この年末年始にいろんな映画・ドラマを観ました。「これは良作!」と思うものも、わざわざ取り上げて書く気になれないものもありました(もう少し温めておくと自分のなかでいい感じに発酵するかも)。
そんななか休暇の終わりに観た「ザ・キャプチャー 歪められた真実」(原題 “The Capture” )は面白い作品でした。同作は既にシーズン2までリリースされています。現時点でNetflixで観られるのはシーズン1のみ。
元兵士ショーン・エメリー役のカラム・ターナーは映画「浮き草たち」やドラマ「戦争と平和」に出演していました。弁護士ハンナ・ロバーツ役のローラ・ハドックは、最近観たドラマ「ザ・リクルート」ではCIAの元工作員マックス・メラッゼ役でした。また本作中盤以降で「どこかで見たことあるな」と思う女性が登場。「殺人を無罪にする方法」でアナリーズを随所で助ける弁護士イブを演じていた人でした。
物語はこんな感じで始まる
アフガニスタンの戦場で捕虜のタリバンを故殺したという国防省の訴えによって有罪となった元兵士ショーン・エメリー。彼は判決を不服として上訴します。リーヴィ(ビデオエンジニア兼放送コンサルタント)が兵士のヘルメットに装着するカメラでは画像と音声にタイムラグが生じることを証言。それにより証拠不十分でショーンの有罪が取り消されます。
ショーンを祝福するパーティーがパブで開かれます。彼を担当した弁護士チャーリー・ホールとハンナ・ロバーツも参加していました。「ハンナはお前に惚れている」と友人マットにそそのかされたこともあり、ショーンはパーティーから姿を消した彼女を追います。そして弁護士と依頼人ではなく、普通の男女としての再会を願っていることを伝えます。ハンナはショーンと別れ、バスに乗り込みます。その夜を境に彼女は姿を消します。
一方、有能で将来を嘱望されていたレイチェル・ケアリー警部補は、テロ対策司令部(SO15)から殺人課へ異動。事件発生により呼び出されます。男性が女性に暴行を働いて拉致する様子が防犯カメラによって記録されており、顔認識で男性は元兵士ショーン・エメリーと特定されます。解放されたのも束の間、ショーンは再び捕らえられ、被疑者として尋問を受けます。暴行・拉致被害に遭ったとされたのはハンナでした。
ショーンは混乱します。その夜に実際にあったことと、映像に記録されていた一部始終が「途中から」著しく異なっていたからです。それを訴えても取り合ってもらえません。映像は事実であり、証拠として採用されると考えられていたからです。
しかしその後、保安局(MI5)によって、問題の映像は安全保障上の理由に基づき非公開とされます。ケアリーらはショーンが犯人であるという新たな証拠を探さねばならなくなります。一旦解放されたショーン。何を言っても信じようとしない警察の追跡から逃れようとします。
シーズン1の面白さとは
人間による目撃証言や記憶再生は不正確でバイアスがかかっているものです。むしろ映像記録のほうが信じられる事実を伝えていると考えられがちです。
しかし映像を意図的に作り出すことができるとしたら?ネットワークに侵入することで映像を改ざんできるとしたら?何かを隠匿し、無関係な人物を犯罪者に仕立てることができます。
日本でも街に防犯カメラが多く設置されるようになり、セキュリティシステムを導入する家庭も珍しくなくなりました。防犯カメラがあることによって犯罪を抑止し、発生した事件の解決を容易にし、取り調べや起訴までの時間を短縮できるというメリットがあると考えられます。
このドラマでは戦地に赴く兵士もカメラを装着していますし、アメリカの警官などもカメラを装着するようです。
カメラが高水準の性能を発揮し、映像が真実を伝える内容であれば犯罪対策や記録として非常に有効です。しかし、このドラマで描かれているように映像すら自由に作り出せる、それを真実のものと差し替えられる、真実のものとつなげてひとつの物語であるかのようにできるとしたら、非常に恐ろしいことです。
当初は私も「映像が嘘をつくはずはない」という前提でドラマを観ていたため、ショーンにとっての真実と映像の内容の乖離には驚きました。 “グランド・イリュージョン(大いなる錯覚)” のようです。
そして “グランド・イリュージョン(大いなる錯覚)” の舵を取っているのが、治安維持や諜報に関わる “顔を見せることのない人たち” や “陰の権力者” だったとしたら?
シーズン2の展開をまだ知りませんので、シーズン1のみについて言いますとイギリス国内および国際的な諜報や陰謀の存在が匂わされます。
一般人には無縁な出来事のように見えてはいるものの私たちの隣にある “隠された真実” とも感じられる点、それが大きな企みに通じていそうなところがドラマへの興味をそそります。
Netflixでも本作のシーズン2が早く見られるといいですね。「ライン・オブ・デューティー」のシーズン6も。