「弁護士ビリー・マクブライド(原題:Goliath)」シーズン3のあらすじ&感想

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日本は水道民営化の方向へ向かっていますが、シーズン3は水を巡るストーリー展開となっています。資源のなかでも水を手中に収めた者が、最終的に人類を征すると聞いたことがあります。生活に必要な水を支配する者がいて、人々への配水をすべてコントロールするとしたら、不当な金額でも水を購入しなくてはなりませんし、私たちが生き延びることの困難が増すと想像されます。よって私は水道の民営化は、メリットよりデメリットのほうが大きいと思っています。

シーズン2で決着がつかなかったロサンゼルス市長マリソル・シルヴァが引き続き登場し、水を巡る事件との関わりを匂わせます。演技か素かは分かりませんが、笑顔に媚びを感じさせる人ですね。表現しがたい「クサ味」が喉にひっかかります。

また弁護士ビリーを演じるビリー・ボブ・ソーントンもさることながら、仕事の相棒的存在のパティ・ソリス=パパジアンを演じるニーナ・アリアンダが、ドラマの魅力度アップに大いに貢献しているという印象を強めています。

今回もシーズン2同様、弁護士ビリーは現実とファンタジー(幻覚や妄想)の境界線を行ったり来たりしますが、カリフォルニア州セントラル・ヴァレーという広大な土地が舞台なので、場面にはまったり感が感じられます。

シーズン2ほど突飛ではなく、周辺事情が掘り下げられ、ストーリーの網が拡大していくことでシーズン2とのつながりが分かるようになり、かなり楽しめる内容となっています。比較的好みの分かれるシーズン2を観ておいたほうがいいとは言えますが、シーズン2が「?」だった人もシーズン3まで視聴することで壮大なストーリーを楽しめます(多分)。

こんな感じでドラマは始まる

セントラル・ヴァレーでブドウ園を営む夫婦ジーン&ボビーの会話からスタートします。彼らのブドウ園は経営難のようです。飼い犬が咥えてきた鳥に怯える妻ボビーの姿から、元は都会生活を送っていたことがうかがえます。深夜、吠えながら戸外に出る犬を追うボビー。するとブドウ園の土地が崩落し、巨大な穴が出現します。ボビーはそこへ落下し、首の骨を折って死にます。

ボビーと弁護士ビリーは、かつて法律を学んだ仲でした。ビリーは、ボビーの夫ジーンを弔問します。この地は、大地にドリルで穴を開けて水を吸い上げることにより地盤が緩んでいるとジーンから聞きます。この辺りで暮らす人々は、生活に必要な水の確保のために土地の掘削をするなどしているようです。

ブドウ園主ジーンの要請により、ビリーは、ジーンの妻ボビーの命を奪った事故(不法死亡)の責任を問う訴訟を引き受けます。そして生前、陶芸を楽しんでいたというボビーの作品(フクロウの置物)を受け取ります。

その頃、シーズン2でメキシコで拉致された際、共に逃げたジャネットがビリーの事務所を訪れていました。相棒パティは彼女に関わりたくありません。秘書のマーヴァも辟易しています。しかしビリーは「ジャネットを追い出さないように」と電話で言います。

弁護士ビリーが引き受けた案件とは

続く干ばつに悩むジーン&故ボビーの農園の道を挟んだ反対側には、ロイ・ウィーラーが経営する柑橘類の農園があります。そちらは水が潤沢なのか緑が繁っており、背景に何かあることを感じさせます。ロイの農園は大きいほうではあるものの、この地で最大なのはウェイド・ブラックウッドの所有するトールグラス農園でした。

ボビーが命を落とした陥没事故の後、トールグラス農園のウェイドが、夫のジーンに土地の買い上げを申し入れました。トールグラス農園は、ブラックウッド郡水道委員会の事務所を兼ねていました(カリフォルニア州にブラックウッド郡という郡はないので架空と思われます。なおセントラル・ヴァレーは実在します)。訪問したビリーは、民間企業であるトールグラス農園が公共の水道委員会を運営していることを不思議に思います。

