最近の作品ではありません(2015年公開)。しかしAmazonプライムビデオで配信されるようになったのは比較的近年(2024年)であるようだったのと、視聴していて悪い意味での古臭さもなく、“風呂敷を広げ過ぎ感” はあっても面白かったので記録として残しておきます。
いわゆる猟奇連続殺人事件ものかと思いきや、国際問題や人権問題との関わりが浮かび上がっていき、意外にも社会派テイストのある作品でした。
連続殺人が起きる3都市とはデンマークのコペンハーゲン、ドイツのベルリン、ベルギーのアントワープ。これらの国はドイツを挟んで接する位置にあり、殺人現場としての4カ国目となるオーストリアもドイツの隣です。
リトアニアからの移民の話題も出てきますが、同国は陸路ならばポーランドを横切らないと、それらの国々へ行けない位置にあります。不法に人々を連れ出すならば、船を使うほうがシンプルな道程になるのかもしれません。
導入部あらすじ
ひとりの男が車で3カ国に散らばっている3人の娼婦を、3日連続で訪ねます。車のルームミラー辺りに女性の顔写真の入ったペンダントと十字架をぶら下げています。
[訪問を受けた3人の娼婦]
- [木曜日の夜]ドイツのベルリン郊外。トレーラーで商売をする売春婦マリア・シュミット(ドイツ人)
- [金曜日の夜]ベルギーのアントワープ。高級ホテルのバーを拠点とする高級娼婦のグレタ・アルロバ(リトアニア人)
- [土曜日の夜]デンマークのコペンハーゲン。売春宿に5歳の娘と住み込んでいる娼婦バイダ・アロミス(リトアニア人)
3人の娼婦は彼(ジャン・ルイ)を知っており、急な来訪に戸惑います。しかし、なかには「いつかやってくると思っていた」と発言する者もいました。
その後、それら3人の女性は遺体となって発見されます。共通していたのは左目を銃で撃たれ、右手の指が切断されていたことです(マリアは小指、グレタは人差し指、バイダは中指)。
この3つの事件が繋がっているとみて、ユーロポールは3カ国の合同捜査チームを結成することにします。
[合同捜査チームの主要メンバー]
- デンマーク:ハーラル・ビョルン(デンマーク警察の警視正)
- ドイツ:ジャッキー・ミュラー(ドイツ連邦刑事庁-BKA-の警視)
- ベルギー:アリシア・ファービーク(ベルギー連邦警察殺人課の警部)
- ユーロポール(情報提供や調整を行う役割/捜査は行わない):ウィリアム・マクリーン
デンマークの被害者バイダ・アロミスの所有物と思われる写真には、彼女を含めて女性が4人写っており、1人を除いて一連の事件の被害者であることが判明。被害者は相互に見知った仲であったと考えられました。
上記あたりがドラマのスタート時の伏線で、そこから派生して立体的な物語が生まれていきます。
登場人物
3都市合同捜査チーム
- ウィリアム・マクリーン:ユーロポール(欧州刑事警察機構)に所属。情報収集や共有が任務
- ハーラル・ビョルン:デンマーク警察の警視正。捜査では人道に配慮するタイプ。昨年結婚した妻リブ・エリクセンは妊娠中(彼女は精神科医と思われる)。スイスのピッツ・パリュで休暇中だったとき、ユーロポールから呼び出しを受ける。山が好きで登攀が得意。それが事件捜査にも活かされる
- ジャッキー・ミュラー:ドイツ連邦刑事庁(BKA)の警視で36歳。夫エリアスと2人の娘(リア/リリー)と暮らしている。家庭にいる、もうひとりの同居女性サリはオペアと思われる。夫エリアスは妻ジャッキーとハーランの過去の出来事に気づいているか、ふたりの関係を勘繰っている。エラ・クラウスは娘の学校の教師。娘へのプレゼント(犬)の入手に関与したのはズージ・ユンゲ(ベルリン芸術大学教授)
- アリシア・ファービーク:ベルギー(の、たぶん連邦)警察の警部。見るからに猛進しそうなタイプ。34歳で独身。素行のよくないフィフィという妹がいる。母ヴィヴィアンはアルコール依存症
警察関係者/協力者
デンマーク警察
- キット・エクダル:警察本部でデジタル捜査担当としてハーラルの補佐をしている。ヴィラスという夫からDVを受けている
- フィン・モースガード:ハーラル・ビョルンの同僚刑事
- エルス・ホイビー:フィンと動くことの多い刑事
ドイツ連邦警察
