史実ベースの映画「ダンケルク」は豪華なサバイバル・スリラー

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映画「ダンケルク」(原題 “Dunkirk” )は何度か視聴しています。ゆえに嫌いではありません。しかし「何がいいのか?」と問われるとなかなか言葉にしづらい映画です。

先日、映画「ベルファスト71」について書きました。そしてふと思いました。「ダンケルク」(2017)は「ベルファスト71」(2015)の豪華版なのではないかと。

  • 「ベルファスト71」は北アイルランド紛争がベース。「ダンケルク」は第二次世界大戦におけるダンケルク大撤退(ダイナモ作戦)がベース
  • どちらもイギリス軍の関わる話
  • どちらも結局のところ、主人公クラスは助かるのだろうと視聴者たちは予測。しかし、そこに至るまでのプロセスがブラックボックス状態(←このブラックボックスをいかに表現するかが製作者にとっての最大の課題であり、作品において最も力を入れている部分)
  • もろもろが過ぎ去って後、彼らには帰る場所(故郷や家族)があり、紛争や戦争を経てそれらの位置づけが再定義される

史実は視点を変えると解釈が異なるものです。とはいえ参考までに、ダンケルク大撤退(ダイナモ作戦)の概要を引用しておきます。下記枠内にもありますが、映画においても “小さな船たちの奇跡” とイギリス国内の国威発揚のシーンは、ときに感動的です。

9日間(1940年5月26日~6月4日)に860隻の船舶が急遽手配され、331,226名の兵(イギリス軍192,226名、フランス軍139,000名)をフランスのダンケルクから救出。この “ダンケルクの小さな船たち”(Little Ships of Dunkirk)には民間の船が緊急徴用され、兵を浜から沖で待つ大型船(主に大型の駆逐艦)へ運んだ。この “小さな船たちの奇跡” はイギリス国民の心に深く刻まれ、大いに士気を高揚することとなったが、実際には兵の70%程度は港の防波堤から56隻の駆逐艦その他民間大型船に乗り込み撤退している。

以下は9日間のざっくりとした流れと後日談。

  • 5月27日、ベルギーが降伏。連合国軍はフランス側拠点フランドルを放棄。退却する約50万の兵士の多くがダンケルクに殺到。
  • ドイツ空軍の爆撃により、多くの艦艇が被害を受け、ダンケルク港の水門が破壊された。連合国軍が海上に脱出する手段は小型ボートに限られることとなった。
  • フランス軍2個師団は撤退を援護するために残った。彼らはドイツ軍の進撃を阻止したが間もなく捕らえられた。
  • 6月4日、ドイツ軍はダンケルクを完全占領を宣言。約40000人の兵士が捕虜となり、ドーバー海峡に面したフランスの諸港は全てナチス・ドイツの支配下となった。
  • チャーチルは著書『第二次大戦回顧録』の中で、イギリス空軍(RAF)がドイツ空軍から撤退兵を守る最も重要な役割を担っていたと述べた。しかし霧が深く、撤退兵たちはこの大きな支援にほとんど気づいていなかった。
  • フランスも駆逐艦や巡洋艦を出して脱出を支援した。ほとんどのフランス海軍艦船はドイツ海軍の大型艦艇の出撃に備えて港で待機中であったが、イギリス軍はドイツ軍がこれら艦船を使用できないように爆撃・沈没させようとした。
  • “小さな船たちの奇跡” によりイギリスでは国威発揚、士気が上がる。損害を多く被ったフランスはイギリスに恨みの感情を抱くこととなる。
主にWikipedia「ダイナモ作戦」より

私自身はこの世に “美しい戦争” などない、本来理不尽で醜悪なところに “人の清らかな心” が花を咲かせることがあるだけ、と思っています。したがって “ダンケルクの9日間” が終わって以降の物語の流れ(イギリス国内での国威発揚)に複雑な思いを抱きます。

一方で、私は極めて単純な人間であるので、帰還した兵士たちを称える国民たち、誇り高き祖国と戦争での尊い役割を称揚するイギリス国内のムードにもジーンときてしまいます。そりゃあ、現場の兵士たちは大変ですよ。しかし「いや、ちょっと待て」という気持ちも湧き上がります。何か変な方向へ操作されてはいないかと。

パイロット(トム・ハーディ)の乗機の燃料が尽きて投降する映画最後のシーンは大きな貢献をしながら、あまり注目されることがなかった英国空軍に視線を導き、その献身と高い技能に対する敬意を促しているかのよう。

民間のボートが謎の兵士(キリアン・マーフィー)を救出して後の展開等を鑑みても、本作はサバイバル・スリラーと思われますが、壮大なスケール、戦争映画(史実ベースの作品)としてのツボもきちんと押さえている点が高く評価されたポイントと推察します。

[超個人的コメント&メモ]

  • 高校1年生の夏休みを、私はイングランドのドーセット州にあるウェイマス(Weymouth)で過ごした。謎の兵士を救出したボートがウェイマス付近から出航していたことを知ってとても懐かしい気持ちになった(もちろんフィクションだろうが、実際にウェイマスから出航した船もあったことだろう)。現在もウェイマス港はドーバー海峡を渡るフェリーの港であり、プレジャーボートやプライベート・ヨットの母港である。
    • ダンケルクに向かって出航した民間ボートに乗り組んでいたジョージについて、ピーターが情報を持ち込んだ先が “Weymouth Herald” である。
    • 海上から民間ボートへと救出した謎の兵士ともみ合いになるジョージを演じたバリー・コーガンは「ベルファスト71」に悪役顔で出演している。
  • 英国空軍スピットファイアのパイロットファリアを演じたトム・ハーディ。セットのコックピットのなかで(恐らく)ひとりでお仕事。実際には空にも海辺にも行っておらず、彼の登場シーンは1日くらいで撮影終了だったのでは。
    • スピットファイアのパイロットで海上に不時着するコリンズを演じたのがジャック・ロウデン。やはり「ベルファスト71」に出演していて、そのときはベルファストの住民によって早々に射殺されてしまうトンプソン役だった。
  • 防波堤で指揮を執る海軍将校ボルトン中佐が、半自伝的映画「ベルファスト」の監督を務めたケネス・ブラナー。さすがの上手さ。
  • 監督はクリストファー・ノーラン。映画「メメント」の監督でもある。
近年のウェイマス(Weymouth)。フリー画像を使わせていただいています。

[ロケ地]イギリス(ドーセット州/ハンプシャー)、フランス(ノール県ダンケルク)、オランダ(フレヴォラント州/エイセル湖)、アメリカ(カリフォルニア州)

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