「米中西部ミネソタ州ミネアポリス近郊で黒人男性が白人警官に暴行され死亡した事件を巡り、抗議デモは29日、少なくとも全米20都市に広がった」とのこと。アメリカでは、公権力によってマイノリティが理不尽な目に遭うと、しばしば市民による抗議運動が起こります。マイノリティのなかでも人種問題は長く続く、根深い問題です。
「ボクらを見る目」の制作&監督エヴァ・デュヴァネイによるNetflixドキュメンタリー映画「13th -憲法修正第13条-」は興味深い内容です。以下は2016年当時のことです。
- アメリカの人口は世界の5%であるにも関わらず、世界の受刑者の25%がアメリカに属する
- 黒人と白人が同じ罪を犯しても、黒人の場合は厳罰となる
- 仮に無罪であっても、法廷での裁判を経て無罪が証明されるというプロセスを踏まず、刑罰が軽くなる司法取引をもちかけられる
- 一旦前歴がつくと投票権をはく奪される(政治への市民参加の道が閉ざされる)
- 州が刑務所運営を民間に委託し、刑務所を常に満員にしておくことで収益が上がる仕組みになっている(株主利益にも貢献する)
奴隷制はイギリスがバージニア植民地に入植してすぐに始まった、アメリカの経済システムのひとつです。そして1862年9月のリンカーンによる「奴隷解放宣言」は国内の経済・産業に大きな影響を与えることとなりました。
「奴隷解放宣言」をきっかけとして「アメリカ合衆国憲法修正第13条」が承認され、奴隷は解放されることになりましたが、このドキュメンタリーは形を変えた奴隷制度が今なおアメリカ社会に存続していることを示す内容となっています。
憲法修正第13条は、合衆国議会により1865年に各州の議会に提案されました。36州のうち27州の議会により修正条項が批准され、修正条項の提案から1年以内に必要な全州の4分の3の批准を得たものの、36州のうちの最後はミシシッピー州で130年後の1995年でした。
第1節 奴隷制もしくは自発的でない隷属は、アメリカ合衆国内およびその法が及ぶ如何なる場所でも、存在してはならない。ただし犯罪者であって関連する者が正当と認めた場合の罰とするときを除く。
第2節 議会はこの修正条項を適切な法律によって実行させる権限を有する。
アメリカ合衆国憲法修正第13条(1865年成立)
「犯罪者」は自由な待遇から除外されるため、徘徊などの軽微なことを理由に大量のアフリカ系アメリカ人が逮捕され、刑務所に収容され、強制労働に従事することになりました。それのようなやり方で、奴隷解放によって打撃を受けた南部の経済を立て直していったのです。「ジム・クロウ法」と総称される「黒人の一般公共施設の利用を禁止、制限した法律」もいくつかの州で成立。その現実を問題視する人々により、公民権運動や人権運動が次第に広がっていきました。
対象となる人種は「アフリカ系黒人」だけでなく、「黒人の血が混合している者は全て黒人とみなす」という人種差別法の「一滴規定(ワンドロップ・ルール)」に基づいており、黒人との混血者に対してだけでなく、インディアン(先住民)、ブラック・インディアン(インディアンと黒人の混血)、日系人などアジア系といった黄色人種などの、ヨーロッパ系の白人以外すなわち非白人の「有色人種」(Colored)をも含んでいる。
当時工業で発展し始めていた北部都市(デトロイト・シカゴなど)と異なり、南部では黒人労働力による農業が依然として経済の基礎であった。そのため、「黒人が白人と平等になっては困る」というのが、南部経済を支える有力な白人農園主たちの本音であったと考えられる。この黒人取締り法が、ジム・クロウ法の礎になっていった。
Wikipedia
このドキュメンタリーもひとつの視点であることから、全面的に正しい思うとか、支持するとかではないのですが、こういう映画を見ていると、世界における日本、国内でも日本人の奴隷化が進んでいるように感じます。
例えば「アベノマスク」受注企業、「持続化給付金」中抜き企業、非正規雇用を増やすことで利益を得てきた人たちなど、目の付けどころは違っても、公益的な目的を掲げつつ、制度・仕組みを社会上層部が操作して、権力者や既に利権を得ている人たちの利益を維持・拡大しようとするような「コトの成り立ち」は似ています。