水道委員長でもあるウェイドと話をするため、“ライジング・サン” という、彼が経営するホテル&カジノへ向かうビリー。周辺は、農園が果てしなく続く “ただっ広い“ 大地に道路だけ。恐らく娯楽施設は多くないでしょう。 “ライジング・サン” は、かなり儲けていると思われます。水道委員会とは、水質を管理し、水を分配する役割を果たす組織のようです。日本では水道局みたいなものです。

委員長のウェイドは、干ばつで悩んでいるのは皆同じ、ジーンとボビーの農園が陥没したのは地盤沈下によるもので運が悪かった、カリフォルニアで農業をするということは賭けなのだと、ビリーに説明します。そして「水道委員長は無給で誰もやりたがらないから自分が務めている。ここは100年前には荷馬車で1日旅行しないと水の一滴もない場所だった。神の計画を書き換えるには意志の力が要る。はるか離れた北部から、ある男がここまで水を運んできた。そして実り豊かな土地となった。それが私の祖父だ」と語ります。

もっと後のシーンでは、地質調査所のミンディ博士が、企業経営の農園がロサンゼルス全体よりも多く水を消費していることを指摘しています。住民によれば慢性的な水不足のため、ミネラルウォーターを購入するほかなく、売りに出したところで水の出ない家を買う人はいないそうです。

シーズン2とのつながり

ウェイドの “ライジング・サン” で彼の右腕として働くリトルクロウは、やってきたビリーに「ここで前に会ったことがある」と言います。そのときビリーは女性と一緒であり、彼女はカジノで負けたとのことでした。しかしビリーの記憶になく、彼としては初めて “ライジング・サン” へ来たという認識です。

ビリーが “ライジング・サン” へ来るのは初めてではないことが示されるこのシーンで、シーズン2との接点が匂わされます。

リトルクロウは、ウェイドに「ビリー・マクブライドは、ここに来たことを覚えていないようだ」と報告し、ウェイドから彼を見張るよう命じられます。ウェイドの “ライジング・サン” には奥の間があり、そこで彼は仲間とドラッグを楽しんでいました。リトルクロウには、ちょっとした呪術力と心霊能力があるようです。“ライジング・サン” の部屋にはカメラがあり、ビリーは監視されていました。

“ライジング・サン” に宿泊しているビリーは、薬物が混入したアルコールで現実と非現実の間を体験し、部屋の壁に奇妙な文章(「最期に見る者は自分自身だ」)を見つけます。またメキシコで知り合いになったジャネットと、彼女が貸したお金を取り戻しに行ったときも、おかしな酒を飲んでかなりまずい状態になります。集団訴訟の裁判の朝、ジャネットに勧められてホテルで飲んだジュースに仕込まれた何かで、ビリーは幻覚を見ることとなり、法廷にふさわしくない言行を示します。シーズン2後半のメキシコでひどい目に遭っているのだから、飲み物には気をつけるべきなのに学習能力がないのかしら。

周辺の動き、事件の真相は

ホテル&カジノ “ライジング・サン” のオーナーで、水道委員長のウェイドにはダイアナという妹がいました。彼女はブラックウッドアーモンド社の創業者で、それを皮切りにライフスタイルブランドを展開しています。カリフォルニアらしくオーガニックや自然であることにこだわり、人々の人生が幸福なものになることを理念としているそうですが、私の鼻は洗脳・自己啓発・カルト・マルチに類する匂いを検知しました。

ブラックウッドアーモンド社から借りた家であれば水道の蛇口から水が出るそうです。そして同社の水の引き方には違法性、犯罪的要素が認められます。それを知っている農園主ロイ・ウィラーは利益を享受しつつも「ダイアナは悪の元凶だ」とウェイドに警告します。

ダイアナには黒人の双子の養子がおり、ひとりはアントンという名で、ブラックウッドアーモンド社の管理部長を務めています。奇妙な快活さをもつ男性です。双子の片割れのダリオは後天的に聴覚を失っていて、アントンとは対照的に暗い印象です。彼らは養母ダイアナに操られています。

シーズン2でビリーと恋仲だった市長マリソル・シルヴァ。婚約者(新しいパートナー)を伴った彼女は、ダイアナ主催のパーティーでビリーと再会します。相変わらず、満面の笑みが下心と自己陶酔を感じさせます。マリソルとダイアナは笑顔から漂う腐臭が似ています。演技だとしたら素晴らしいです。

