられる自分がいる」ことの悲哀が伝わってきました。
その悲しみや孤独感、ときに自分に対する嫌悪感を理解して受け止めることができるのは皮肉にも家族ではなく、捜査で苦楽を共にする仲間たち。彼らは “一時的な疑似家族” という要素をもっていました。
「どんな職業/人物であろうと、家族ってそんなに簡単じゃないよね」という意味で、リアリティを感じられた点はよかったと思います。
しかし、だ。
ネリーとグレゴールが一夜(?)の関係を結ぶのはいただけない。同僚刑事サビンを失って傷心のグレゴール、どうしても仕事中心の生活になってしまって思うような関係を息子と作れないネリー。
空虚さ、絶望感を互いに埋め合うのって珍しくないのかもしれないけれど、グレゴールはそれまでにも複数の女性に対して物欲しげな態度を見せていたし、過去と現在を合わせて3人の妻と5人の子どものいる中年男。若い男女なら勢い任せの肉体関係もありそうですが、くたびれた助平オヤジと深い間柄になってどうするの?と思いました(恥ずかしさのあまり、墓場までもっていくレベルの出来事です)。
ただし、ふたりの刹那的な関係には別の意味があり、恐らくですが、シーズン1で触れきれなかった小物語の伏線を回収していたのだと推察します(的外れかもしれませんが)。
つまり、シーズン1に登場したデンマーク警察の警視正ハーラルとドイツ連邦刑事庁の警視ジャッキーが婚外子をもうける間柄になったのは、このタイプのくつろぎと安らぎを共有でき、職務を通じた互いの労苦に敬意を払える相手だったからなのでは。それを語り切れなかったので、シーズン2のお二方で描写したのではないかと思いました。
ネリーはドラマ「私たちが隠していること」のセシリエ役
デンマークのドラマ「私たちが隠していること」(2025年)で、ネリー役のマリー・バッハ・ハンセンはフィリピンからオペアを迎える裕福な家庭の妻セシリエを演じています。

そしてセシリエの隣人であり、成功した実業家の後妻カタリナを演じていたのがダニカ・クルチッチ。彼女は「チェスナットマン」(2021年/2026年)でコペンハーゲン警察のナイア・トゥーリンを演じています。

隣人であり、親しい友人という設定だったふたりが、別々のドラマでどちらもコペンハーゲン警察の刑事を演じているのは面白いと思いました。
