【北アイルランド紛争が背景にある映画(1)】ケネス・ブラナーの半自伝「ベルファスト」

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北アイルランドのベルファストを舞台にしたドラマや映画はいろいろあります。個人的には「THE FALL 警視ステラ・ギブソン」がオススメなのですが、現在はDVDでしか観られないようです。

したがって、ほかの作品を紹介します。

まずは映画「ベルファスト」(原題 “Belfast” )。とても話題になった作品なので既に視聴されている方も多いことでしょう。監督を務めたケネス・ブラナ―は多数の作品に出演しており「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」「ダンケルク」は私も観たことがあります。

主人公のバディがケネス・ブラナ―監督の少年時代とされています。「THE FALL 警視ステラ・ギブソン」で連続殺人犯ポール・スペクターを演じたジェイミー・ドーナンがバディの父親役。父の知人でカトリック住民迫害を扇動するビリー役のコリン・モーガンも「THE FALL 警視ステラ・ギブソン」に出演していました。バディの母親役がカトリーナ・バルフ。「アウトランダー」のクレア(サセナッフ)です。美男美女が両親のバディがうらやましい。

あらすじ

少年バディとその一族は1969年のベルファストで暮らしている。父は家計を支えるため、イングランド(ロンドン)へ出稼ぎに行っていて普段は家にいない。

1960年代後半から北アイルランドの帰属をめぐって、主にカトリックで構成される共和派と民族派、主にプロテスタントで構成される王党派(ロイヤリスト)と統一派(ユニオニスト)が対立。ベルファストでは住民の穏やかな生活も脅かされた。

治安と家計の問題からバディの父親はイングランドへの一家の移住を計画する。そして子どもたちの意見を聴く。大好きな祖父母、大好きな同級生の女の子、慣れ親しんできた街やコミュニティ、そして自らを豊かに育んできた遊び・音楽・映画、バディはベルファストしか知らない。そしてそこを離れたくない。

感想

この当時、ベルファストで暮らしていた人たちにとっては心穏やかな日々ではなかったろうが、映画として何か特別なところがあるわけではない。子ども心に大人社会の矛盾と不条理を感じながらも、子どもは日々のなかに楽しみを見つけて生きている。彼らの成長後はどうか。地域の産業や経済はパッとせず、長く親しんだ土地だからと執着しても未来は明るくない。両親や祖父母は子どもとその未来を守ろうとする。

この映画を観ていて「いいな~」と思ったのは、おじいさんと孫バディの対話。子どもの素朴な問いかけに対し、含蓄のある言葉を返すおじいさん。ちょっとした哲学的な問答になっている。年長者からの言葉を柔らかな心で受け止めて、後年「おじいさんは、こういうことを言いたかったのかな」と思い返すような関係や機会が今の日本には欠けている気がする。年長者が語る言葉をもたなくなったのか。あるいは語る相手に子どもを選ばなくなったのか。

映画の終わり頃、バディ一家はイングランドへ出発する。おばあさんがつぶやく。“Go now. Don’t look back. I love you so.” アイルランドの映画「シング・ストリート」の最後で弟の無謀な旅を送り出す兄の書いた詞が “Go now” であり、戻ってくることを前提としない送り出しのシーンで使われがちな表現なのかもしれない。

個人的には、この映画のエッセンスは最後にテロップで現れるメッセージだと思っている。

“For the ones who stayed(残った者たちと)For the ones who left(去っていった者たちへ)And for all the ones who were lost. (そして命を落とした者たちへ捧ぐ)”

人生の本質が凝縮された言葉だと思う。

[ロケ地]北アイルランド、イングランド(ロンドン/サリー)

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