- ナターシャ・シュタルク:ジャッキーの助手。警察署長ライナー・シュタルクの娘。どうでもいいことだがレズビアン
- エバ:警察官
- ギュンター・シュトルム:科捜研っぽい人。たいていは白衣を着ていて “退勤時間” までに依頼された業務をこなす
- マックス・リッター:潜入捜査官。ジャッキーの情報源。リトアニア人ギャングであるマリウス・ルカウスキスの運転手をしている
- グレイ:イタリアンレストラン “piccola stella” の給仕
ベルギー連邦警察
- フランク・エアース:刑事。アリシアの助手を務める
- ステファン・ペルネル:フランクとアリシアの上司で捜査判事。6年前のアルマンド・クラース事件の捜査主任。野村沙知代的な濁り&滞りを感じさせる顔つき。エディトは彼女の家政婦
- アート・デクルト:元検視官。アルマンド・クラース事件を担当
- ゲンマ・ヨーカー:国家保安部の人
- カル・B:グレタとその母リタの活動拠点であるアントワープの高級ホテル “ラマダ・プラザ” のバーテンダー。アリシアの情報源
オーストリア連邦警察
- オスカー・コーベルガー:ザルツブルクのコブラ機動部隊の守備隊長。ハーラルの協力者。コブラ機動部隊とは対テロ特殊部隊で、隊員はオーストリア連邦警察から募集され、選抜される
- デニス・ダンクル:オスカーと知り合いのザルツブルクの保安官
主に3つの殺人事件の周辺人物
デンマーク
- オードラ:リトアニア人娼婦であるバイダ・アロミスの5歳になる娘
- シュガー(スウィート):バイダ・アロミスの在籍した売春宿の娼婦(兼管理者)。本名はハイジ・ハンセンで32歳
- ビリー・ニールセン:売春宿(建物所有者は外国の投資銀行傘下の不動産会社)の管理責任者。不法労働者を劣悪な環境で酷使してのアジア料理の宅配もしており、使用する鶏肉の屠殺場のあるフォルスター島もアジトのひとつ。トム(とフィンはハーラルに電話字幕で伝えていたが、エンドロールの配役から調べるとロバートが正しいと思う)は弟
ドイツ
- ヤンケ:トラック運転手。トレーラーを訪れた「金歯の男」の目撃者
- マリウス・ルカウスキス:リトアニア人ギャング。ポツダム在住で元ポン引き。元妻ダリアとともに東欧からの人身売買を行って大きな財を成した。ビアンカという娘がいる。娘の婚約者はプロイセン伯爵の家系にあたるカール・フリードリヒ・セプティマス
- イリス・ガブラー:富裕なジャズシンガー、かつ被害者マリア・シュミットの母。夫はロランド・アレント。マリア殺しの犯人逮捕につながる情報の提供に15万ユーロの懸賞金を用意する
- ブルーノ・コープマン:マリウスの警備主任(白髪の男)。国籍はベルギー
- カル・シュペングラー:マリウスの部下(マックス・リッターの正体を調べた男)。デジタル技術に強い
- ゲルノト:ルカウスキス家の執事
ベルギー
- ジャン・ルイ・ポクラン:3人の娼婦(マリア/グレタ/バイダ)を車で訪問した男。逮捕歴のあるベルギー人。ジャーナリスト、小説家でもある。彼を担当している看護師はアリ
- リタ・アルロバ:グレタの母。元は娼婦で、リトアニアからベルギーにやってきた
- アルマンド・クラース:6年前(当時25歳)3人の被害者と同じ方法で、ジャン・ルイの部屋で殺されたベルギー人娼婦
- テオ・ヤンケ:マリウスによって、アントワープで用心棒として雇われていた。妻ジゼラ、彼女の連れ子ルル(母親に似ず超かわいい)と暮らしている
- マシャ:マリウスによって縫製工場で奴隷労働を強いられ、搾取されている女性。病気の妹エレナがいる
オーストリア
- ガブリエラ・ビンチ:ドイツのマリアに絵ハガキを送った人物。オーストリアで暮らしている。かつては写真に写っていた4人の娼婦の元締めだったが、ジャン・ルイの手助けをするようになった
- マイキー・ジョーンズ/ギャビン・ジョーンズ:依頼を受けて人を襲ったり、殺したりする稼業の人たち(どこの人たちかは知らないが、現れたのはオーストリア。兄弟ですかね)
感想・メモ:面白いが不要な伏線もある
ネタバレを含みます。またネタバレと言いつつ、私の解釈そのものが間違っているかもしれません。
意外に複雑な事件とその背景
誰が誰を殺したのか?