エピソード4で市長マリソルは、テレビ番組を通じて市民へ節水の大切さを説いています。テレビが置かれている “ライジング・サン” のパーティー会場に、水に関する極秘の契約で大金を手にしているスペンサー・ジャクソンなる男が現れますが、シーズン2の髭面二人組(ワイアット、ローマン)と記号的に似た顔で、また同じ奴らが出てきたのかと一瞬戸惑いました。実際、土地開発業者トム・ワイアットは過去シーンのなかに登場します。シーズン3のなかでも、エピソード4はタイトル「振り出し」の通り、回想シーンなのか、今の話なのかが、分かりづらい構成となっています。

さて、ビリーから調査を請け負っているJ.T.は、水道委員会の窓口を務めるドローレスに接近します。彼女の提供した資料から、カリフォルニアで6年間干ばつが続いた際、水資源局は農場への供給を削減。農場主たちは当局とビッグサーで密談し、州を訴える代わりにカリフォルニア渇水銀行の管理権を獲得したことが判明します。農場主たちが公共の資源を都合よく使える状況を手に入れたのです。しかし、ジーンとボビーの農場は干ばつに悩まされていたので、公共の水資源を都合よく利用していたのは一部の特権農園主に限られます。水が不当に配分されていることを証明することで、ジーンに依頼された案件を、住民による集団訴訟に切り替えることができるとビリーは考えますが、ダイアナたちの妨害により難航します。

水道委員会の法律顧問は、シーズン1で登場したクーパーマン・マクブライドに所属する女性弁護士スミ・セン。やることなすこと不気味な爺さんドナルド・クーパーマンも再登場。市長マリソル・シルヴァらと組んで、ビリーたちの集団訴訟を打ち負かし、かつての仲間ビリーを潰すことを目論みます。

ビリーの娘デニスは大学の寮で暮らすようになります。シーズン2では憧れの存在だった市長(当時は候補)のマリソル・シルヴァに対する憎しみを抑えきれず、暴走します。

元娼婦のブリタニーは法律を学ぶため、ビリーの協力を得てロースクール進学を目指しますが、ロサンゼルスを去ることになります。

ビリーの相棒パティは妊娠に気付きます。恐らくシーズン2で短期間交際していたFBI捜査官ジェフの子です。彼とは既に別れており、パティの連絡へのコールバックもなく、再び会うことはないのかもしれません。ジェフは私の好きなタイプだったので(←俳優ではなく役柄のほう)もう登場しないのが残念です。

出演者メモ

ポール・ウィリアムズ(J.T.役)

ちょっと目を引く個性的な風貌のJ.T.を演じる彼は、私の世代にとっては知って驚きの人。カーペンターズの「We’ve Only Just Begun「Rainy Days and Mondays」の作詞者だったなんて。ほかにも超有名な曲の作詞や作曲を手掛けている。彼を取り上げたドキュメンタリー映画「Paul Williams Still Alive」まで作られている。ネブラスカ州オマハ生まれで、兄弟ふたりも著名(ひとりはNASAの科学者、もうひとりは音楽関係者)。アメリカは有能な人たちが多面的に才能を示し(血筋がよく、頭がよく、運動ができ、芸術の才能もあるみたいな)、そうでない人たちとの差異が大きい国のような気がする

「弁護士ビリー・マクブライド(原題:Goliath)」シーズン1のあらすじ&感想
弁護士と言えば「ベター・コール・ソウル」以外にも面白いドラマがあります。「弁護士ビリー・マクブライド(原題:Goliath)」シーズン1についてです。
「弁護士ビリー・マクブライド(原題:Goliath)」シーズン2のあらすじ&感想
「弁護士ビリー・マクブライド(原題:Goliath)」シーズン2では麻薬カルテルが絡んだ事件が巻き起こります。
「弁護士ビリー・マクブライド(原題:Goliath)」シーズン4のあらすじ&感想
最終シーズンは製薬会社を巡る事件がテーマ。夢や幻覚を通じたメッセージがビリーの人生に対し、随所でヒントを与えます。美しきフィナーレとなったシーズンです。
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