「ベター・コール・ソウル」シーズン6、エピソード10(後半3話目)のあらすじ&感想

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このエピソードのオープニングは、シーズン4のエピソード1(煙)、シーズン5のエピソード1(魔術師)のフラッシュフォワード(冒頭の白黒映像)とつながりがあります。

導入部分で「はて?」と思った方は、シーズン4のエピソード1(煙)、シーズン5のエピソード1(魔術師)の始めのほうを再度観てみましょう。

率直に言って、このストーリーに1回分のエピソードを費やした “ゆとりっぷり” には驚きました。もっと急速度で「ブレイキング・バッド」との接点へと収束していくのかと思っていたのですが、進みが緩い印象です。しかし見方を変えると “ジーン” としての人生に “ソウル” 時代の資質がフル活用されている貴重なエピソードと言えます。

“ジーン” 時代の話なので、すべてがモノクロ映像で進行します。

エピソード10(迷子犬)

ネブラスカ州オマハのコットンウッドモールでシナボン店長をしているジーン(ソウル)。迷子犬の貼り紙を使って、タクシー運転手ジェフの母マリオンに接近します。

さらに、かつて店内で倒れた際、救助してもらったことのお礼と称し、ショッピングモールの警備室へシナボンロールを日々持参します。ジーン(ソウル)は警備員たちと懇意になり、警備室内で世間話をする間柄になります。警備員との因縁については、シーズン3のエピソード1(メイベル)の冒頭でも描かれています。

オマハへ移り、名前や仕事を変え、周囲に過去の素性を隠して暮らしているジーン(ソウル)は、これまでのエピソードでは控えめで、やや陰を感じさせる印象でした。しかし今回の「迷子犬+シナボンロール」作戦では、かつての “ソウル” のフレンドリーな明るさ、人の気をそらさない話術が再び全開になります。

仕事を終え、母マリオンの待つ自宅へ帰ったタクシー運転手のジェフ。キッチンで、母と楽しそうに談笑しているジーン(ソウル)を見て大いに驚きます(「なんで?」と思う方はシーズン4エピソード1、シーズン5エピソード1の復習を)。ジェフは出来過ぎた偶然に何か裏があることを疑います。まあ、そうでしょうね。ジーン(ソウル)は何かを企んでいます。

ジーン(ソウル)は、ジェフを “ゲーム” に参加するよう誘います。さえないタクシー運転手としての人生を忘れ、“目の前にありながら、触れることができなかったものを手に入れる” またとない機会であると説得します。ジェフと彼の友だちは、その話に乗ります。

一方で、モール警備員の太ったほうのおじさんは、ジーン(ソウル)の持参するシナボンロールを食べながら、彼とアメフト談義を重ねます。警備員役の俳優さん(ジム・オハイア)が、あの濃厚な食べ物をいくつ食べることになったのかが気になります。甘いものを少し食べた程度でも、コンディションへの影響を私は感じます。あんなにこってりした甘いものを、あんなに食べて大丈夫なのでしょうか(人種や体質が違いますので一概には言えませんが)。

ジーン(ソウル)は、悪だくみの準備を地道に、そして周到に行ないます。弁護士ハワード・ハムリンらを陥れたときもそうでした。能力(根気強さと綿密さ)の使いどころを間違えています。

タクシー運転手のジェフと友だちに対しても、“ゲーム” を成功させるのに必要な練習やシミュレーションを徹底して行います。ジーン(ソウル)は粘り強い努力ができる人なのです。

ジーン(ソウル)とジェフ、その友だちのしていることは犯罪なのですが、余裕のある計画に見えないため、きちんと遂行されるのだろうかと気になってきます。そして観る者にしてみれば、絶妙なタイミングで “番狂わせ” が起こります。ジーン(ソウル)も、視聴者もハラハラドキドキします。ドラマの作り手による、勘どころの掴み方が見事です。個人的には、本エピソードのなかで一番のハイライトがここでした。

タクシー運転手のジェフと友だちに対して “ゲーム” への参加をけしかけたジーン(ソウル)の真意は、後に示されます。それ以外にも隠れた真意があり、「“ソウル” 時代の快感や緊張感をなぞること」だったのでは、と思います。

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