「あの人が殺したんだろうと思えば、真犯人は別人」というのがいくつも出てきます。
●3人の娼婦が殺されたことについて、ジャーナリストのジャン・ルイの犯行が疑われる ⇒ ジャン・ルイが殺人犯とされた過去の事件(真犯人はマリウス・ルカウスキス)を模倣して、彼の仕業に見せようとしていただけだった
●ジャン・ルイの犯行でないなら、誰が何のために連続殺人事件を起こしている? ⇒ 基本は、今後ますます事業家として発展して大金を手に入れようと目論んでいる、悪党マリウス・ルカウスキスの過去の悪事を隠すため。でも実行犯は彼じゃない。マリウスから資金を引っ張り続けるために、彼の社会的生命を長らえたい人たちがいる
[被害者1:ベルリンのマリア]
姓を変えているものの、マリウスが懇意にしているジャズシンガーの娘。14歳当時、両親の友人マリウスにレイプされた。心身の傷によって大学から去り、転落の人生へ ⇒ マリウスの警備主任ブルーノ・コープマン&マリウスの元妻ダリアに脅されて、マリアの売春を管理していたポン引きのテオ・ヤンケが手を下す
[被害者2:アントワープのグレタ]
マリウスの姪。彼の重大なる秘密を知っている ⇒ 殺しの首謀者は元妻ダリア&警備主任ブルーノ。実行犯はブルーノ自身
[被害者3:コペンハーゲンのバイダ]
マリウスの子どもを産んだ。それで揉めてマリウス&ダリアは離婚 ⇒ 強欲なダリアと、彼女から利益を得ようとしている愛人ブルーノにとってはマリウスの婚外子は歓迎できない。売春宿の娼婦兼管理者のシュガー(スウィート)が実行犯
ベルリンとコペンハーゲンの被害者(マリア/バイダ)はそれぞれ「①その土地の人」かつ「②売春の元締め的な人物」が実行犯です。
それらに比較してわかりにくかったのが、ベルギー(アントワープ)の被害者グレタのケース。実行犯のブルーノ(マリウスの警備主任)はベルギー国籍なので、いちおう「①その土地の人」に該当。しかし、あわよくば “マリウス帝国” を横取りしようとマリウスの元妻ダリアと共謀しているなら、ブルーノ自身が殺人を犯すのはリスキーだったのでは。殺しを依頼できる人が、ほかにいなかったのかな。
3人の娼婦以外については以下の通り。
- オーストリアでジャン・ルイと一緒にいたガブリエラ・ビンチを殺して指を切断したのは、ふたりのジョーンズ
- テオ・ヤンケと、その義理の娘ルルを殺したのはブルーノ
- イリス・ガブラーに会いに、レストラン “KaDeWe(カーデーヴェー)” へ向かったジャッキーを殺そうとしたのはセプティマス。教唆はロランド・アレント
- ダリアを殺したのはイリス・ガブラー
3都市合同捜査チームメンバーの家庭事情の必然性
デンマーク警察のハーラル・ビョルンが、ドイツ連邦刑事庁の既婚者ジャッキー・ミュラーとかつて不倫関係にあったという設定は、比較的どうでもよいことだった気がします。
ジャッキー襲撃犯として夫エリアスを捜査線上に浮上させたり、婚外子問題を抱えている夫婦の複雑な関係性を描写したり、事件捜査という職務の閉鎖性や特殊性を表現したり、最終的に彼女が家庭から追い出されることでキャリアを追求する道がさらに確定的になったり、ということのために機能した面はあったと思います。
ハーラルの妻リブは精神科医のようですから、夫とジャッキーの深い因縁に気づいていたことでしょう。妊娠中の妻をひとりにして各地を飛び回り、仕事に情熱を注ぐ夫に対する苛立ちをリアルに伝えるにあたって、仕事仲間がかつて恋仲だった女性というのは火に薪をくべるかのような格好の設定だったかもしれません。
微妙な愛着、寂しさ、喪失感みたいなものを抱えつつ、何かを共有する間柄というのも大人のあり方として味わい深いとは思いました。
ベルギーのアリシアはアルコール依存症の母、売春で稼ぐ妹という家族構成。つねづね不思議に思うのは、海外ドラマでは破綻した家庭に生まれ育った人物も当たり前のように警察で働き、出世していることです。当人の努力は大変なものでしょうが、身辺がキレイでなくても構わない感じに、社会としての雑さを感じます(家庭環境は度外視して、個人レベルで評価するってことですかね)。
でも本ドラマにおいて家族設定が最も重要な意味をもつのはアリシアだと感じました。彼女は、自分勝手なダメ母ヴィヴィアンを、上司である捜査判事ステファン・ペルネルに投影します。ペルネルが実は女優崩れで、法学教育を受けていなかったというオチは公的機関としていかがなものかと思いましたが、医師免許をもっていないけれど長年医師、運転免許をもっていないけれど長年運転している人はいるので、あり得ないほどまでに現実離れしてはいないのかもしれません。
