場面展開が小気味よく飽きないインド映画「諜報」

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原題は “Khufiya”。ヒンディー語で「知能」という意味らしいです。

組織内のダブルスパイを追う諜報員の物語。2時間37分の作品ですが、場面の変化や細分化されたストーリーがいくつかのフェイズを構成しているため、飽きずに最後まで観られます。インドの音楽やちょっとした踊りもほとほどに挿入されていて、くどくありません。

1999年のカールギル紛争後、インドとパキスタンは近隣国の選挙をめぐり諜報戦を激化させた。スパイの暗躍、裏切りの横行、両国が勢力争いに血眼になる間に、ある大国が密かに関与を始めていた。

前説テロップより

インドとパキスタンには対立の歴史があり、カシミールのカールギル地区でパキスタン軍と反インド政府活動家が停戦ラインを超えてインド軍駐屯地を占領。両国が衝突したのがカールギル紛争です。

ただし上記の前説は時代背景の説明に過ぎず、映画の具体的な内容とはほとんど関係していません。

導入部あらすじ

ヒーナ・レフマン(コードネーム “オクトパス”)は、バングラデシュで開催されたパーティーでサクライン・ミルザ准将によって殺されます。インドニューデリー調査分析局(R&AW)のクリシュナ・メヘラ(コードネーム “KM”)はヒーナ殺害の情報にショックを受けます。

遡ること3年前、バングラディシュにあるインド高等弁務官事務所へ諜報員として自分を売り込みに来たのがヒーナ。その際、参事官として対応したのがクリシュナ(コードネーム “KM”)でした。

クリシュナとヒーナのやりとりに「814便のハイジャック」という言葉が出てきます。1999年12月24日、ネパールのカトマンズからインドのニューデリーに向かうインディアン航空814便がハイジャックされた事件を指しています。“KM” はヒーナの採用に積極的ではありませんでしたが、彼女にコードネーム “オクトパス” を与え、諜報員としての活動を許可します。

ジーブ部長は、組織内の密通者から情報が漏れたことにより “オクトパス” が殺されることになったと “KM” に伝えます。諜報員のラビ・モーハンが疑わしいということでした。“オクトパス” に対する思いの強かった “KM” は彼女の死に報ることを決意。

“KM” らはラビ、彼と通じている諜報機関に敵を討つべく “ブルータス作戦” を開始します。

主要な登場人物

  • クリシュナ・メヘラ: R&AWの諜報員。コードネーム “KM”。夫シャシャンクと息子ヴィクラムがいる。ヒーナ(コードネーム “オクトパス”)を愛するようになる
  • ヒーナ・レフマン: R&AWの諜報員。コードネーム “オクトパス”。密通者から情報が漏れたことにより、バングラデシュ国防相であるサクライン・ミルザ准将の殺害に失敗。逆に殺害される。バングラディシュ人(演じているアズメリ・ハケ・バドンも)
  • ジーブ・ボンダ: “KM” たちの上司にあたるR&AWの部長職
  • ワサン・トゥムク・シェット長官:ジーブ部長とセットでときどき出てくる
  • ラビ・デビラルモーハン: ダブルスパイのR&AW諜報員。妻チャルと息子クナルがいる。妻チャルに高価なアクセサリーを買い与えている。演じているアリ・ファザルは「サタジット・レイの世界」の「勿忘草(わすれなぐさ)」で主人公イプシット・アマ・ナイアを演じていた人
  • チャル・ラビ・モーハン: ラビの妻。自宅で曲に合わせてひとりで踊るなど愛嬌のある女性。夫ラビがダブルスパイであることを知るまでは、彼を全面的に信頼していた。R&AW内部では “ポーシャ” と呼ばれている
  • ラリタ・デビラル・モーハン: ラビの母。精神的指導者ヤーラ師に傾倒している。息子ラビに悪知恵を授ける面がある。夫(恐らく故人)は軍人を退役した後に欧州の軍事企業との仲介役を果たしており、妻のラリタは彼の右腕だった
  • ナレンドラ・デヴェンドラ・ミシュラ内務大臣: R&AWの作戦を把握している。ときどき指示も出す
  • レイチェル・マクレーン: アメリカ大使館員。パキスタン情報部ISIとも連携している
  • ヤーラ師:インドの精神的指導者。ラビの母ラリタが信者。うさんくさいが歌は上手い
  • サクライン・ミルザ准将:R&AWの諜報員の “オクトパス” を殺害する。映画の最後まで何者かが判らなかったが、バングラデシュの国防相。さらに調べるとバングラデシュ陸軍サバール第9砲兵旅団所属であるらしい
  • デビッド・ホワイト博士: CIAお抱えの精神科医

視聴しての感想

インド、アメリカ、バングラディシュと国や場面が切り替わり、どんでん返しやハラハラ感を楽しむことができます。

ラビがダブルスパイになったのは単にお金を得るためだったのか、何かほかの野心があったからなのか、私にはよく判りませんでした(彼は一応、作中で動機を説明していますが、果たして全面的に信用していいものかどうか。身勝手な母親の入れ知恵もありそう)。しかし深く考えなくてもそれなりに楽しむことのできる映画で、場面とフェイズの切り替えの妙で視聴者の関心を逸らしません。

諜報員ラビ・モーハンの不審な行動を洗い出すフェイズ、パキスタンやインドと関わるアメリカの目論見が浮かび上がるフェイズ、チャルが夫ラビや息子クナルを探し出すために渡米するフェイズ、アメリカに身を隠しているラビと母ラリタが態度を変えるフェイズ等、そのときどきで状況や登場人物の立ち位置が変化するのが気分転換となり、長尺の割に飽きません。

しかし説明が不足しています。例えばミルザ准将がバングラデシュ国防相であることが判明するのは映画の最後のほう。冒頭で説明字幕を入れる等をしてくれればよいのに「あのおじさんは一体何者だったのだろう?」という疑問を抱いたままストーリーが進行。インド・パキスタン・バングラデシュの当時の関係をよく知っている人なら細かく説明を加えなくても理解できるのかもしれませんが、日本の多くの人たちはそうではないでしょう。それ以外にも無理のある展開が多かったりしますが、エンタメとしてのツボは押さえています。

ボリウッドといえば歌と踊り。精神的指導者ヤーラ師が信者たちの前で歌う曲はなかなかよいです。ラビの妻チャルが家事をしながら踊る姿も心がほっこりします。歌&踊りパートがスボットでこってり入るよりは、シーンの一部に分散して組み入れてあるので受け入れやすく、観ていて楽しいです。

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