いっぽうで、ハーラルをサポートしているキットの夫がDV男という設定は不要だったと思います。私は彼女のような顔立ち、カラッとした雰囲気の女性が好きですが、あのような湿度高めのDV男を選択するだろうかと疑問に思いました。彼女の課題(DV被害)から社会的問題(女性の虐待)へと視聴者の関心を広げようとしたのかもしれません。
ジャン・ルイの計画が思いのほか壮大で緻密
恋人殺しの犯人とされ、その6年後に3人の娼婦を訪問したジャン・ルイ。受賞歴のあるジャーナリストでもあり、マリウスや東欧の人身売買について取材やインタビューを過去に重ねてきていました。
当初の娼婦殺しの話からスケールが拡大し、労働搾取や人権侵害という社会問題を扱っていた男を巡るトラブルでもあったことが、捜査の過程でわかってきます。
末期がんで余命いくばくもないなか、成し遂げておきたいことをいかに達成していくのか。ジャン・ルイの戦略は見どころのひとつ。立ち回りを含めて粘り強さのある策士なのです。
最終的にはグレタの母リタも彼の協力者であったことがわかり、マリウスの姉で元娼婦という複雑な立場/境地にある人物が、何を考えていたのかが少し理解できた気がします(⇒ 女性から搾取し続けてきたマリウスを今後悪事を働けない状態に追い込み、かつ彼の命は守る)。
ビアンカとマックスのカップルが印象的
マリウスの娘ビアンカにはセプティマスという貴族出身の婚約者がいたので、正式には潜入捜査官マックスとカップルではなかったのですが、セプティマスより相性がよく、仲睦まじく見えました。
ザルツブルク空港での別れ際、ビアンカはマックスが潜入捜査官であるかを問い、正直に「そうだ」と答えた彼に「手柄をあげる」と言って父マリウスの資金の大半を分け与えます。「少し本気だった」「僕も」。そしてマックスと別れ、上海へと発ちます。
最後の言葉が「でも、あなたは忘れられる」。
彼が潜入捜査官であること、彼のために手柄を作ってやったこと、そして恐らくは1~2回のSEX。それらを忘れる主体はビアンカなのか(「でも、私はあなたを忘れることができる」「私にとって大したことじゃない」等の意)。そうではなくてマックスなのか(「ふたりだけが知っていることも、上海に向かうことも他言無用なのはわかってるよね?」「私のことは忘れてね」という念押し。あるいは「あなたは潜入捜査官なのだから、職務で知りえたこと/体験したことを自分の意思で忘れることくらいできるでしょ?」)。
どちらにも読めるから、日本語って難しい。マリウスの資金の大半をマックスに渡したのも、半分はマックスに対する厚意(一時的でも惹かれた男性だから、職務上の成果を作ってあげたいという気持ち)、半分は取引(警察に「資金は押収したが、ビアンカの行方は知らない」という内容でマックスが報告し、捜査を終結させることへの事前の報酬)という感じがしました。
どれがどのくらい、どうであったとしても、豪胆な女っぷりがギャングの娘というか、若いのにさすが。
ビアンカを演じているのはイェラ・ハーゼ。後年「KLEO/クレオ」で主役(殺し屋)を演じた人。「ザ・チーム」に出演していた頃は「KLEO/クレオ」の時よりずっと幼いながらも、やっぱり肉感的でかわいいです。「KLEO/クレオ」のシーズン3はないんですってね。小耳にはさみました。残念。

マリウスの組織に運転手として潜入していたマックス・リッターは私好み(演じている人というよりはキャラのほう)。ボスであるジャッキーの “いいオンナっぷり” に惹かれつつも実際に大人の関係に発展することはなく、潜入先のギャングの娘ビアンカの若くて天衣無縫なオーラに刺激されつつも真剣な関係に踏み込めるわけでもない。そんな潜入捜査官としての “寸止め人生” を “シュッとした姿かたち” で演じています。彼は声もいい。演じているマルク・ベンジャミンの主戦場は映像作品というよりは舞台のようです。気のせいか、どことなくゲイっぽい感じはありますね。
ちなみにビアンカとは無関係ですが、イリス・ガブラーとロランド・アレント夫妻のビジュアルが、朝丘雪路&津川雅彦夫妻にゆる~く見て近似値。
気が向いたら、「ザ・チーム」のシーズン2も観てみようと思います(チームのメンツはシーズン1と2で異なるみたいですが)。
たまたま観た、昔のドラマ作品について長々と熱く語ってしまいました!
